2020年の箱根駅伝も幕を閉じました。ここでは、

・途中のポイントでの区間順位及びタイム
・優勝ラインやシードラインとの比較
・過去の成績との比較

などの要素を交えながら、各選手の走りやチーム成績などについて総括してまいります。

続いては、今回シード権争いにあと一歩届かず下位に沈んだ大学を振り返ってまいります。
今回は総合19位相当となった関東学生連合です。



【関東学生連合】

 総合19位相当  11時間12分34秒

 <順位変動>
 (往路平地)  17位 → 19位 → 18位 → 17位
  (山)  → 19位 → 18位
 (復路平地)→ 19位 → 18位 → 17位 → 19位



 <基準タイムについて>

各選手の走りの出来や貢献度の指標として、管理人が算出した優勝やシード獲得などの基準タイムと比較していきます。

 <優勝ライン> :各区の区間3位
<シード権ライン>:各区の区間10位
<繰り上げライン>:往路・・・1~5区の区間13位
          復路・・・
6~10区の区間17位

総合6位までの大学は<優勝ライン>と<シード権ライン>、それ以降の大学は<シード権ライン>と<繰り上げライン>と比較します。

<優勝ライン>
優勝の基準になるタイム。合計が総合1位と総合2位の間あるいはその付近になる区間順位
<シード権ライン
シード権獲得の
基準になるタイム。合計が総合10位と総合11位の間あるいはその付近になる区間順位
<繰り上げライン
「復路スタート時の繰り上げ(トップと10分差以上)」と「復路(6~9区)の繰り上げ回避」をするための目安となる区間順位。基本的に往路の方が目安順位が高くなります。



 <1~4区>

<1区> 吉里駿(駿河台大・3年)
蒲田(15.2km) 区間17位 44:39
鶴見中継所(21.3km) 区間17位 63:32
<シード権ライン(+1分23秒) <繰り上げライン(+0分30秒)
<2区> 山口武(東京農業大・3年)
権太坂(15.2km) 区間20位 45:57
戸塚中継所(23.1km) 区間20位 70:27
<シード権ライン(+2分35秒) <繰り上げライン(+2分10秒)
<3区> 菅原伊織(城西大・3年)
茅ヶ崎(14.3km) 区間13位 41:52
平塚中継所(21.4km) 区間11位 63:12
<シード権ライン(+0分09秒) <繰り上げライン(-0分20秒)
<4区> 上土井雅大(亜細亜大・4年)
二宮(8.9km) 区間12位 26:16
小田原中継所(20.9km) 区間15位 63:24
<シード権ライン(+0分35秒) <繰り上げライン(+0分25秒)

【各区間の直近大会との比較】
※関東学生連合以外に箱根出場回数が少ない時の大学の成績と比較します
 ※91回創価大、92回東京国際大、
  93回~95回の関東学生連合の記録と比較
 (4区・5区は93回大会以降の記録と比較)
<1区>
吉里駿(3年) 
 区間17位 
 63:32
 区間13位~区間22位 
 62:46~68:01 
<2区>
山口武(3年)
 区間20位 
 70:27
 区間13位~区間21位 
 69:56~74:41 
<3区>
菅原伊織(3年) 
 区間11位 
 63:12
 区間3位~区間21位 
 63:32~67:34 
<4区>
上土井雅大(4年) 
 区間15位 
 63:24
 区間10位~区間21位 
 64:56~65:47 

<1区> 吉里駿(駿河台大・3年)
1区志望が多かった今回のチームの中で選ばれたのが駿河台大・吉里選手。前半は首脳陣が想定したペース以上の高速レースの中で先頭集団についていきますが、10km付近で離れてしまいます(この時10kmのペースを確認して慎重になったらしく、この判断が悪い方向に出てしまったと駿河台大・徳本監督は話されていました)。離れた後は堅実なペース配分で大崩れを避けて63分台半ばと近年の関東学生連合1区ではかなり速いタイムでまとめましたが、先頭集団の恩恵を受けられない影響は大きく区間17位での襷渡しとなりました。

<2区> 山口武(東京農業大・3年)
花の2区にはチーム内で予選会トップの成績の東京農業大・山口選手が選ばれました。単独走であり時折後方から留学生選手に抜かれてしまう難しいレース環境のなか、大崩れを割ける堅実なペースで進めていきます。しかし、全体が高速化している中では区間下位のペースに終始する形となってしまい、70分台半ばのタイムで区間20位。彼と似た持ちタイムで68~69分台で走れている選手も少なくないので、力を発揮しきれなかった部分はあるように思います。

<3区> 菅原伊織(城西大・3年)
3区はトラックでのスピードがピカイチの城西大・菅原選手。チーム練習でも一段違う走りを見せていたと言われており、そのスペックと勢いを箱根の舞台でも発揮します。序盤こそ藤沢(7.6km)までは区間17位ペースとスローな入りをしますが、そこから中盤・終盤にかけてはペースを上げていき、遊行寺~茅ヶ崎では区間8位、茅ヶ崎~平塚では区間11位のペースで推移します。かつて93回大会に区間3位に入った平賀選手(駿河台大OB)の記録を20秒上回るタイムで区間11位。高速レースの流れに乗って各チームのエース格が揃う3区で互角の走りを見せました。

<4区> 上土井雅大(亜細亜大・4年)
4区はこちらも高いスピードを持つ亜細亜大・上土井選手。そのスピードを活かして登り基調の4区に挑みました。二宮(8.9km)までの前半は区間12位ペースとなかなかの入りを見せましたが、後半にはペースを落とし二宮~小田原は区間17位ペースに。それでも近年の関東学生連合4区のタイムを大きく上回る63分台前半のタイムで区間15位と、ある程度高速レースに対応できた内容を見せました。



 <5~6区>

<5区> 外山結(育英大・2年)
小涌園前(11.7km) 区間18位 42:17
芦ノ湖(20.8km) 区間16位 74:19
<シード権ライン(+1分24秒) <繰り上げライン(+0分29秒)
<6区> 竹上世那(流通経済大・2年)
小涌園前(9.0km) 区間6位 26:48
小田原中継所(20.8km) 区間9位 59:05
<シード権ライン(-0分15秒) <繰り上げライン(-1分20秒)

【各区間の直近大会との比較】
※関東学生連合以外に箱根出場回数が少ない時の大学の成績と比較します
 ※91回創価大、92回東京国際大、
  93回~95回の関東学生連合の記録と比較
 (4区・5区は93回大会以降の記録と比較)
<5区>
外山結(2年) 
 区間16位 
 74:19
 区間13位~区間20位 
 74:45~80:01 
<6区>
竹上世那(2年) 
 区間9位 
 59:05
 区間9位~区間21位 
 60:02~64:25 

<5区> 外山結(育英大・2年)
5区は創部2年目のチームでエースとして活躍し選出された育英大・外山選手。登りへの適性を期待されての出走となり、序盤こそ大平台(7km)までは区間19位ペースと入りに手こずりますが、そこから山登り後半と終盤の下りはいずれも区間15位ペースと手堅くこなすことができました。タイムも74分台前半と、5区が20.8kmに戻ってからの関東学生連合の中では最速タイムを更新。区間16位と高速レースの中ではやや見劣りする結果ながら、関東学生連合が苦戦しやすい山登りを立派にこなして見せました。

<6区> 竹上世那(流通経済大・2年)
6区は当日変更で入った流通経済大・竹上選手。こちらも山下りへの適応力を発揮して素晴らしい走りを見せます。序盤の登り、そして山下りの前半を非常に快調なペースで進んでいき大平台(13.4km)までを区間5位のペースで進んでいきます。その後終盤の平地ではペースを落としてしまいますが、全体を区間9位と素晴らしい内容でまとめます。59分05秒というタイムもかつて関東学生連合の6区で快走した川内優輝選手(学習院大OB)のタイムを上回るもので、令和の箱根で新時代の山下りを展開しました。




 <7~10区>

<7区> 宮田僚(麗澤大・4年)
二宮(11.6km) 区間19位 35:18
平塚中継所(21.3km) 区間21位 66:11
<シード権ライン(+1分43秒) <繰り上げライン(+0分57秒)
<8区> 吉井龍太郎(大東文化大・3年)
茅ヶ崎(6.7km) 区間10位 20:26
戸塚中継所(21.4km) 区間9位 66:36
<シード権ライン(-0分03秒) <繰り上げライン(-0分45秒)
<9区> 渡邊晶紀(山梨学院大・2年)
横浜駅前(14.5km) 区間12位 43:28
鶴見中継所(23.1km) 区間12位 70:22
<シード権ライン(+0分17秒) <繰り上げライン(-0分59秒)
<10区> 阿部飛雄馬(東京大・4年)
新八山橋(13.3km) 区間21位 42:46
大手町(23.0km) 区間21位 75:26
<シード権ライン(+4分43秒) <繰り上げライン(+3分02秒)

【各区間の直近大会との比較】
※関東学生連合以外に箱根出場回数が少ない時の大学の成績とも比較します
 ※91回創価大、92回東京国際大、
  93回~95回の関東学生連合の記録と比較
<7区>
宮田僚(4年) 
 区間21位 
 66:11
 区間11位~区間21位 
 64:41~71:42 
<8区>
吉井龍太郎(3年) 
 区間9位 
 66:36
 区間7位~区間20位 
 66:27~70:23 
<9区>
渡邊晶紀(2年)
 区間12位 
 70:22
 区間12位~区間19位 
 71:47~74:05 
<10区>
阿部飛雄馬(4年)
 区間21位 
 75:26
 区間1位~区間21位 
 70:58~77:30 

<7区> 宮田僚(麗澤大・4年)
7区は麗澤大・宮田選手が出走しました。スピード・スタミナを備えた総合力のある選手ですが、この7区ではなかなかその力を発揮できず区間下位のペースに終始します。全体としては唯一の66分台で区間最下位。近年の関東学生連合7区のタイムで見ると決して大崩れという内容ではないのですが、高速化したレースの中では厳しい結果となり予選会の悔しさを晴らすというところまでもっていけませんでした。

<8区> 吉井龍太郎(大東文化大・3年)
8区は大東文化大・吉井選手が出走。山登りの候補にも挙がった吉井選手が登り基調の8区に挑みました。遊行寺坂(15.6km)までは区間12位と区間中位ペースで着実に進めていくと、遊行寺坂を登った後の終盤に力を発揮して遊行寺坂~戸塚間で区間6位のラップタイムをマークします。区間7位となった前回に次ぐ好タイムで区間9位となり、来季に向け自信となる結果を出しました。

<9区> 渡邊晶紀(山梨学院大・2年)
9区は山梨学院大・渡邊選手。期待の若手がスタミナ区間の9区に挑みました。序盤、権太坂(7.7km)までで区間9位と順調な入りを見せると、その後も区間中位ペースを維持してスタミナ区間をしっかりと走り抜けます。70分切りは届かなかったものの70分台前半のタイムで区間12位。初めての箱根でしっかりとスタミナに自信をつける走りを見せました。

<10区> 阿部飛雄馬(東京大・4年)
アンカーを務めたのは、東京大・阿部選手。前回1区を走った近藤選手に続いて今回も東大生ランナーが箱根路を走りました。コンディションやスタミナ区間への適応が難しかったのか全体を通して区間最下位ペースと苦しい走りになりました。それでも、「駅伝の強豪ではない大学から箱根駅伝出場を果たす」という阿部選手が掲げていた目標に到達し、その陸上人生にとって非常に大きい時間を過ごせたのではないかと思います。



 <総括>

 前回の経験を活かした山川監督チーム。高速レースにも対応し前回以上の成果
 今回の関東学生連合は前回に続いて麗澤大・山川監督がチーム監督となり、駿河台大・徳本監督と上武大・近藤監督がチームコーチとなりました。上武大はここ10年箱根に出ていますが、麗澤大、駿河台大は近年急成長したチーム。また、いずれも30~40代の監督であり色々な意味で若さあふれるチームとなりました。
 そして山川監督が前回も関東学生連合の監督を担当していたことで、前回の反省を活かした手法に着手。選手と話し合いながら、大会直前まで選手の調子を見極めて選手選考を行う方式を採りました。普段指導する大学と並行しての指導となりその負担は大きいものだったと思いますが、その分の成果を箱根路で発揮しました。
 往路では3区の菅原選手の快走をはじめ、近年は最下位付近に引き離されることが多かった1区を凌ぐなど全体的に前回よりも内容が向上しました。そして準備期間が少ない事もあって苦戦しやすい山の区間では、いずれも区間争いから離される事もなく健闘し、特に6区は関東学生連合で新記録のタイムをマークする快走を見せました。そして復路でも大崩れする選手が少なかった事もあり、この高速レースの中で繰り上げスタートとならず最後まで襷を繋げきりました。関東学生連合の選出方法が箱根出走経験のない選手に限定されてからは経験面での不利もあって苦戦する事も多かったですが、今回のチームは高速レースにも対応し内容面でも充分渡り合っていったのではないかと思います。
 選手だけでなく指導陣にとっても多くの経験をくれる関東学生連合。来季以降も箱根駅伝を盛り上げる存在であり続けてほしいと願います。



 <関連記事>

関東学連は下位に沈む「15位相当ならチャンス」(日刊スポーツ)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200102-01020411-nksports-spo

山川監督からのメッセージ(麗澤大サイト)
https://www.reitaku-u.ac.jp/2020/01/03/72269

吉里駿選手 箱根駅伝1区を走る!(駿河台大学駅伝部サイト)
https://www.surugadai.ac.jp/sports/news/marathon/2020/_1_4.html

箱根駅伝本戦を終えて ~陸上競技部 宮田僚さんのコメント~(麗澤大サイト)
https://www.reitaku-u.ac.jp/2020/01/09/72366

連続出場33年で途切れた山梨学院大・渡辺、学生連合9区で力走
https://sportsbull.jp/p/682058/

「東大で箱根」阿部飛雄馬、陸上人生第1章の終着点とリスタート
https://4years.asahi.com/article/13014955

Road to Hakone 阿部@長4(東大陸上部長距離ブログ)
http://blog.livedoor.jp/uttflongblog2017/archives/39496072.html



 <2020箱根駅伝 結果総括>

青山学院  東海      國學院
帝京    東京国際    明治
早稲田   駒澤      創価   東洋  
中央学院  中央      拓殖
順天堂   法政      神奈川  日本体育
日本    関東学生連合  国士舘  筑波