10月26日(土)に2020年箱根駅伝の予選にあたる箱根駅伝予選会が開催されました。
ここでは各大学ごとに出場選手の個人順位、総合タイム、ボーダーとの時間差、細かいラップタイムなどを交えつつ、それぞれの大学の結果を総括してまいります。

今回は総合18位の大東文化大学、19位の流通経済大学(今後が期待できるチーム)、22位の亜細亜大学(ピックアップしていたチーム)について振り返ってまいります。

※10/29 基準タイム関連のデータを修正致しました。



【箱根駅伝予選会】

日時:10月26日(土)
会場(スタート地点):陸上自衛隊立川駐屯地(東京都立川市)
 <基準タイムについて>

 今回の総括ではそれぞれの選手が予選突破ラインの走りとどれだけのタイム差があったかを明確にするため、箱根出場権争いにおける基準タイムを決めてそのタイム差を記載します。

 
<基準タイム>(総合8位~13位の大学の10人目にゴールしたの選手の平均タイム)
 
67分08秒(個人順位197位相当)

※※お詫びと訂正※※
基準タイムの抽出にミスがありましたので、これまで記載した記事のボーダーラインタイム関連のデータを修正致しました
お詫びするとともに、ご指摘いただいた方にはまことに感謝致します。



 
<大東文化大学>

 総合18位 タイム:11時間06分22秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 吉井龍太郎(3年) 55位 65分02秒(-2分06秒)
 <30分35秒→15分34秒→15分37秒>
 三ツ星翔(3年) 82位 65分25秒(-1分43秒)
 <30分35秒→15分33秒→15分56秒>
 片根洋平(2年) 97位 65分38秒(-1分30秒)
 <30分37秒→15分51秒→15分55秒>
 倉田蓮(1年) 130位 66分06秒(-1分02秒)
 <30分41秒→15分55秒→16分07秒
 豊田紘大(4年) 158位 66分29秒(-0分39秒)
 <30分39秒→15分58秒→16分24秒
 奈良凌介(4年) 180位 66分51秒(-0分17秒)
 <30分39秒→16分10秒→16分33秒
 蟹江翔太(1年) 199位 67分10秒(+0分02秒)
 <30分56秒→15分53秒→16分58秒
 佐藤弘規(4年) 211位 67分19秒(+0分11秒)
 <31分21秒→16分07秒→16分26秒
 川澄克弥(4年) 252位 68分04秒(+0分56秒)
 <30分25秒16分21秒→17分42秒
 稲留涼斗(3年) 259位 68分18秒(+1分10秒)
 <31分25秒→16分24秒→16分49秒
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 金田龍心(1年) 263位 68分23秒(+1分15秒)
 <31分26秒→16分42秒→16分46秒
 井田春(1年) 282位 69分04秒(+1分56秒)
 <31分31秒16分38秒→17分24秒

衝撃的な予選敗退。予選会の難しさを表すチームの1つに

大会前は川澄の不調などは気になったものの、奈良・川澄の両エースやや期待株の選手が引っ張ってボーダーライン付近での争いをすると予想されました。
しかし、終わってみれば結果発表ボードの圏外となる18位。個人成績の上位に両エースの名前がない事も含めファンにも驚きの結果となりました。11時間06分22秒というタイムは7位で予選突破した前回からは約24分落ちています。今回の予選会は前回よりも全体的に1分ほどスローペースのレースではありましたが、それでもチームとして受ける影響は約10分。残りの「14分」が大東文化大が今回の予選会レースに苦しめられた度合いを示す数字と言えるかもしれません。

Wエースをはじめチーム全体を襲った後半の失速

前半は川澄、奈良の両エースと片根が先行しつつ、第2グループは10kmを30分40秒前後のペースの大きな集団で走っていました。ただ、前回は早いペースで仕掛けていた川澄や奈良も比較的遅れ気味なペースになっていたり、4選手ほどが10kmを31分台半ばと遅れていた点は異変の兆候だったのかもしれません。
そして本格的な異変は後半戦に入ってから起こります。ペースからみても後半に勝負を仕掛けなければいけない状況でしたが、川澄・奈良をはじめ大半の選手が大きくペースを落としていきます。10~15km地点で勝負が出来ていたのは吉井、三ツ星の2人で、あとは片根、倉田、豊田、蟹江がなんとか粘っている状況でした。15km以降はさらに持ち堪える人数も減っていきました。
レース中に上昇していった気温への準備不足や前半10kmのペース配分のずれなど原因となるのでしょうが、そのダメージの規模はあまりにも大きくチーム全体が崩れてしまい、もはや予選会を突破する力は残っていない状態でした。
前半からハイペースで仕掛ける川澄や奈良のようなタイプには難しいレース展開となったでしょうが、その後方の選手達の間でペース修正を共有しきれなかった点は課題となりそうです。

復活への軸となるのは難しいレースを戦い抜いた若手たち

改めて予選会の難しさを痛感した中で、チームは既にWエースが卒業した後の来季を見据えていく段階に入っています。その新チームで軸となるのは、この難しいレースで結果を出せた吉井、三ツ星、片根、倉田といった選手達です。それぞれペース修正がうまくいったり暑さに耐性があったりなどしてこのレースを戦い抜けたのでしょう。そんな彼らがここから成長して次の予選会ではより高い対応力を身に着けてチームを引っ張る存在になる事が期待されます。
また、
蟹江、金田、井田といった1年生にはとても苦い駅伝シーズンデビューとなりましたが、その分自分に足りないものがよく見えた大会となったかもしれません。そこから自分の成長する道筋を見出して、来季は主力候補に名を連ねていけるとチームはグッと箱根に近づきます。
また、去年と今年でハーフになってからの箱根駅伝予選会の戦い方がある程度見えたように思います。首脳陣を含めたチーム全体で来季は見事に予選会を攻略する姿に期待したいです。



 
<流通経済大学>

 総合19位 タイム:11時間10分57秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10
~15km→15~20kmごとのタイム

 竹上世那(2年) 91位 65分32秒(-1分36秒)
 <30分38秒→16分02秒→15分34秒
 菊地海斗(4年) 153位 66分26秒(-0分42秒)
 <30分22秒→15分48秒→16分27秒
 小原佑介(4年) 163位 66分40秒(-0分28秒)
 <30分54秒→16分02秒→16分19秒
 梶山拓郎(3年) 174位 66分46秒(-0分22秒)
 <31分04秒→15分43秒→16分07秒
 宮下資大(2年) 206位 67分13秒(+0分05秒)
 <30分56秒→16分10秒→16分38秒
 横森駿介(2年) 218位 67分24秒(+0分16秒)
 <30分55秒→16分44秒→16分27秒
 三輪雄大(4年) 225位 67分28秒(+0分20秒)
 <30分55秒→16分26秒→16分43秒
 宮下意大(2年) 226位 67分29秒(+0分21秒)
 <30分59秒→16分24秒→16分40秒
 岡島慶典(3年) 228位 67分31秒(+0分23秒)
 <31分07秒→16分15秒→16分34秒
 高橋登也(2年) 267位 68分28秒(+1分20秒)
 <31分27秒→16分37秒→16分52秒
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 水柿岳大(3年) 273位 68分41秒(+1分33秒)
 <31分09秒→16分43秒→17分02秒
 西田楓(3年) 373位 72分10秒(+5分02秒)
 <31分34秒17分33秒→18分49秒

順位は微増も前回とのタイム差に見える希望

順位は前回の22位から3つ上昇となった流通経済大。まだ箱根駅伝の出場権争いからは遠いものの前回の予選会のタイムからわずか3分しか落ちていないという点は注目ポイントです。今回の予選会は暑さによるスローペースな展開もあって首位通過の東京国際大でも前回より6分タイムを落とすなど盤石な内容でも結構なタイム落ちがある中でわずか3分というのはそれだけ流通経済大の成長具合が伺えます。
やはり大きいのは中位層の結果。チーム6番手以降が200位台後半だった前回に比べ、今回は9番手までが200位台前半に残りました。しかも前回の予選会でチーム上位に入った若手選手が数名出場していない中でのこの結果。この成長を来季に繋いでさらに促進させれれば箱根駅伝の出場権争いが見えてきます。

チームトップの竹上や粘りを見せた若手に次を託す

前回個人119位の石井(現2年)が部を離れ、個人195位の中根(現2年)などが欠場する中で新たに台頭したのが今回初の予選会となった竹上。やや速いペースで10kmまで入った後はレース環境の変化に合わせて慎重なペース走に切り替えました。これが後半の崩れを防いだだけでなく余力を用いて15km以降のギアを上げ91位でフィニッシュ。前回予選のチーム内最高位を超え、2桁順位入りを果たして関東学連選抜入りが濃厚となりました。
他の選手でも、前半をハイペースで入った菊地は終盤崩れてしまったものの、多くの選手が10km以降を自分のスタミナ残量に合わせたペースに調整し15km以降の大崩れを防いだり(15~30秒程度のペースダウンにとどめる)ギアを上げる事に成功しています。このペース調整は今回の様な温度上昇のあるレースではかなり有効な技術で、これを駆使した駿河台大は今回の予選で大きくジャンプアップを果たしています(詳細は後の結果総括で記載します)。100位台後半~200位台前半に入った2~3年生もこの方法に成功しているのは来季に繋がる好材料です。
このスタイルを駆使しながらスタミナを強化し、今回欠場した戦力が加わる事ができれば、次回の予選会は大きなジャンプアップも狙えるでしょう。
(※10/29 石井選手が流通経済大学を中退しモデル業界に挑戦される事が分かったので、本文を修正しております。またそれに伴い戦力一覧の記事も修正しております)



 
<亜細亜大学>

 総合22位 タイム:11時間19分52秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 上土井雅大(4年) 59位 65分05秒(-2分03秒)
 <30分21秒→15分36秒→15分41秒>
 河村悠(2年) 182位 66分51秒(-0分17秒)
 <30分37秒→16分23秒→16分38秒
 竹井祐貴(2年) 190位 66分55秒(-0分13秒)
 <31分23秒→15分46秒→16分17秒
 立石拓海(4年) 195位 67分05秒(-0分03秒)
 <31分23秒→15分42秒→16分27秒
 兼次祐希(3年) 233位 67分34秒(+0分26秒)
 <31分23秒→16分07秒→16分39秒
 田﨑聖良(4年) 243位 67分51秒(+0分43秒)
 <31分23秒→16分06秒→16分49秒
 古川大翔(1年) 258位 68分15秒(+1分07秒)
 <31分24秒→16分31秒→16分46秒
 大城義己(3年) 289位 69分18秒(+2分10秒)
 <31分23秒→16分40秒→17分41秒
 一瀬達也(2年) 308位 69分53秒(+2分45秒)
 <31分26秒→16分56秒→17分40秒
 長谷部航(2年) 344位 71分05秒(+3分57秒)
 <31分29秒→17分13秒→18分21秒
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 森木優摩(3年) 364位 71分57秒(+4分49秒)
 <31分23秒→17分39秒→18分49秒
 吉岡竜希(1年) 431位 74分26秒(+7分18秒)
 <33分01秒18分42秒→18分52秒

チームの弱みを突くかのような厳しいレース環境

今回の予選会は気温上昇によって前半の強さを活かすことが難しく後半を中心としたスタミナ勝負となったレースでしたが、持ちタイムから見て多くの選手にスタミナ面の不安のあった亜細亜大はチーム全体がひときわ大きなダメージを受け、予想以上の総合順位低下を招く結果となってしまいました。
エース上土井と前半に強みを持つ河村はハイペースで入っていたものの、後方のグループ走では気温の上昇を感じ取ったのか10kmを31分30秒手前という200位切りを狙えるギリギリのペースまで落として対処を試みたという印象です。それでも後半に多くの選手が大きく崩れ15km以降は17~18分台に落ちる選手も相次ぎました。これがレースの難しさでありチームとしてのスタミナ不足を物語っているのかもしれません。

対応力、スタミナ…課題は山積みだが新たなスタートで復活を

エースの上土井は豊富なスタミナもあって後半も15分台半ばのペース走で戦い抜きましたが、前回よりは順位を落としての59位でした。竹井や立石は粘りの走りを駆使して200位以内でのフィニッシュを果たしたほか、河村や古川は苦しい後半を低速ながらペース走に切り替えて大崩れを避ける対応力をみせました。なんとか厳しいレースを戦い抜いた河村や竹井は来季以降の軸となる選手となりそうです。
チーム内下位の選手をはじめ大崩れを防ぎきれなかった選手達は、スタミナ強化を含め実質1からの再スタートとなりそうです。ここからの1年でどれだけ成長していけるかは期待を込めて注目したいです。
チームとしてもスタミナ強化だけでなく、特徴が分かってきたハーフ距離の箱根駅伝予選会に対してどう戦略を練り直すかも復活に向けての重要ポイントとなりそうです。