10月26日(土)に2020年箱根駅伝の予選にあたる箱根駅伝予選会が開催されました。
ここでは各大学ごとに出場選手の個人順位、総合タイム、ボーダーとの時間差、細かいラップタイムなどを交えつつ、それぞれの大学の結果を総括してまいります。

今回は箱根出場権のボーダーライン付近となります総合8位~13位の国士舘大学、早稲田大学、中央大学、麗澤大学、駿河台大学、上武大学について振り返ってまいります。



【箱根駅伝予選会】

日時:10月26日(土)
会場(スタート地点):陸上自衛隊立川駐屯地(東京都立川市)
 <基準タイムについて>

 今回の総括ではそれぞれの選手が予選突破ラインの走りとどれだけのタイム差があったかを明確にするため、箱根出場権争いにおける基準タイムを決めてそのタイム差を記載します。

 <基準タイム>(総合8位~13位の大学の10人目にゴールしたの選手の平均タイム)
 67分08秒(個人順位197位相当)


 
<国士舘大学>

 総合8位 タイム:10時間55分21秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 R・ヴィンセント(2年) 2位 61分37秒(-5分31秒)
 <28分40秒14分47秒14分57秒
 清水悠雅(1年) 74位 65分21秒(-1分47秒)
 <30分52秒→15分33秒→15分39秒>
 鼡田章宏(4年) 75位 65分21秒(-1分47秒)
 <30分52秒→15分36秒→15分33秒
 福田有馬(4年) 78位 65分23秒(-1分45秒)
 <30分52秒→15分35秒→15分36秒>
 木榑杏祐(2年) 95位 65分35秒(-1分33秒)
 <30分53秒→15分34秒→15分46秒>
 綱島辰弥(1年) 113位 65分55秒(-1分13秒)
 <30分53秒→15分34秒16分07秒
 清水拓斗(2年) 114位 65分55秒(-1分13秒)
 <30分52秒→15分32秒→16分02秒>
 萩原陸斗(2年) 131位 66分06秒(-1分02秒)
 <30分53秒→15分39秒→16分13秒
 石川智康(4年) 134位 66分09秒(-0分59秒)
 <30分55秒→15分43秒→16分01秒
 加藤直人(3年) 248位 67分59秒(+0分51秒)
 <31分19秒→16分29秒→16分46秒
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 杉本日向(3年) 253位 68分07秒(+0分59秒)
 <30分53秒→16分39秒→17分09秒
 小早川寛人(2年) 295位 69分28秒(+2分20秒)
 <31分13秒→17分08秒→17分24秒

多くの逆境を乗り越え、今年も箱根路の切符を掴む

ここ数年の国士舘大を支えた「住吉世代」の卒業した事での戦力低下に加え、主力の一部が予選会メンバーからエントリー漏れするなど不安材料を抱えての箱根予選会となりました。更にレース自体も中盤にかけて気温が上がる難しい展開でしたが、終わってみれば8位での突破という不安を吹き飛ばす予選突破となりました。
ふたを開けてみるとエース・ヴィンセントの圧巻の走りがあるだけでなく、次の世代を担う若手の育成に成功していた事が分かる内容となりました。エース・ヴィンセントを含めるとチーム8番手までに1~2年生の選手が6人も入っています。どの選手も15kmまで勝負できるペースを維持するなど初の予選会とは思えない安定したパフォーマンス。ここまで若手が躍動する予選会というのはここ数年の国士舘大にはないものでした。

盤石のエース・ヴィンセント、躍動した1~2年生

エース・ヴィンセントは後続に50秒近い差をつける圧巻の走り。ただ、レダマ・キサイサ(桜美林大)に敗れての2位という結果は悔しさが残るものとなりそうです。来年以降は彼の天下となる予感も感じさせる圧巻の走りでした。
そして、鼡田、福田、石川といった主力は力を発揮しました。暑さを警戒してかやや慎重なペースでの前半でしたが後半はしっかり安定感を発揮。石川は終盤に抱えて少しペースを落としましたが安全圏で踏みとどまっています。
そしてチームとしては最も喜ばしいのが1~2年生の快走です。中でも1年生の清水悠は、鼡田や福田に近い位置取りで最後まで走り続けヴィンセントに次ぐチーム2番手の74位でゴール。そのほか、終盤まで安定感を見せた木榑や15kmまで勝負し終盤は安全圏で粘り切った綱島、清水拓、
萩原もしっかり貯金を稼ぎ予選突破に大きく貢献しました。
一方で、箱根経験者の加藤や主力級の地力の小早川が暑さに苦しみ下位に沈みました。ある程度得意な前半を抑えた慎重な入りでも後半のペースを上げる事が出来なかったのは、状態の悪さやスタミナ不足からくるものかもしれません。いずれにしても、現状では箱根の出走メンバー入りは黄信号となりそうです。

若返りを果たした新チームの箱根への挑戦が始まる

この予選突破は単に不安要素を解消しただけではなく、来年再来年に向けたチーム基盤を作り上げる勝利と言えるかもしれません。来たる箱根路の戦いは、彼らの適性を見出しながらチームが本格的にシード権を狙えるチームに成長するための挑戦の場ともなりそうです。
そして、今回予選会で力を出せなかった選手、予選会を走れなかった選手の中にも実力者は大勢います。ここから11月にかけての記録会・ロードレースで彼らがどれだけ箱根メンバー入りへアピールを見せて競争を活性化させるかも、挑戦の成功のための重要な要素となります。


 
<早稲田大学>

 総合9位 タイム:10時間55分26秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 太田智樹(4年) 16位 63分58秒(-3分10秒)
 <29分40秒15分09秒→15分52秒>
 井川龍人(1年) 44位 64分50秒(-2分18秒)
 <30分36秒→15分16秒→15分37秒>
 鈴木創士(1年) 60位 65分07秒(-2分01秒)
 <30分38秒→15分33秒→15分38秒>
 千明龍之佑(2年) 63位 65分10秒(-1分58秒)
 <30分29秒→15分40秒→15分45秒>
 遠藤宏夢(4年) 85位 65分27秒(-1分41秒)
 <30分39秒→15分39秒→15分48秒>
 吉田匠(3年) 103位 65分41秒(-1分27秒)
 <30分26秒→15分44秒→16分09秒
 山口賢助(2年) 115位 65分56秒(-1分12秒)
 <30分54秒→15分42秒→15分53秒>
 太田直希(2年) 118位 65分59秒(-1分09秒)
 <30分37秒→15分42秒→16分12秒
 三上多聞(4年) 160位 66分33秒(-0分35秒)
 <30分36秒→15分58秒→16分31秒
 尼子風斗(4年) 172位 66分45秒(-0分23秒)
 <30分40秒→16分01秒→16分41秒
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 向井悠介(2年) 223位 67分27秒(+0分19秒)
 <30分53秒→16分28秒→16分33秒
 宍倉健浩(3年) 254位 68分11秒(+1分03秒)
 <30分39秒→16分37秒→17分14秒

レース展開に苦しんだ名門、最後は意地の突破

小さいものから大きいものまでさまざまな誤算が重なり、名門早稲田大にとってはなんとも不本意な苦しい予選会となりました。戦前から、全日本大学駅伝に集中するために新迫や小指がエントリーから外れ、また状態が悪かった箱根経験者の選手もエントリー漏れするなど戦力が分散傾向にありました。それでも黄金世代の2年生とゴールデンルーキーが揃う1年生を軸に充分上位で突破できると予想されましたが、当日エースクラスの中谷の欠場が発表され、レース前半に何人かが早めのペースで仕掛ける中で気温上昇が起きたところからチームに逆風が吹き始めます。
レース後半から前へ仕掛けていけない選手が増えていき、15kmを過ぎてからは完全に我慢の走りに陥っていきます。チーム内で下位に沈んだ選手の多くは試合後に「試合前に決めた設定ペースにこだわりすぎてしまった」と話しており、暑さに対して後手にまわった事での消耗が後半に戦う力を奪ったようです。
ただ、後半苦しんだ選手も15kmまでは5kmあたり15分台で粘っていくあたりは名門の意地と地力の高さのなせる業でしょうか。それが総合9位に踏みとどまり箱根路の切符を掴む結果に繋がりました。

輝いたエースと1年、輝ききれなかった2年・4年

エース・太田智は日本人先頭集団で争っていくエースらしいレース運びを見せますが、暑さの影響は彼も例外ではなく15kmに無念の失速。16位でフィニッシュし目標よりもリードを稼げなかった悔しさを滲ませる結果になりました。
苦しむチームの中で輝いたのはゴールデンルーキー2人。井川は15kmまで強気のペースで攻めその後も安定した粘りで44位。鈴木は高校時代から持つ豊富なスタミナを駆使して安定したペース走で60位となり、1年生世代は突破に大きく貢献しました。
逆に苦しんだ選手が多かったのが黄金世代の2年生。千明が前半の早い入りから後半にも余力を残して63位と安定した結果を出しましたが、
山口賢は全体的に粘りのペース走で耐えて115位。太田直は前半の稼ぎを終盤に消費する形で118位。向井は後半苦しいペース走に終始する展開となり223位と、それぞれ期待された順位には届かなかったように思います。
その他でも、状態が良かった選手は遠藤のように粘りで結果を出せ、状態が悪かった選手は後半の失速を防げず順位を落としたような内容となっています。


レギュラー争いは激化。箱根路の布陣はどう変化するか

予選会の結果から箱根駅伝へのアピールが出来たのはチーム8番手の太田直あたりまでで、それ以降の選手はここからまたアピールが必要になりそうです。そして全日本大学駅伝では新迫や小指が好走を狙い、エントリー外となっている選手は11月から再び記録会やロードレースでのアピールを行います。ここからまた箱根のエントリー枠の約半分近くは激しい争奪戦が行われそうです。
(その後11月3日の全日本大学駅伝では、中谷が復帰したほか予選会で発揮できなかった前半のスピードも発揮するなどして6位の成績。箱根に向けてチーム状態を上向けています。)

そして箱根の布陣はまだまだ不透明。前回1区の中谷は回復次第で起用区間が変わる可能性はありますし、前回6区の渕田は現状エントリー漏れ組にいます(もちろん箱根1本に集中してる可能性もありますが)。
箱根駅伝は予選会よりはスピードが求められる早稲田らしい走りのできる環境です。予選会とは全く違うシード権を狙う展開に持っていくため、どのようなメンバーが選ばれるから今から楽しみです。



 
<中央大学>

 総合10位 タイム:10時間56分46秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 森凪也(2年) 15位 63分58秒(-3分10秒)
 <30分20秒→15分05秒→15分15秒
 畝拓夢(3年) 25位 64分20秒(-2分48秒)
 <30分20秒→15分10秒→15分33秒
 三浦拓朗(2年) 35位 64分37秒(-2分31秒)
 <30分35秒→15分18秒→15分20秒
 池田勘汰(3年) 51位 65分01秒(-2分07秒)
 <30分21秒15分33秒→15分45秒>
 矢野郁人(3年) 105位 65分45秒(-1分23秒)
 <30分37秒→15分30秒16分15秒
 川崎新太郎(3年) 124位 66分02秒(-1分06秒)
 <30分38秒→15分46秒→16分16秒
 岩原智昭(3年) 151位 66分24秒(-0分44秒)
 <30分36秒→15分53秒→16分26秒
 大森太楽(3年) 178位 66分48秒(-0分20秒)
 <30分41秒→16分11秒→16分31秒
 舟津彰馬(4年) 188位 66分54秒(-0分14秒)
 <30分28秒16分23秒→16分40秒
 三須健乃介(3年) 192位 66分57秒(-0分11秒)
 <30分39秒→16分09秒→16分42秒
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 千守倫央(1年) 224位 67分27秒(+0分19秒)
 <30分35秒→16分22秒→17分09秒
 井上大輝(2年) 287位 69分16秒(+2分08秒)
 <31分03秒→17分11秒→17分26秒

逆風の名門、新勢力を振り切って薄氷の予選突破

9位早稲田大と同じく、こちらも名門が苦しみました。前半から攻めていくプランで事前の10000m走の内容が良い選手を選んだ布陣でしたが、レース中に上がった気温により前半から予想以上に消耗する展開となります。試合後に藤原監督が「攻めの作戦を変更しきれなかった」(中央大学陸上部長距離ブロックのブログより)と反省の弁を述べたように、入念に準備した前半から攻めるプランに気持ちが寄りすぎてしまったのかもしれません。
そして後半戦ではチームの半数以上が苦しい我慢の展開。そして後ろからは麗澤大、上武大といった後半に攻めていくタイプのチームがじわじわと順位を上げて迫ってくる緊迫した展開でした。しかし終盤にはそれら後半型のチームも我慢の展開となり、まさに我慢比べ。最後は26秒差で逃げ切った中央大が薄氷の勝利で箱根路の切符を掴みました。
こちらも藤原監督がのコメントされていましたが、箱根駅伝や全日本大学駅伝予選ではあと一歩のところで成功を逃してきたチームが、逆にその一歩を逃げ切って最低限ながらも成功を掴む・・という不思議な展開でした。

次世代のエースが輝く一方、苦しんだ主力

前半から襲った暑さをねじ伏せてチームを引っ張ったのは、今季トラックシーズンで輝いた森凪也と三浦の次世代エース、そして復活した畝と池田でした。
森凪也、畝、三浦は暑さにも負けず後半も攻めのペースを維持しいずれも40位以内でフィニッシュ。森凪也と三浦はスピード・スタミナを兼ね備えるエースとしての雰囲気が漂い始めています。昨季は苦しいシーズンだった畝も今季は見事に復活して頼もしい存在になっています。彼らに続いた池田も51位でフィニッシュし、不本意な結果だった全日本大学駅伝予選からはしっかりと状態を戻してきました。
それ以降の選手はそれぞれ我慢の展開でした。矢野、川崎、岩原などは15kmまでなんとか粘る事が出来て安全圏を保てましたが、舟津や三須といった実力者が200位に近いところまで落ちてしまたのはスタミナ面での状態があまり良くなかった部分もあるかもしれません。

レギュラー争いは激化必至、軸となるのは経験者か新勢力か

箱根に向けて盤石の内容を見せる事が出来たのは2桁順位の4人までで、終盤に課題を見せた100位台の選手もまだ今後の調整によっては箱根出走は確実とは言えなさそうです。もちろん、舟津や三須といった中軸選手も例外ではないでしょう。そして11月にはエントリー外の選手やBチームの選手達が記録会やロードレースでアピールするターン。本番まで激しいレギュラー争いが展開されそうです。
盤石な内容の4人はそのまま箱根往路を任せられそうな選手ばかりです。4区経験者の池田に5区経験者の畝、出走経験はないもののスピード・スタミナを兼ね備えた森凪也と三浦。この部分に関しては、箱根に向けての安心材料となりそうです。


 
<麗澤大学>

 総合11位 タイム:10時間57分12秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 宮田僚(4年) 49位 64分57秒(-2分11秒)
 <30分38秒→15分23秒→15分37秒>
 国川恭朗(4年) 58位 65分04秒(-2分04秒)
 <30分21秒15分19秒→15分56秒>
 椎野修羅(2年) 69位 65分16秒(-1分52秒)
 <30分54秒→15分33秒→15分31秒
 植田陽平(3年) 76位 65分22秒(-1分46秒)
 <30分41秒→15分45秒→15分37秒>
 杉保滉太(3年) 83位 65分26秒(-1分42秒)
 <30分38秒→15分23秒→15分53秒>
 竹内奨真(3年) 101位 65分41秒(-1分27秒)
 <30分54秒→15分33秒→15分57秒>
 難波天(3年) 107位 65分47秒(-1分21秒)
 <30分54秒→15分32秒→15分54秒>
 水野優希(3年) 145位 66分22秒(-0分46秒)
 <30分53秒→15分48秒→16分13秒
 萩原新(3年) 162位 66分36秒(-0分32秒)
 <30分54秒→15分49秒→16分33秒
 山本蒼弥(2年) 165位 66分41秒(-0分27秒)
 <31分23秒→15分49秒→15分57秒>
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 小林琢人(3年) 202位 67分11秒(+0分03秒)
 <31分23秒→15分52秒→16分25秒
 河内宏太(4年) 203位 67分11秒(+0分03秒)
 <31分23秒→15分50秒→16分25秒

更なる成長で難レースを凌ぐも、最後に26秒差の壁

11位と1分50秒差だった前回の予選会。そこから今回は10位と26秒差というところまでチームは成長しました。それでも手が届かない箱根路の切符でしたが、同時に来年こそはきっと届くという感触も残していたのではないでしょうか。
この予選会では、前回からのプランを改良してある程度前半のペースも上げてレースに入っていきました。前回はチームの半数近くが10kmあたり31分フラット(今回は31分30秒あたりに相当)だった事を思うと、ある程度前半でも稼げるチームに変えていこうという意思も感じます。しかし、気温上昇によって前半型のチームに逆風となったレース展開を前に、この判断が吉と出たか凶と出たかは難しいところとなりました。勝負の後半は15kmまでは全ての選手が15分台のペースで主力は15分台前半で仕掛けていきます。しかし終盤にかけて暑さに足を取られ多くの選手があと一歩仕掛けきれず2年連続の次点となる総合11位。個々の順位としては安定した内容でまとめられたもののチームとしては非常に悔しい結果に終わりました。


気温上昇の中、終盤に出しきれなかった「麗澤らしさ」

スタミナに定評のある後半型のチームであっても、急激な暑さへの対応力を問われる展開となりました。宮田、椎野、上田、山本といったあたりはそこをうまく対応して後半のペースを安定化させました。山本は前半スローな入りだった後方のグループ走から安定した走りで順位を上げていき10番手としての仕事を果たしました。
一方で、15km以降で暑さに足を取られた選手が多かった点は今回の勝負を左右したポイントになったと思います。豊富なスタミナを持つエース・国川をはじめ15km~20km区間で10~15km区間より20~40秒ほど落とした選手が多く出ました。前回の予選会では10番手の選手までは15~20秒でまとめていた事を思うと、麗澤大であってもこの暑さの対処が難しかった事が分かります。試合後、エース・国川選手は大きな責任を感じている旨のコメントをされていましたが、チーム全体としても終盤に麗澤らしさを出しきれなかった点が26秒の壁に屈した理由となった部分はあるでしょう。

着実に成長する2~3年生を軸に、来年こそ箱根路へ

チームを牽引した国川、宮田の卒業はチームの総合力としては痛いですが、それでも来年も箱根を射程圏に捉え続けるだけの収穫もありました。椎野、植田、杉保、竹内はいずれも前回の予選会から大幅に順位を上げ、初の予選会となった難波もしっかり実力を発揮しました。彼らの中から、来年国川や宮田と同等かそれ以上の走りをする選手が出てくることは充分期待できます。今回の予選会では今一つ奮わなかった水野や萩原も予選会の新たな面を知って戦い方に幅を持たせられると思います。また椎野に続く2年生世代の山本も初の予選会としては充分健闘したと言えます。
この2~3年生世代を軸にこの1年でどれだけ力をつけて今年のチーム力を上回るか・・・それが出場権を争う新たなライバルも出てきている中での麗澤大のポイントとなりそうです。特に今年は出走がなかった1年生世代の成長は鍵を握りそうです。


 
<駿河台大学>

 総合12位 タイム:10時間58分44秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 J・ブヌカ(2年) 8位 63分26秒(-3分42秒)
 <29分04秒→15分28秒→15分29秒
 吉里駿(3年) 32位 64分30秒(-2分38秒)
 <30分03秒→15分23秒→15分43秒>
 町田康誠(1年) 80位 65分24秒(-1分44秒)
 <30分52秒→15分36秒→15分36秒>
 阪本大貴(2年) 88位 65分29秒(-1分39秒)
 <30分52秒→15分53秒→15分29秒
 石山大輝(3年) 136位 66分11秒(-0分57秒)
 <30分52秒→15分57秒→15分57秒>
 河合拓巳(3年) 143位 66分21秒(-0分47秒)
 <30分55秒→16分02秒→16分04秒>
 堀内弘輝(3年) 149位 66分23秒(-0分45秒)
 <30分52秒→15分54秒→16分08秒
 永井竜二(1年) 167位 66分41秒(-0分27秒)
 <31分04秒→16分02秒→16分12秒
 馬場凌太(4年) 197位 67分09秒(+0分01秒)
 <31分01秒→16分18秒→16分18秒
 清水涼雅(4年) 200位 67分10秒(+0分02秒)
 <31分38秒16分20秒→15分54秒>
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 田尻健(2年) 214位 67分21秒(+0分13秒)
 <31分21秒→16分22秒→16分12秒
 福谷駿(4年) 232位 67分33秒(+0分25秒)
 <31分07秒→16分31秒→16分27秒

技術と成長で、難レースの中で大きなジャンプアップ

多くの大学が暑さに苦しみ去年よりも大きくタイムを落す戦いとなる中で、駿河台大学は去年とほぼ変わらないタイムで予選会を戦い抜きました。それが18位から12位への大きなジャンプアップを実現させ、この1年でのチームの成長を実感させる内容だったことを表しています。
ポイントとなったのは後半のペース走の安定と去年の課題を的確に改善してきたところです。後半のペースを崩さない戦い方は一昨年あたりからかなり形になってきており、今回の予選会ではほとんどの選手がその徹底に成功しています。また去年は涼しいレースながら前半の入りがかなりスローだった点が課題でしたが、今回はこの暑さの中でそれを大きく改善。今年のペースを昨年水準に換算すると、選手によっては昨年よりも1分近く前半を縮めた上で後半のペース走を成立させています。
箱根を目指す上で非常に注目すべき戦術と成長モデルだと感じます。


大きく稼いだWエースと、ペース走で安定した中位層

Wエースのブヌカと吉里は確実な仕事をしました。ブヌカは前半ハイペースの留学生集団で走りながらも後半はペースの安定に努めて9位。次回に向けての課題は日本人選手のトップに負けない後半の粘りにする点でしょうか。そして日本人エースの吉里もハイペースな前半で後半の安定が難しくなるところを15~20km地点で20秒遅れる程度にまとめました。ここからさらに後半を安定させると順位を10~15ほどはアップを狙えるので、来季はそこが課題でしょうか。
そして成果が大きかったのは中位層です。前半をかなり慎重に入った清水以外は前半10kmを200位切りの最低ライン(今回ですと31分30秒)より早く通過。そこからあの暑さの中でも各々がペース維持に努め15~20kmでペースを崩した選手はほぼ皆無。むしろ、10~15kmを慎重に入った選手はその後ギアを上げてペースアップも出来ています。戦前の展望では「200位以内に何人は入れるかがポイント」と書きましたが、チーム10番手までがしっかり200位に入ったのは予想以上の結果です。
中でも特に光ったのが去年の258位から88位にジャンプアップした阪本、そして1年生ながら隙のない走りで阪本の上を行く80位となった町田です。この若手2人は今の駿河台の戦い方の象徴的な選手であり、吉里の後を継ぐ次期エースのポテンシャルも期待できます。


若いチームは経験値を貯え、来年箱根路へ大勝負

チームの8番手までが1年生2人を含む1~3年生で構成されている点は経験値を貯える意味で非常に来年に向けて大きな希望となります。軸となる2人のエースは来年も在籍しているほか、2桁順位となった町田、阪本の成長も楽しみです。
去年と今年で今の戦い方が箱根駅伝予選会で通用する事ははっきりしましたし、スタミナ向上とともにどういうポイントを改善させるかも見えている事でしょう。個人的には、麗澤大以上に次回の箱根駅伝予選会を突破する有力チームとして注目しています。駿河台大の箱根路の切符獲得に向けた大勝負に要注目です。



 
<上武大学>

 総合13位 タイム:11時間00分16秒

 <ハーフ>
PB:自己ベスト(※確認出来た範囲で記載)
※<>は0~10km→10~15km→15~20kmごとのタイム

 岩崎大洋(3年) 12位 63分52秒(-3分16秒)
 <30分22秒→15分03秒→15分12秒
 坂本貫登(3年) 18位 64分00秒(-3分08秒)
 <30分21秒→14分58秒→15分22秒
 武田貫誠(4年) 99位 65分40秒(-1分28秒)
 <30分52秒→15分34秒→15分53秒>
 野上蓮(4年) 100位 65分41秒(-1分27秒)
 <30分58秒→15分46秒→15分41秒>
 村上航大(1年) 148位 66分22秒(-0分46秒)
 <31分21秒→15分39秒→16分03秒>
 佐々木守(4年) 156位 66分28秒(-0分40秒)
 <30分58秒→16分05秒→16分00秒>
 齋藤優(4年) 179位 66分48秒(-0分20秒)
 <31分09秒→16分02秒→16分28秒
 橋立旋(4年) 189位 66分54秒(-0分14秒)
 <31分23秒→16分09秒→16分03秒>
 松倉頼人(3年) 207位 67分14秒(+0分06秒)
 <30分47秒→16分27秒→16分32秒
 内藤宗昌(2年) 209位 67分16秒(+0分08秒)
 <31分21秒→15分52秒→16分27秒
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 渡辺一輝(2年) 222位 67分27秒(+0分19秒)
 <31分19秒→16分28秒→16分16秒
 西村暉(2年) 302位 69分42秒(+2分34秒)
 <31分21秒→16分51秒→17分41秒

11で止まった連続出場。暑さを前に後半勝負が鈍る

精神的なタフさや後半の粘りを軸に初出場から11年連続で箱根駅伝連続出場を果たしてきた上武大でしたが、その記録が途絶えました。主力や勢いのある選手が前半からハイペースで仕掛ける一方で、後方では暑さを感じて前半10mを比較的慎重なペースで入る選手も多かったです(ただ、ペース配分は各々の判断なのかグループとして固まってはいませんでした)。
ここからの後半勝負と思われましたが、前半10kmで予想以上に消耗してたのが上武大の誤算でした。10~15kmを15分台のペースで勝負に出れたのが全体の半数。佐々木や橋立といった実力のある選手も16分台のペース走で我慢の走りとなってしまいます。15km以降はさらに勝負に出れる選手も減ってしまいました。大崩れを回避できた選手が多いのは良かったですが、最後まで勝負できた人数の差はそのまま順位に出てしまいました。

次期エースが現れる一方、最後の年に苦しんだ主力も

2年生で箱根を経験した岩崎、坂本が大きな成長を見せました。15kmまでを強気のペースで攻め、その後も崩れる事のないハイレベルな走りを披露。かつてのエース坂本佳に匹敵する10位台の順位で2人がフィニッシュできたのは嬉しい成果です。
だからこそ、主力の4年生が暑さを前に守勢に回ったのは悔やまれます。武田、野上は後半も5kmあたり15分台をキープして戦えましたが、佐々木、橋立といった実力者が前半で消耗し後半のペースを5kmあたり15分台に持っていく事が出来ませんでした。またスタミナにやや難があった齋藤も力を発揮できない展開でした。

1年生が結果を出すなど育成は良好。来年の原動力にできるか

岩崎、坂本の快走は来季Wエース体制を敷ける好材料ですが、1年生村上が15kmまで粘りの走りを見せて148位と結果を出しました。遅咲きの選手が比較的多い上武大では期待の逸材です。また、内藤、渡辺といった2年生が早い段階で予選会を経験できている事も大きいです。西村は2度目の予選会でしたが前回に続きチーム下位となってしまいなかなか予選会にフィットできていないのは心配です。
現状はまだ来季に向けての戦力が足りないように感じますが、3年生頃から箱根に挑むレベルの力をつける遅咲きの選手も毎年出てきているので、今年もそこに期待しましょう。