2020年の箱根駅伝も幕を閉じました。ここでは、

・途中のポイントでの区間順位及びタイム
・優勝ラインやシードラインとの比較
・過去の成績との比較

などの要素を交えながら、各選手の走りやチーム成績などについて総括してまいります。

続いては、今回シード権争いにあと一歩届かず下位に沈んだ大学を振り返ってまいります。
今回は総合17位の日本体育大学です。



【日本体育大学】

 総合17位  11時間10分32秒

 <順位変動>
 (往路平地)  3位 → 9位 → 15位 → 16位
  (山)  → 18位 → 18位
 (復路平地)→ 18位 → 18位 → 18位 → 17位



 <基準タイムについて>

各選手の走りの出来や貢献度の指標として、管理人が算出した優勝やシード獲得などの基準タイムと比較していきます。

 <優勝ライン> :各区の区間3位
<シード権ライン>:各区の区間10位
<繰り上げライン>:往路・・・1~5区の区間13位
          復路・・・
6~10区の区間17位

総合6位までの大学は<優勝ライン>と<シード権ライン>、それ以降の大学は<シード権ライン>と<繰り上げライン>と比較します。

<優勝ライン>
優勝の基準になるタイム。合計が総合1位と総合2位の間あるいはその付近になる区間順位
<シード権ライン
シード権獲得の
基準になるタイム。合計が総合10位と総合11位の間あるいはその付近になる区間順位
<繰り上げライン
「復路スタート時の繰り上げ(トップと10分差以上)」と「復路(6~9区)の繰り上げ回避」をするための目安となる区間順位。基本的に往路の方が目安順位が高くなります。



 <1~4区>

<1区> 池田耀平(3年) 
蒲田(15.2km) 区間1位 43:41
鶴見中継所(21.3km) 区間3位 61:21
<シード権ライン(-0分48秒) <繰り上げライン(-1分41秒)
<2区> 山口和也(4年)
権太坂(15.2km) 区間13位 44:31
戸塚中継所(23.1km) 区間15位 68:25
<シード権ライン(+0分33秒) <繰り上げライン(+0分08秒)
<3区> 亀田優太朗(3年)
茅ヶ崎(14.3km) 区間20位 43:25
平塚中継所(21.4km) 区間20位 65:54
<シード権ライン(+2分51秒) <繰り上げライン(+2分22秒)
<4区> 太田哲朗(3年)
二宮(8.9km) 区間17位 26:49
小田原中継所(20.9km) 区間18位 64:20
<シード権ライン(+1分31秒) <繰り上げライン(+1分21秒)

【各区間の直近大会との比較】
 ※92回~95回の日本体育大学の記録と比較
 (4区・5区は93回大会以降の記録と比較)
<1区>
池田耀平(3年) 
 区間3位 
 61:21
 区間4位~区間13位 
 62:40~64:32 
<2区>
山口和也(4年)
 区間15位 
 68:25
 区間9位~区間18位 
 69:05~70:40 
<3区>
亀田優太朗(3年)
 区間20位 
 65:54
 区間4位~区間17位 
 64:07~65:39 
<4区>
太田哲朗(3年)
 区間18位 
 64:20
 区間8位~区間18位 
 63:34~66:06 

<1区> 池田耀平(3年)
1区は前回に続いて池田選手が続投します。今季スピードを中心にエース格の域まで力をつけた池田選手は、非常にハイペースの先頭集団に遅れることなくついていきます。また終盤でも手堅いタイミングでしっかりとスパートをかけていき、3位で2区に襷を渡しました。難レースの中でもしっかりと実力を発揮してほぼ完ぺきに役割を果たしました。

<2区> 山口和也(4年)
2区も前回に続きエース・山口選手が走ります。3位で襷を受けた事で、前半は先頭集団に加わってレースを展開しますが、次第にペースが上がり前回の自身の走りよりも早いペースでのレースが続く中で次第に疲労が溜まっていきます。中盤には先頭集団から脱落しその後終盤までズルズルとペースを落としていきます。横浜駅(8.2km)以降はいずれも区間16~17位ペースと苦しい走り。68分台前半と近年の日本体育大2区では最速のタイムながらも区間15位となり、高速レースの厳しさを味わいながら9位で3区に襷を渡しました。

<3区> 亀田優太朗(3年)
高いスタミナを持つ亀田選手が3区で箱根デビューを飾ります。高速レースの中で自分のペースとのバランスを維持する難しさに加えコンディション問題もあったのか、茅ヶ崎(14.3km)まで区間最下位のペースで推移し続ける苦しい展開になってしまいます。終盤僅かに向上したものの、結果は区間最下位とブレーキとなる苦い箱根デビューとなりました。

<4区> 太田哲朗(3年)
4区は今季駅伝シーズンで奮闘した太田選手が箱根デビュー。悪い流れを断ち切りたいところでしたが、彼もスピードレースへの対応に苦しみスタミナ面の不安も出る形で前半・後半共に区間下位のペースに終始してしまいます。近年の日本体育大4区と比べるとそこまで遅いタイムではないものの、高速レースにおいていかれる形で区間18位と厳しい結果になりました。



 <5~6区>

<5区> 藤本珠輝(1年) 
小涌園前(11.7km) 区間17位 42:06
芦ノ湖(20.8km) 区間16位 74:35
<シード権ライン(+1分40秒) <繰り上げライン(+0分45秒)
<6区> 廻谷賢(4年)
小涌園前(9.0km) 区間10位 26:57
小田原中継所(20.8km) 区間14位 60:00
<シード権ライン(+0分40秒) <繰り上げライン(-0分25秒)

【各区間の直近大会との比較】
 ※92回~95回の日本体育大学の記録と比較
 (4区・5区は93回大会以降の記録と比較)
<5区>
藤本珠輝(1年) 
 区間16位 
 74:35
 区間5位~区間11位 
 72:49~75:04 
<6区>
廻谷賢(4年)
 区間14位 
 60:00
 区間1位~区間15位 
 58:01~60:51 

<5区> 藤本珠輝(1年)
予選会でチームトップの快走を見せた藤本選手が5区の切り札として箱根デビューを飾りました。ただ、体調不良のアクシデントで12月に充分な調整が行えなかった事もあって、なかなか実力を発揮しきれない展開に。芦之湯(15.8km)までの登りエリアは区間17位ペースとなかなか苦しい山登りとなりますが、終盤の下りでなんとか意地を見せ芦之湯~芦ノ湖間は区間10位ペースまで上げていきます。区間16位と悔しいデビューでしたが力を出し切れない中で74分台半ばでまとめた点からは地力の高さが伺えますし、万全な状態での山登りにも期待したいです。

<6区> 廻谷賢(4年)
3度目の箱根となる廻谷選手は前々回走った6区での起用となります。序盤の登りで区間9位ペースと良い入りを見せると大平台(13.4km)までは区間中位ペースを維持し2年前の自身の走りを1分近く上回ります。しかし終盤の平地で足が止まってしまいペースダウンをし、最後を思うようにまとめきれませんでした。2年前と比べ約50秒タイムを更新しましたが、区間順位は2年前とほぼ変わらない区間14位。自身の成長と高速化の難しさを両方感じる結果となりました。



 <7~10区>

<7区> 大内一輝(3年) 
二宮(11.6km) 区間14位 34:42
平塚中継所(21.3km) 区間17位 65:14
<シード権ライン(+0分46秒) <繰り上げライン0分00秒)
<8区> 嶋野太海(3年)
茅ヶ崎(6.7km) 区間12位 20:28
戸塚中継所(21.4km) 区間17位 68:05
<シード権ライン(+1分26秒) <繰り上げライン(+0分44秒)
<9区> 野上翔大(3年)
横浜駅前(14.5km) 区間17位 44:11
鶴見中継所(23.1km) 区間16位 71:21
<シード権ライン(+1分16秒) <繰り上げライン0分00秒)
<10区> 中川翔太(4年)
新八山橋(13.3km) 区間10位 40:32
大手町(23.0km) 区間13位 71:17
<シード権ライン(+0分34秒) <繰り上げライン(-1分07秒)

【各区間の直近大会との比較】
 ※92回~95回の日本体育大学の記録と比較
<7区>
大内一輝(3年) 
 区間17位 
 65:14
 区間2位~区間11位 
 64:45~65:43 
<8区>
嶋野太海(3年)
 区間17位 
 68:05
 区間3位~区間15位 
 65:38~67:57 
<9区>
野上翔大(3年)
 区間16位 
 71:21
 区間6位~区間14位 
 71:37~73:26 
<10区>
中川翔太(4年)
 区間13位 
 71:17
 区間2位~区間16位 
 71:01~73:20 

<7区> 大内一輝(3年)
7区は箱根デビューの大内選手。スピード面の強みを下り基調の7区で活かしたいところでしたが、二宮(11.6km)まで区間14位ペースとなかなか力を発揮できません。そこから後半はさらに区間下位ペースにまで落としてしまい、全体としては区間17位。実力のある選手だけに箱根で力を発揮する難しさを感じさせる内容となりました。

<8区> 嶋野太海(3年)
8区は予選会にも出走した嶋野選手が箱根デビュー。序盤の茅ヶ崎(6.7km)までは区間13位ペースとまずまずの入りをしますが、中盤から終盤にかけてはどんどんペースダウン。遊行寺坂~戸塚にかけては区間20位ペースまで落としてしまうなど、登り口調の8区にかなり苦しみます。タイムも近年の日本体育大8区と比べてもかなり遅く、実力を発揮することはできませんでした。

<9区> 野上翔大(3年)
9区は全日本大学駅伝に出走した野上選手が箱根デビュー。スタミナに強みのある選手ですが、横浜駅前(14.5km)で区間18位ペースとなかなか高速レースについていけません。終盤には少しペースを上げたものの区間16位。71分台前半でまとめたタイムは近年の日本体育大9区の中では最も早いタイムですが、今回の高速レースの水準からは離されてしまいました。

<10区> 中川翔太(4年)
アンカーは4度目の箱根そして3度目の10区を走る中川選手。中盤までは区間3位となった2年前よりも早いペースを展開し新八山橋(13.3km)までは区間10位で推移します。しかしそこから終盤にかけては粘り切れずペースを落としてしまい区間13位となり、総合17位のフィニッシュテープを切りました。中川選手の実力を思うと力を発揮できたとは言えない内容となってしまいました。



 <総括>

 シード権を狙うも無念の繰り上げスタート。力を発揮できない選手も多く来季への危機感を抱く箱根に
 シード権争い候補に挙がった大学の中では非常に厚い選手層を誇り、池田選手、山口選手、中川選手ら中軸をはじめ総合力の高い選手を揃えて箱根に挑んだ日本体育大でしたが、コンディションや調整に苦しむ結果となってしまいました。
 レース運びや流れ作り以前に、1区池田選手、2区山口選手以外は本来の力を発揮できたとは言えない内容でした(山口選手もタイムこそ良いですが今季の内容からすればもっと上を狙えたと思います)。アクシデントなどで調整に時間を費やせなかった選手もいますが、これだけの人数が力を発揮できないとシード権争いは厳しく、結果的には9区終了時に繰り上げスタートまで経験してしまいました。
 現状は新しい指導体制を構築中の段階とはいえ、今の指導陣に駅伝の経験値が少ない事は今回のレース内容と無関係ではないでしょう。来季の箱根駅伝予選会に影響を及ぼしかねないこの悪い流れに対してチームも危機感を抱いているようで、来季に向け新たな監督招聘の話も出ています。
 山口選手、廻谷選手、中川選手といった実力者は卒業するものの、選手層の厚みや実力水準の高さは新チームにおいても健在です。ピーク調整をはじめとした準備態勢を如何に構築していくかが来季に向けた大きな課題となりそうです。



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 <2020箱根駅伝 結果総括>

青山学院  東海      國學院
帝京    東京国際    明治
早稲田   駒澤      創価   東洋  
中央学院  中央      拓殖
順天堂   法政      神奈川  日本体育
日本    関東学生連合  国士舘  筑波