10月26日(土)に2020年箱根駅伝の予選にあたる箱根駅伝予選会が開催されました。
ここでは各大学ごとに出場選手の個人順位、総合タイム、ボーダーとの時間差、細かいラップタイムなどを交えつつ、それぞれの大学の結果を総括してまいります。

今回は総合4位~7位の明治大学、創価大学、筑波大学、日本大学について振り返ってまいります。



【箱根駅伝予選会】

日時:10月26日(土)
会場(スタート地点):陸上自衛隊立川駐屯地(東京都立川市)
 <基準タイムについて>

 今回の総括ではそれぞれの選手が予選突破ラインの走りとどれだけのタイム差があったかを明確にするため、箱根出場権争いにおける基準タイムを決めてそのタイム差を記載します。

 <基準タイム>(総合8位~13位の大学の10人目にゴールしたの選手の平均タイム)
 
67分08秒(個人順位197位相当)


 
<明治大学>

 総合4位 タイム:10時間51分42秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 手嶋杏丞(2年) 9位 63分28秒(-3分40秒)
 <29分37秒15分06秒→15分21秒
 櫛田佳希(1年) 36位 64分41秒(-2分27秒)
 <30分35秒→15分17秒→15分28秒
 河村一輝(4年) 39位 64分43秒(-2分25秒)
 <30分35秒→15分17秒→15分32秒
 小澤大輝(1年) 47位 64分55秒(-2分13秒)
 <30分35秒→15分18秒→15分44秒>
 鈴木聖人(2年) 54位 65分02秒(-2分06秒)
 <30分25秒→15分37秒→15分40秒>
 前田舜平(3年) 62位 65分08秒(-2分00秒)
 <30分23秒15分31秒→15分50秒>
 金橋佳佑(2年) 79位 65分24秒(-1分44秒)
 <30分35秒→15分31秒→15分56秒>
 小袖英人(3年) 117位 65分58秒(-1分10秒)
 <30分04秒→15分51秒→16分32秒
 長倉奨美(3年) 122位 66分01秒(-1分07秒)
 <30分35秒→15分52秒→16分16秒
 村上純大(3年) 146位 66分22秒(-0分46秒)
 <30分32秒→15分57秒→16分22秒
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岸哲也(4年) 292 69分26秒(+2分18秒)
 <31分01秒→16分49秒→17分53秒
 大保海士(3年) 305位 69分47秒(+2分39秒)
 <31分30秒16分55秒→17分42秒

エース不在も、難しいレースを攻略して前回越えの4位

エントリー時にはエース阿部をはじめ実績のある選手が何人も外れ、また当日には実力者の三輪の欠場も発表されレースの展開が心配された明治大。しかし、いざ予選会を終えてみれば、多くの選手が後半にしっかり勝負を仕掛けて厳しい暑さのレースを攻略して見せました。エントリーした1~2年生が全員1~2桁順位となってしっかりと若手に実績と経験値を積ませるあたりは明治大の巧いところだと感じます。
ただ、出場者全員が安泰とはいかず10番手以降はこの暑さに苦しんで後半に大きく崩れいずれも300位前後の位置に。結果には影響はなかったもののこのレースの難しさは明治大にも降りかかっていました。


新エース候補・手嶋をはじめ、多くの若手が躍動

個人で見ていくと、まずは大ブレイクを果たした手嶋でしょう。公式戦には出ていないものの1年生時にハーフ63分台をマークする逸材です。前半戦から日本人の先頭集団に加わりレースを引っ張る姿は駅伝ファンを大いに沸かせ、個人9位という前回予選の阿部に匹敵する活躍を見せました。
櫛田、小澤の1年生コンビは50位以内の素晴らしい予選会デビュー。中距離で日本上位の実力を持つ河村は39位と長距離でもしっかり実績を作りました。鈴木や前田といった箱根経験者もチームを牽引する走りとはならなかったものの気温の上がる中でしっかりとペースを維持して安定した走りを見せました。一方で箱根経験者の小袖や村上は後半ペースを落とす内容。箱根の出場権争いとしては安全圏の順位ではありますが実力からは離れた結果となり、箱根に向けては巻き返しのアピールが求められそうです。


エースや主力も合流し、強い明治を箱根路で

逞しい内容を見せた予選会により若手を中心に戦力が増した明治大。予選会組の多くは全日本大学駅伝にもエントリーしており、小袖や村上はここがアピールのチャンスとなるかもしれません。
そして、エース・阿部は箱根に照準を合わせて調整しているほか、三輪の欠場は全日本大学駅伝に向けてのものと判明。箱根駅伝ではこの2人が参戦する可能性は高そうです。
そして予選会のエントリーから漏れた選手たちは、おそらく11月の上尾ハーフでアピールのチャンスを迎えます。ここでどれだけの選手が好タイムを出してくるかにも注目が集まります。
これらの選手が集まり豪華な陣容が期待される箱根駅伝。終盤までしっかりとシード圏内に入っていく流れを作って、前回は届かなかったシード権をしっかり掴みたいところです。



 
<創価大学>

 総合5位 タイム:10時間51分43秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 米満玲(4年) 7位 63分12秒(-3分56秒)
 <29分40秒15分03秒→15分16秒
 石津佳晃(3年) 43位 64分46秒(-2分22秒)
 <30分36秒→15分21秒→15分28秒
 福田悠一(3年) 52位 65分01秒(-2分07秒)
 <30分36秒→15分23秒→15分41秒>
 葛西潤(1年) 56位 65分03秒(-2分05秒)
 <30分35秒→15分21秒→15分54秒>
 M・ムイル(4年) 61位 65分07秒(-2分01秒)
 <29分41秒→15分52秒→16分05秒
 永井体育(2年) 67位 65分13秒(-1分55秒)
 <30分36秒→15分23秒→15分52秒>
 築館陽介(4年) 81位 65分25秒(-1分43秒)
 <30分35秒→15分25秒→15分59秒>
 嶋津雄大(2年) 96位 65分36秒(-1分32秒)
 <30分24秒15分35秒→16分04秒>
 鈴木大海(3年) 112位 65分53秒(-1分05秒)
 <30分55秒→15分37秒→15分58秒>
 大澤智樹(3年) 141位 66分20秒(-0分48秒)
 <30分37秒→15分56秒→16分27秒
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 上田結也(4年) 196位 67分06秒(-0分02秒)
 <30分38秒→16分26秒→16分38秒
 鈴木ニムラ(4年) 240位 67分49秒(+0分41秒)
 <31分03秒→16分22秒→17分03秒

予想の上を行く躍進で、3年ぶりの箱根路の切符を掴む

前回予選落ちを経験した大学の中では最も戦前の予想が高いチームの1つだった創価大学。その予想を超えるレース巧者ぶりを見せ総合5位という安定した内容で箱根路の切符を掴みました。
その内容を見てみると、エース・ムイルの失速という誤算がありながらも米満がエースの走りを見せたのをはじめ、8人の選手が100位以内でフィニッシュする安定した内容でその誤算を埋め合わせていきました。


エース・ムイルの苦戦も、多くの選手が安定感でカバー

エース・ムイルは慣れないハーフの予選会と暑さ、そしてプランの選択ミスが重なり本来の力を発揮できませんでした。気温が上がる中でキサイサやR・ヴィンセントらが作ったハイペースについていくのは無理があったようで、後半は本来の走りからは遠い我慢の内容となり留学生の中では最下位という不本意な結果に終わりました。それでも61位にとどまったのはその地力の高さによるものですので、本大会では存分に発揮することを期待したいです。
そのムイルに変わってチームトップの7位となった米満。今回は存分にその実力を発揮して日本人先頭集団で戦い抜くエースの走りを見せました。チームとしては石津、築館、嶋津といった実力者だけでなく、2年ぶりの予選会となった福田やルーキーの葛西、前回は200位台後半だった永井などもしっかりレースを攻略して100位以内に入ったのは本戦に向けても大きな収穫です。
一方、前回54位だった鈴木大は暑さもあってか慎重なペース配分となり112位、そして94位だった上田は後半はスローペースを維持する内容となってしまい196位と不満の残る内容。好調な選手が多いだけに、箱根路を走るにはもう少しアピールが必要になるかもしれません。


スピードランナーも増えつつあり、箱根シード権を見据える

今回の予選会はスタミナ勝負を制しての突破となりましたが、本戦に向けてチームにはスピード自慢のランナーも擁します。1年生時に箱根2区4位の実績があるエース・ムイルはもちろんの事、同じく1年生時に箱根8区3位で今年の関東インカレ2部10000m9位の米満もスピード自慢です。また嶋津も今季5000m13分台目前の内容で急成長するスピードランナーであるほか、葛西や福田もトラックで地力のある選手です。
まだ山の5区・6区の適任者をどうするかなどの課題はありますが、往路のスピード勝負についていけそうなのは明るい材料です。総合12位と箱根を沸かせた前回を越えて本戦返り咲きからのシード権獲得を狙います。


 
<筑波大学>

 総合6位 タイム:10時間53分18秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 金丸逸樹(4年) 13位 63分53秒(-3分15秒)
 <30分22秒→15分03秒→15分12秒
 西研人(3年) 19位 64分01秒(-3分07秒)
 <30分22秒→15分03秒→15分20秒
 猿橋拓己(3年) 20位 64分04秒(-3分04秒)
 <30分21秒→15分04秒→15分20秒
 相馬崇史(3年) 40位 64分44秒(-2分24秒)
 <30分26秒→15分27秒→15分31秒
 川瀬宙夢(5年) 53位 65分01秒(-2分07秒)
 <30分36秒→15分42秒→15分23秒
 小林竜也(1年) 119位 65分59秒(-1分09秒)
 <30分55秒→15分45秒→15分59秒>
 岩佐一楽(1年) 121位 66分01秒(-1分07秒)
 <30分54秒→15分41秒→16分09秒
 山下和希(3年) 135位 66分11秒(-0分57秒)
 <30分55秒→15分50秒→15分58秒>
 伊藤太貴(2年) 159位 66分32秒(-0分36秒)
 <30分53秒→15分41秒→16分26秒
 山本尊仁(2年) 184位 66分52秒(-0分16秒)
 <30分55秒→16分19秒→16分18秒
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 杉山魅声(2年) 194位 67分02秒(-0分06秒)
 <30分59秒→16分13秒→16分15秒
 児玉朋大(3年) 246位 67分56秒(+0分48秒)
 <30分59秒→16分14秒→17分18秒

26年ぶりの箱根路。「いだてん」の年に歓喜の予選突破

今回の予選会において良い意味で最も予想を裏切ったチームと言えます。全日本大学駅伝予選に出場を逃すなどトラックではかなり苦戦していた事もあり、ボーダーライン争いの一角に数えられていたものの、ここまでの上位と予想されていた方は少ないかもしれません。5~4年生(医学部のため)の上級生や黄金世代の3年生の主力層が非常に安定した走りで上位に入り大きく貯金を稼ぐと、残る若手やニューカマーの選手も各々の方法でこの難しいレースに対処。充分な余裕のある総合6位での突破となりました。
筑波大出身の「日本マラソンの父」金栗四三さんを描いた大河ドラマ『いだてん』が放送されている中で26年ぶりに箱根駅伝出場を決めるというドラマ性の強さもあり、この冬はメディアに取り挙げられる回数が多いチームとなるかもしれません。

入念な準備が基盤となり、主力から若手まで難レースを攻略

もちろんこの予選突破は弘山監督をはじめ、指導陣と選手の入念な準備の賜物です。特にポイントとなるのが、気温が上昇し全体がスローペースになる中で筑波大の選手のほとんどが前半10kmを涼しいレースだった前回の箱根予選会と同じないしはそれ以上のペースで入っていた事です。
試合後に筑波大のサイトで公開された弘山監督のコメントには、「9月の合宿で例年以上に負荷を高めたトレーニングでAチームが最後まで崩れなかった」という旨の記述がありました。この夏場の効果的で充実したトレーニングの成果として、今回のような気温の上昇ではビクともしない「普段通りの走り」を実現できたのでしょう。
上位に入った金丸、西、猿橋の走りがその最たるもので、今回のレースとしては早めの前半10kmの入りから後半は抜群の安定感を発揮していずれも20位以内でフィニッシュしました。相馬や川瀬もそれに続いて60位以内でまとめたほか、小林、山下、山本、杉山はペース走を維持し、岩佐、伊藤はペースを落としながらも安全圏を維持。それぞれがこの難しいレースを攻略しました。
またチーム内最下位となってしまった児玉は、沿道のファンによると他のメンバーのサポートに徹した結果の失速ではないかという意見があり、彼も数字に表れない自分の仕事を果たしたようです。


レース環境が一変する箱根路。関門は往路のスピード区間

スタミナがモノを言うレースを攻略した筑波大ですが、来たる箱根駅伝ではレース環境は一変し、冬の高速レースが予想されます。前述したとおり、今季のチームはスピード面では課題を抱えており、往路のスピード勝負でどれだけ遅れないかがまず目下の課題となりそうです。本来のスピードが戻りつつある金丸や今季スピード面を伸ばした西などを中心に、本番までにどれだけ課題を克服できるかは注目ポイントです。
それを乗り越えると、5区には前回の箱根の学連チームで好走した相馬が控えており、復路では予選会を突破したスタミナの見せどころも出てくるでしょう。26年ぶりの箱根路での勇姿に期待が集まります。



 
<日本大学>

 総合7位 タイム:10時間54分29秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 C・ドゥング(1年) 4位 62分33秒(-4分35秒)
 <28分56秒→15分19秒→15分13秒
 横山徹(3年) 24位 64分19秒(-2分49秒)
 <30分03秒→15分16秒→15分35秒
 樋口翔太(1年) 33位 64分33秒(-2分35秒)
 <30分07秒→15分27秒→15分42秒>
 武田悠太郎(3年) 41位 64分45秒(-2分23秒)
 <30分36秒→15分17秒→15分31秒
 小林陸大(3年) 87位 65分29秒(-1分39秒)
 <30分36秒→15分28秒16分01秒
 廣田全規(4年) 104位 65分42秒(-1分26秒)
 <30分36秒→15分33秒16分08秒
 金子智哉(4年) 129位 66分05秒(-1分03秒)
 <30分37秒→15分57秒→16分10秒
 大倉真亜玖(2年) 144位 66分21秒(-0分47秒)
 <30分41秒→15分46秒→16分18秒
 松木之衣(4年) 198位 67分09秒(+0分01秒)
 <30分36秒→16分05秒→16分54秒
 橋口大希(2年) 231位 67分33秒(+0分25秒)
 <31分04秒→16分31秒→16分32秒
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 野田啓太(3年) 244位 67分54秒(+0分46秒)
 <31分03秒→16分46秒→16分49秒
 八木志樹(1年) 274位 68分41秒(+1分33秒)
 <30分45秒→16分31秒→17分29秒

好判断で3年ぶりの予選会突破。近年の悪いイメージを振り払う

前々回は予選会で敗退し前回は関東インカレ枠で予選が免除されたこともあり、3年ぶりの予選会突破を目指す事となった日大。しかし、レース中盤からは気温が上昇し前半から前に仕掛けるペースで走っていたチームは選択を迫られます。その後、スタミナに不安がある選手は慎重なペース走に切り替えつつ大丈夫な選手は15kmまでペースを上げて仕掛け続けるという決断をとりました。最終的にその判断が功を奏しエースのドゥングはもちろんの事、横山、樋口、武田が最後までハイペースを維持して持ち堪え、8番手の選手までが最後の5kmのペースダウンも軽微な範囲にとどめる事が出来ました。その分の貯金で9番手以降の選手の遅れをカバーし、総合7位という余裕のある突破に繋げました。

中軸がレースを攻略。中位層が安全圏で粘り切る

エース・ドゥングは初の予選会でしたが、持ち前のスタミナを駆使して留学生集団についていきます。後半は個人の上位3選手に先行を許すも、その後日本人トップの伊藤(東京国際大)との熾烈な競争を制して4位でフィニッシュしエースの役割を果たしました。
中軸の横山、武田、そしてルーキーの樋口はその地力の高さを発揮。15kmまで強気のペースで攻めるとラスト5kmも大きくペースが落ちることなく上位でのフィニッシュを果たしました。それに続く小林、廣田、大倉は15kmまでを攻めた後ペースを落とすも安全圏で粘り切り、金子は冷静にペース走に切り替えて安全圏でゴールしています。
9番手以降は終盤に崩れたり慎重なペース走となってしまったものの、10番手までは充分貯金の範囲でのゴールとなりました。ただ、箱根に向けては今後個人でのアピールが必要な状況となったかもしれません。

前回の箱根を知る選手も多い。経験値でシード権を目指す

前回の箱根は4年生2人という若い布陣で終盤までシード権争いについていく内容を見せました。その箱根を経験した選手が中軸にいる今季のチームは充分な経験値を持っています。そこにドゥング、樋口、廣田、大倉といったニューカマーが加わったほか、予選会エントリー外の選手には阿部、鈴木、宮崎など前回の箱根経験者もいて彼らが箱根のレギュラー争いに加わる事も期待されます。
手強いライバルも多い箱根路ですが、若いチームで挑んだ前回の続きとしてシード権まで辿り着く走りを実現したいです。