2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝2位の東海大学です。 
(04/10追記 新入生情報を追記しました)



【東海大学】

<昨季の主な大会成績>
出雲駅伝:4位
全日本大学駅伝:1位
箱根駅伝:2位

<ポイント>
01. 大学長距離界屈指の充実した選手層である黄金世代が4年生となった昨季。前回の箱根駅伝では青山学院大の連覇を止める初の総合優勝を飾りましたが、その一方で黄金世代への依存度も増えていました。2019年度シーズンは黄金世代と若い世代の融合がテーマとなるシーズンでもありました。

02. 出雲駅伝では中盤まではなかなか勢いに乗れない展開が続きますが、後半に若手選手を中心に追い上げを見せます。アンカー区間では集団を形成して先頭を猛追しますが最後まで勢いを維持できず最終盤の優勝争いには加われずに総合4位となりました。
続く全日本大学駅伝では前半から勢いを落さない良い繋ぎを見せると、4区・6区で区間賞を獲得するなどして後半は先頭を維持します。8区開始時には後ろから追い上げてきた青山学院大に追いつかれるも、アンカーの名取選手が前半から攻めの走りで振り切ってそのまま総合優勝のフィニッシュテープを切りました。

03. 全日本の優勝で勢いをつけて迎えた箱根駅伝。1区から高速レースを作り上げて東洋大などのライバルの振り落としに成功すると、花の2区を終えて先頭集団を維持します。しかしそこからしばらくは、3区~5区で区間新の走りを見せるライバルチームに対して我慢の展開が続きます。6区山下りでの区間賞を機にそこから追い上げる流れを作ると青山学院大を猛追する姿勢に入りますが、勝負どころで差を詰め切れなかった事もあり9区終了時には逆転が難しい差となってしまいます。そのまま悔しい総合2位となりますが、3位とは6分近い差をつけるなど青山学院大とは異次元の域の一騎打ちを繰り広げ、チームも復路新記録を打ち立てました。



【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

鬼塚翔太  箱根:1区4位 出雲:5区4位
61分23秒(21.3km)/28分37秒36/13分42秒94
西川雄一朗  箱根:3区6位 全日本:2区10位 出雲:1区4位
62分21秒(21.4km)/28分30秒8713分55秒51 
館澤亨次  箱根:6区1位 アジア選手権<1500>:5位
57分17秒(20.8km)/29分50秒67(PB)/14分16秒63
小松陽平  箱根:8区1位 全日本:1区3位
64分24秒(21.4km)/28分50秒5013分57秒56
松尾淳之介  箱根:9区8位 全日本:7区8位
62分24秒/28分37秒95/14分19秒20
郡司陽大  箱根:10区3位 全日本:6区1位
62分07秒/29分01秒67/14分00秒85
阪口竜平  出雲:2区6位 日本選手権<3000SC>:1位
62分32秒(PB)30分12秒64(PB)/13分29秒51(室内)
羽田智哉  箱根メンバー入り
63分34秒/30分29秒78/14分35秒04
關颯人  
63分12秒(PB)28分23秒37(PB)/14分00秒35
中島怜利
63分44秒/29分15秒38(PB)

<ポイント>
01. 大学屈指の選手層の世代という事で、錚々たるメンバーが揃います。トラック競技にも力を入れている事もあり、5000m13分台、10000m28分台をマークする選手も多いです。鬼塚選手、館澤選手、阪口選手、關選手などは日本選手権やアジアの舞台でも戦ったほか、阪口選手はこの冬に室内5000mの日本学生最高記録をマークしています。

02. 箱根駅伝で特に活躍を見せたのが鬼塚選手と館澤選手です。鬼塚選手は4回出走していずれも区間6位以内となり、最後の箱根では1区歴代7位のタイムをマークするハイレベルな走りを見せました。館澤選手も4回出走し、最初の箱根では山登りに苦戦したものの2年生以降は様々な区間を走っていずれも区間2位以内と抜群の安定感を見せます。最後の箱根では初めての山下りながら圧巻の走りで区間新記録を樹立しました。

03. 彼ら以外にも、箱根駅伝で活躍した選手は多いです。2年連続でスピード区間の3区をこなした西川選手、デビュー戦で8区の区間新記録を打ち立てた小松選手、2年連続安定してアンカーをこなした郡司選手など、それぞれ記録にも記憶にも残る走りを見せています。



【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

塩澤稀夕(4年)  箱根:2区7位 全日本:3区3位 出雲:3区4位
67分13秒(23.1km)/28分16秒17/13分33秒44(室内)
名取燎太(4年)  箱根:4区2位 全日本:8区2位
62分44秒/29分27秒75/14分17秒08
西田壮志(4年)  箱根:5区7位 全日本:4区1位 出雲:6区2位
63分27秒/28分58秒15
市村朋樹(3年)  全日本:5区7位 出雲:4区2位
62分53秒13分55秒30
松崎咲人(2年)  箱根:7区3位
62分11秒/29分29秒56/14分11秒99
竹村拓真(2年)  箱根メンバー入り
63分28秒/29分56秒03/14分13秒00

<ポイント>
01. 黄金世代への依存度が大きかった前年度までは西田選手しか箱根を経験していませんでしたが、昨季は塩澤選手や名取選手の成長、若手からは市村選手や松崎選手の台頭もあって全日本、箱根ではそれぞれ4名の選手が黄金世代以外から出走できました。一定の経験値を残して黄金世代を送り出す事は出来ましたが、ライバルチームと比べるとまだ駅伝経験値は心許ない部分があります。

02. これまで高い実力はありながらも故障などでなかなか活躍の機会を掴めなかった塩澤選手がこの1年でエース格まで成長を遂げました。出雲、全日本に出走しそれぞれハイレベルな走りを展開すると、11月には10000mで28分16秒17をマーク。トラックの猛者が揃うチームの中でトップの持ちタイムとなります。さらに箱根ではハーフの持ちタイムなしでありながらも異例の2区に抜擢。その期待に応えて高速レースの中で先頭争いを繰り広げるエースの走りを見せました。

03. ハーフを中心に総合力を鍛え上げた名取選手も飛躍のシーズンとなりました。全日本ではアンカーを任されると、青山学院大との一騎打ちに完勝し優勝のゴールテープを切りました。そして箱根では癖の強いコースの4区でデビューを飾ると、区間2位の快走をして我慢の展開となっていたチームに大きな活力を与えました。
そして、黄金世代以降の選手では唯一の箱根総合優勝メンバーである西田選手。出雲や全日本ではいずれもチームに勢いを与える快走を見せましたが、一方で2度目の山登りとなった箱根では前回の自身の走りを越えられず。高速レースの中でチームに勢いをつける事が出来なかったのは今季へ持ち越す課題となりそうです。

04. 市村選手は秋に5000m13分台、ハーフ62分台をマークしてブレイク。出雲や全日本でも結果を出しますが、惜しくも箱根出走はならず。今季はチームの中軸を目指します。
高校時代からロードに定評のあった松崎選手は上尾ハーフで62分11秒の脅威の走りを展開。そのまま箱根でも7区で快走デビューを果たして次期エース候補に名前が並ぶ勢いです。
竹村選手は上尾ハーフで63分台半ばをマークして箱根メンバー入り。今季はスピードにも磨きをかけて駅伝デビューを目指します。



【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

鈴木雄太(4年)  箱根メンバー入り
63分06秒/29分47秒74/14分21秒68
米田智哉(4年)  箱根メンバー入り
63分10秒/29分43秒7014分21秒93
本間敬大(3年)
62分59秒/29分16秒29/14分27秒37
佐藤俊輔(2年)
63分39秒/29分51秒17/14分19秒59
川上勇士(2年)
67分40秒28分59秒60/14分20秒30
飯澤千翔(2年)  日本選手権<1500>:12位
 ― /13分53秒33

<ポイント>
01. 高いスタミナを持つ鈴木選手、米田選手。スピード・スタミナ両面で輝きのある本間選手。箱根メンバー入りはならなかったものの新2年生内でも上位の持ちタイムの佐藤選手。黄金世代からの世代交代の流れの中では、いずれも駅伝デビューが期待できる有力な選手達です。また、スタミナは発展途上ながら1年生で10000m28分台をマークした川上選手も注目株です。

02. 中距離の期待の星として注目の的だった飯澤選手。主戦場の1500mでは関東IC・全日本IC優勝や日本選手権決勝進出だけでなく、10月に3分38秒94の東海大新記録もマークするなど充実の内容。1年目は中距離に集中させるためもあってか駅伝メンバー入りはありませんでしたが、既に5000mでは13分台をマークしており2年目の今季はさらに長い距離に適応させながらの駅伝デビューも充分期待されます。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

喜早駿介(仙台育英)  全国高校:1区6位 都道府県:5区6位
14分21秒64/28分52秒1328分58秒(10.0km)
石原翔太郎(倉敷)  全国高校:1区5位 都道府県:1区8位
14分00秒0619分53秒(7.0km)/28分56秒(10.0km)
吉冨純也(大牟田)  都道府県:5区17位 全国高校:1区24位
14分21秒05/24分48秒(8.5km)/29分19秒(10.0km)
松尾昂来(西脇工業)  都道府県:1区14位 全国高校:1区20位
14分08秒9719分59秒(7.0km)29分37秒(10.0km)
入田優希(九州学院) 全国高校:3区9位 全国IH<5000>:予選2組6位
14分28秒41/23分58秒(8.1km)/29分40秒(10.0km)
佐伯陽生(伊賀白鳳)  都道府県:5区14位 全国高校:1区32位
14分22秒47/24分41秒(8.5km)/29分48秒(10.0km)
永洞和季(伊賀白鳳) 全国IH<1500>:予選4組12位 全国高校:2区17位
14分16秒34/ ― 


<ポイント>
01. 歴史的な高速レースとなった高校駅伝1区で28分台をマークした選手が2人入部したのは非常に大きいです。喜早選手(仙台育英)はトラックでも10000m28分台をマーク、石原選手(倉敷)は5000mで13分台目前のタイムをマークしており、トラックでもその期待値は非常に高いです。大学の環境にフィットできれば即戦力となる可能性はかなり高そうです。

02. 他にも、吉冨選手(大牟田)、松尾選手(西脇工業)、入田選手(九州学院)佐伯選手(伊賀白鳳)、永洞選手(伊賀白鳳)といった充分なトラック・ロード実績を持つ選手が揃いました。トラックでの実力も決して低くないので、この中から誰が最初に力を伸ばしてくるかは楽しみなポイントとなるでしょう。



前に進む力―Keep Going


箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき


大学駅伝2019-2020決算号 (陸上競技マガジン3月号増刊)