2020年の箱根駅伝も幕を閉じました。ここでは、

・途中のポイントでの区間順位及びタイム
・優勝ラインやシードラインとの比較
・過去の成績との比較

などの要素を交えながら、各選手の走りやチーム成績などについて総括してまいります。

振り返りも終盤戦に。最後はシード権争いを繰り広げた総合10位前後の大学を振り返ってまいります。
今回は総合13位の拓殖大学です。



【拓殖大学】

 総合13位  11時間04分28秒

 <順位変動>
 (往路平地)  17位 → 11位 → 11位 → 10位
  (山)  → 10位 → 11位
 (復路平地)→ 12位 → 12位 → 12位 → 13位



 <基準タイムについて>

各選手の走りの出来や貢献度の指標として、管理人が算出した優勝やシード獲得などの基準タイムと比較していきます。

 <優勝ライン> :各区の区間3位
<シード権ライン>:各区の区間10位
<繰り上げライン>:往路・・・1~5区の区間13位
          復路・・・
6~10区の区間17位

総合6位までの大学は
<優勝ライン>と<シード権ライン>、それ以降の大学は<シード権ライン>と<繰り上げライン>と比較します。

<優勝ライン>
優勝の基準になるタイム。合計が総合1位と総合2位の間あるいはその付近になる区間順位
<シード権ライン
シード権獲得の
基準になるタイム。合計が総合10位と総合11位の間あるいはその付近になる区間順位
<繰り上げライン
「復路スタート時の繰り上げ(トップと10分差以上)」と「復路(6~9区)の繰り上げ回避」をするための目安となる区間順位。基本的に往路の方が目安順位が高くなります。




 <1~4区>

<1区> 竹蓋草太(2年) 
蒲田(15.2km) 区間16位 44:35
鶴見中継所(21.3km) 
区間17位 63:40
<シード権ライン(+1分30秒) <繰り上げライン(+0分37秒)
<2区> R・レメティキ(1年)
権太坂(15.2km) 区間3位 43:39
戸塚中継所(23.1km) 
区間2位 66:18
<シード権ライン(-1分34秒) <繰り上げライン(-1分59秒)
<3区> 赤﨑暁(4年)
茅ヶ崎(14.3km)
 区間9位 41:37
平塚中継所(21.4km) 区間9位 62:53
<シード権ライン(-0分10秒) <繰り上げライン(-0分39秒)
<4区> 吉原遼太郎(3年)
二宮(8.9km)
 区間13位 26:22
小田原中継所(20.9km) 区間14位 63:21
<シード権ライン(+0分32秒) <繰り上げライン(+0分22秒)

【各区間の直近大会との比較】
 ※92回~95回の拓殖大学の記録と比較
 (4区・5区は93回大会以降の記録と比較)
<1区>
竹蓋草太(2年) 
 区間17位 
 63:40
 区間3位~区間18位 
 62:00~64:43 
<2区>
R・レメティキ(1年)
 区間2位 
 66:18
 区間2位~区間11位 
 67:47~69:29 
<3区>
赤﨑暁(4年)
 区間9位 
 62:53
 区間8位~区間20位 
 63:10~67:44 
<4区>
吉原遼太郎(3年)
 区間14位 
 63:21
 区間6位~区間13位 
 63:17~64:44 

<1区> 竹蓋草太(2年)
1区は期待の成長株、竹蓋選手。全日本大学駅伝でスターターに挑戦しており箱根でも1区起用となりました。しかし今回の箱根1区では、よくある牽制合戦の集団走ではなく先頭集団がリスクを負いながら本気の振り落としをかける高速レースとなります。スタミナ型に近い竹蓋選手にとっては先頭集団を維持するのは厳しいものがあり10km過ぎに先頭集団から離れるとしばらくは苦しい走りになります。蒲田(15.2km)の地点で先頭から1分以上差をつけられてしまいますが、そこから終盤にかけては少しずつ走りを立て直していきその甲斐あってなんとか63分台でまとめます。とはいえ、トップとは2分半近い差で区間17位での襷渡しで、厳しいスタートとなりました。

<2区> R・レメティキ(1年)
2区はデレセ選手の後を継ぐ新たな留学生エース・レメティキ選手。この秋にハーフ61分台をマークするなど一気にその存在感を増してきました。するとその力を箱根でも存分に発揮します。後方からの単独走ながらも横浜駅前(8.2km)までを区間5位のペースで入ると、中盤の横浜駅前~権太坂では区間3位、さらに坂を終えた後の終盤は区間トップのペースとなります。今回の2区の中盤以降は区間トップペース=区間新記録ペースと言えるので、レメティキ選手のハイレベルさはそこからも伝わります。区間賞こそ逃したものの箱根2区歴代4位のタイムで区間2位。1年生でこの結果なのですから、来年以降も非常に楽しみな選手です。

<3区> 赤﨑暁(4年)
2区で順位を11位まで引き上げ、続く3区は日本人エース・赤﨑選手が走ります。この秋の好調ぶりを箱根で活かすべく要所での起用となります。序盤、藤沢(7.6km)までは区間11位ペースとまずまずの入りを見せると、そこから中盤・終盤にかけてはいずれも区間9位ペースをキープ。63分切りのタイムで区間9位にまとめた内容は、11月に故障があった事を思えばかなり良い内容。そして赤﨑選手にとって4回目の箱根で初の区間1桁順位で、高速レースの中で流れ作りに貢献できた結果となりました。

<4区> 吉原遼太郎(3年)
チーム順位は11位ながらも7位までは混戦模様となる中で、4区は2度目の箱根となる吉原選手が出走。チームでも上位のスピードで登り基調のコースに挑みますが、高速レースの中ではなかなか上位のペースとなれず二宮(8.9km)までは区間14位ペース、そこから後半は区間16位ペースで進んでいきます。全体としては63分台前半と近年の拓殖大4区としては悪くないタイムでまとめますが、高速レースの中では区間14位といまいち結果に繋がらず。ただ、後方には差を詰められながらも前方で失速したチームが出たためチーム順位が10位となりシード圏に入りました。



 <5~6区>

<5区> 石川佳樹(3年) 
小涌園前(11.7km) 区間10位 41:17
芦ノ湖(20.8km) 
区間11位 72:56
<シード権ライン(+0分01秒) <繰り上げライン(-0分54秒)
<6区> 玉澤拓海(4年)
小涌園前(9.0km) 区間19位 27:38
小田原中継所(20.8km) 
区間18位 60:27
<シード権ライン(+1分07秒) <繰り上げライン(+0分02秒)

【各区間の直近大会との比較】
 ※92回~95回の拓殖大学の記録と比較
 (4区・5区は93回大会以降の記録と比較)
<5区>
石川佳樹(3年) 
 区間11位 
 72:56
 区間6位~区間11位 
 72:32~75:35 
<6区>
玉澤拓海(4年)
 区間18位 
 60:27
 区間7位~区間19位 
 59:55~63:40 

<5区> 石川佳樹(3年)
チーム順位がシード圏に入る中で、稼ぎどころとしたい山登りの5区には中軸の石川選手を起用します。高い総合力で山登りに適応していくと、大平台(7km)までの山登り前半は区間8位ペースで入ります。そこからの山登り後半はやや我慢の走りとなるも大平台~芦之湯間は区間12位ペース。そして終盤の下りでもペースを落とすことなく芦之湯~芦ノ湖間は区間11位ペースで進み、73分切りのタイムで区間11位。区間8位~11位が僅差だったことを考えても、高速レースの山をしっかり攻略したと言える走りを見せて、チームも10位で往路を終えました。


<6区> 玉澤拓海(4年)
6区は最後の年でチャンスを掴んだ玉澤選手が箱根デビュー。中距離ランナーの強みを活かして山下りに挑みますが、高速レースでレベルの上がった山下りが立ちはだかります。芦之湯(4.8km)までの序盤の登りは区間16位ペースとなんとか粘りの入りを見せますが、山下りへの適応に手こずり芦之湯~大平台では区間最下位ペースに落ちてしまいます。その後、終盤にかけては区間14位ペースまで持ち直しますが、全体としては60分台半ばのタイムで区間18位。大崩れする内容ではなかったですが高速レースの中では引き離される形となり、シード権とのタイム差を開かれた形でチーム順位を11位に落としてしまいました。



 <7~10区>

<7区> 兒玉陸斗(2年) 
二宮(11.6km) 区間8位 34:21
平塚中継所(21.3km) 
区間10位 64:28
<シード権ライン0分00秒) <繰り上げライン(-0分46秒)
<8区> 佐々木虎太郎(1年)
茅ヶ崎(6.7km) 区間15位 20:31
戸塚中継所(21.4km) 
区間14位 67:07
<シード権ライン(+0分28秒) <繰り上げライン(-0分14秒)
<9区> 中井槙吾(4年)
横浜駅前(14.5km)
 区間10位 43:21
鶴見中継所(23.1km) 区間12位 70:26
<シード権ライン(+0分21秒) <繰り上げライン(-0分55秒)
<10区> 清水崚汰(3年)
新八山橋(13.3km)
 区間20位 42:03
大手町(23.0km) 区間20位 72:52
<シード権ライン(+2分09秒) <繰り上げライン(+0分28秒)

【各区間の直近大会との比較】
 ※92回~95回の拓殖大学の記録と比較
<7区>
兒玉陸斗(2年) 
 区間10位 
 64:28
 区間9位~区間17位 
 65:32~66:21 
<8区>
佐々木虎太郎(1年)
 区間14位 
 67:07
 区間14位~区間17位 
 67:02~69:12 
<9区>
中井槙吾(4年)
 区間12位 
 70:26
 区間7位~区間19位 
 71:41~75:38 
<10区>
清水崚汰(3年)
 区間20位 
 72:52
 区間5位~区間17位 
 71:41~74:35 

<7区> 兒玉陸斗(2年)
7区はこの秋スピードを伸ばした若手の
兒玉選手が抜擢されました。下り基調のコースでそのスピードを活かして二宮(11.6km)までの前半を区間8位ペースで入ります。ハーフ未経験でスタミナ面は未知数でしたが、後半も大きく崩れる事はなく二宮~平塚間を区間12位ペースで進んでいき全体としては64分台半ばの区間10位と近年の拓殖大7区と比べても非常に優れたタイムでまとめました。これにより前との差を詰めていけるかと思われましたが、後方にいた早稲田大がこの7区でジャンプアップした事によりチーム順位が12位となり、10位との差もわずかに縮まるのに留まりました。

<8区> 佐々木虎太郎(1年)
8区はルーキーの佐々木選手が出走。高速レースへの対応の難しさもあり茅ヶ崎(6.7km)までの序盤は区間16位ペースの入りに。ただ、スタミナ面が不安視されながらも後半で崩れるという事はなく中盤の茅ヶ崎~遊行寺坂間は区間14位ペース、終盤の遊行寺坂~戸塚間は区間13位ペースと維持していきました。66分台が見えるタイムでの区間14位と比較的苦戦しやすい8区でルーキーながら健闘。その一方で前を走る10位のチームもこの8区ではそこまで伸びておらず、これを相手もミスして助かったと考えるか追いつくチャンスを逃したと考えるかは難しいところです。

<9区> 中井槙吾(4年)
シード獲得へ勝負をかけたい9区には、チーム内でも非常にスタミナのある中井選手を起用。前回は未出走ですが、前々回に9区7位の結果を出しています。序盤は権太坂(7.7km)まで区間9位ペースと良い入りを見せますが、中盤の権太坂~横浜駅前間でもペースを維持するに留まり区間10位ペース。そして横浜駅前~鶴見間では区間14位とペースダウンしてしまい前を追う走りをできません。70分台半ばのタイムは前回までなら区間上位を狙えたタイムですが、今回の高速レースにおいては区間12位というシード権争いにおいては厳しい結果に。前を走る中央学院大、創価大が9区で区間上位の走りをした事で10位と3分近い差に広がり、シード権争いからほぼ脱落となってしまいました。

<10区> 清水崚汰(3年)
アンカーを走るのは前回9区を走った清水選手。前回の経験を活かして少しでも前を追う走りをしたいところですが、シード権争いから離された流れの悪さもあってか走りに勢いがなく、蒲田(5.9km)までを18分オーバーの区間20位ペースと苦しい入りになります。そこから中盤にかけてもペースが上がらず蒲田~新八山橋間も区間20位ペースに。終盤は少し勢いが出て新八山橋~大手町間を区間16位ペースで進みますが、全体としては72分台後半のタイムで区間20位と非常に苦しい内容に。順位を1つ落とし総合13位でフィニッシュテープを切りました。



 <総括>

 中軸が役割を果たし往路はシード圏維持も、復路を含めた総合力では勝ちきれず
 今季は日本人エース・
赤﨑選手や新留学生のレメティキ選手が好調な一方で、駅伝シーズンでは結果を出せない選手が多いなど総合力での不安を抱えて箱根を迎えました。
 前半の往路では序盤から想定外の展開で下位スタートとなるなど厳しいレースになるかと思われましたが、2区でレメティキ選手がほぼ最高の内容でシード権争いの位置までもっていくと、続く要所の3区から山登りの5区まではその流れを守る走りを継続できシード圏を維持して往路を終えます。しかし、続く往路では6区で遅れライバルにリードを許すと7区以降はなかなかその遅れを取り戻せず、23km区間の9区で決定的な差に広げられてシード権争いから脱落となりました。
 内容で見ると、エースの走りをしたレメティキ選手や、赤﨑選手、石川選手といった中軸は
それぞれ難所で役割を果たしたように思います。そして中間層の選手もブレーキになった選手は少数でしたが、この高速レースによってシード権争いの基準タイムが前回よりさらにハイレベルとなり、過去の傾向から見ると良い走りをしながらもシード権との差が縮まらないという現象に苦しみました。チームの目標タイムはクリアしている事を考慮すると、今回の高速レースそのものがかなり高いハードルだったように思います。
 予選会から戦う事になる来季ですが、日本人エース・赤﨑選手や高いスタミナを持つ中井選手などが卒業。その戦力の穴は小さくありませんが、今回の箱根では持ちタイムから見てかなり健闘した選手も多く、調整力や勝負強さをある程度持ち合わせているのは好材料です。一方で地力の面では予選会の上位突破チームと比べるとやや物足りないので、そこを着実に底上げしていけるかは重要課題となります。



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 <2020箱根駅伝 結果総括>

青山学院  東海      國學院
帝京    東京国際    明治
早稲田   駒澤      創価   東洋  
中央学院  中央      拓殖
順天堂   法政      神奈川  日本体育
日本    関東学生連合  国士舘  筑波