2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝3位の國學院大学です。 



【國學院大学】

<昨季の主な大会成績>
出雲駅伝:1位
全日本大学駅伝:7位
箱根駅伝:3位

<ポイント>
01. 浦野選手、土方選手、青木選手を柱とするチームを作り上げ前回の箱根では2012年大会以来のシード権を獲得した國學院大。2019年度シーズンはそんな彼らが4年生となり最高のパフォーマンスが期待されるほか、藤木選手をはじめとした有力な若手選手も出てきた事でチームとしても過去最高の高みへの挑戦となりました。

02. すると駅伝シーズン序盤から大きな結果を出します。出雲駅伝ではエース区間も含めて終盤まで全員が区間5位以内という安定した内容で繋いだことで、青山学院大・東海大・東洋大・駒澤大の4強と互角に渡り合います。そしてアンカー・土方選手が最高の走りを披露し首位・駒澤大との37秒差を逆転。見事、三大駅伝初の優勝となるゴールテープを切りました。
その勢いを以て臨んだ全日本大学駅伝。エース区間の2区で浦野選手が区間2位の快走で勢いをつけますが、パフォーマンスが安定しない選手もいた事から前半の間はシード圏内を出たり入ったりという展開になります。ですが、中盤に入ると青木選手の区間賞や1年生の中西兄弟の快走で一気に順位を上げます。終盤は一時勢いが落ちるも、アンカーの土方選手が安定した走りでシード権争いをする後続を寄せ付けず、総合7位でフィニッシュしてシード権を維持しました。

03. そして駅伝シーズンの大一番、箱根駅伝。1区・藤木選手が歴史的な高速レースを区間2位で走り抜けたのを皮切りに、中軸を投入した往路ではどの選手もしっかりと力を発揮し往路2位という好成績を挙げます。復路に入ってからも箱根デビューの選手がプレッシャーに負けず安定した繋ぎを続けていったことで、東海大にこそ抜かれたものの3位を維持します。終盤、茂原選手が不調もあってか我慢の走りとなり3位争いのデッドヒートとなりますが、アンカー・殿地選手が最後まで安定した走りとスパートを発揮します。スパート合戦を制して過去最高の総合3位でのフィニッシュテープを切り、駅伝戦国時代の新勢力の象徴となるような更なる飛躍を遂げました。



【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

土方英和  箱根:2区8位 全日本:8区5位 出雲:6区1位
62分02秒/28分47秒40/14分07秒25
浦野雄平  箱根:5区3位 全日本:2区2位 出雲:3区3位
62分14秒/28分25秒45/13分45秒94
青木祐人  箱根:3区5位 全日本:5区1位 出雲:4区5位
61分32秒/28分44秒01/14分14秒16
茂原大悟  箱根:9区19位 全日本:7区17位 出雲:5区5位
64分26秒/30分13秒92/14分14秒19

<ポイント>
01. 國學院大を高みへとひっぱりあげた中心世代です。土方選手、浦野選手、青木選手は3本柱とされる存在で、今季も学生三大駅伝ではもれなく高いパフォーマンスを発揮しています。また箱根駅伝後も、土方選手は東京マラソンで日本学生歴代3位のタイムをマーク、浦野選手は日本クロカンで優勝を果たし、青木選手はハーフマラソンで61分32秒の國學院大新記録をマークし、それぞれ次のステップへ向け確かな実績を重ねています。

02. 3本柱ほどではないものの手堅い仕事ぶりに定評のある茂原選手。今季も出雲駅伝では初優勝に貢献する走りを見せましたが、全日本・箱根ではなかなか本来の走りが出来ない我慢の展開に。それでも最低限のラインで粘り切って後続に繋いだあたりは、ギリギリのところで意地を見せたように思います。



【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

河東寛大(4年)  箱根:8区7位
62分28秒/14分19秒11
藤木宏太(3年)  箱根:1区2位 全日本:3区12位 出雲:1区5位
62分17秒28分46秒41/14分06秒66
木付琳(3年)  箱根:7区11位
62分42秒/29分38秒64/14分37秒07
島﨑慎愛(3年)  箱根:6区8位 全日本:1区12位
65分23秒/28分46秒83/14分41秒35
殿地琢朗(3年)  箱根:10区4位
64分11秒/29分43秒64
中西大翔(2年)  箱根:4区3位 全日本:4区4位 出雲:2区3位
63分59秒29分34秒81/13分54秒56
中西唯翔(2年)  全日本:6区5位
67分10秒/29分31秒19/14分15秒62

<ポイント>
01. 次期エースとして呼び声が高いのが藤木選手です。スピード・スタミナ共に非常に高い水準で、特に箱根では歴史的な高速レースとなった1区でしっかりと先頭集団を維持すると、終盤にかけて積極的にスパート戦を仕掛けるタフなペース配分を見せます。わずかにスパートのタイミングの差で区間賞は逃したものの、エースを任せるにふさわしいパフォーマンスを見せています。

02. 箱根デビューの8区を安定した内容で走り、箱根後にハーフで62分台をマークした河東選手。段階的に距離への適応力をつけながら箱根7区で安定したデビューを果たし、その後ハーフ62分台をマークした木付選手。藤木選手と並ぶスピードを見せて台頭し、全日本ではスターター、箱根では山下りをしっかりとこなして輝きを放った島﨑選手。既に箱根で2度成功経験を積み、10区でも上位を取れるほどのスタミナを誇る頼れる存在となった殿地選手。
三本柱がの世代が去った新チームにおいて、その中軸となりそうな選手達はそれぞれ逞しいタレントとなっています。

03. 高校時代から実績のあった1年生の中西兄弟が早い段階からレギュラー争いに加わり結果を出したことも、チームの躍進を実現した要素の1つです。弟の大翔(たいが)選手はいきなり三大駅伝全てで区間上位を取るというこの上ないデビューシーズンに。次期エース候補に名を連ねる日も近いでしょう。兄の唯翔(ゆいと)選手もスタミナ面には課題があるため箱根デビューはなりませんでしたが、駅伝デビューとなった全日本では6区5位の快走を見せ中盤での上位追い上げに貢献しました。



【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

高嶌凌也(4年)  箱根メンバー入り
63分52秒/29分52秒89/14分41秒07
藤村遼河(4年)  箱根メンバー入り
63分25秒/29分28秒02/14分32秒84
臼井健太(4年)  箱根メンバー入り
63分24秒/29分58秒75
石川航平(3年)
65分17秒/29分26秒82/14分23秒26
川崎康生(2年)  箱根メンバー入り
63分58秒/29分55秒61/14分28秒49
坂本健悟(2年)
64分24秒/29分35秒95/14分31秒94
藤本竜(2年)
 ― /29分26秒17/15分02秒05 

<ポイント>
01. 中軸選手だけでなく中間層の強化が進み、ハーフ63分台の持ちタイムの選手も揃っています。エースだけでなく、レギュラークラスの選手が手堅い仕事が出来ている事も箱根でシード権を獲得した理由の1つです。

02. ハーフ63分台が持ちタイムの選手の中で高嶌選手、藤村選手、川崎選手といった選手は箱根メンバー入りを果たしており期待値は充分。中軸とはやや差があるスピード面をはじめ、もうひと回り能力を磨く事が出来れば駅伝シーズンでの活躍がさらに近付くでしょう。

03. 臼井選手は1年時に箱根6区を経験している早咲きのタレントです。2年次以降は苦しい時期もありましたが、箱根後のハーフマラソンで自己ベストを更新しており復活の時は近そうです。
若手の中で石川選手、坂本選手、藤本選手といったあたりは比較的スピードに強みがあります。主力選手の中で島﨑選手や中西兄弟はスピード面のアピールから駅伝デビューを果たしており、彼らもその方面からのアプローチも期待できます。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

力石暁(鎌倉学園) 全国高校:3区16位 全国IH<5000>:予選3組15位
14分13秒69/23分43秒39(8000m)
阿部優樹(國學院久我山)  全国高校:5区14位
14分24秒40/97分59秒(30.0km)
浅井大登(愛知)  東海高校:3区1位
14分23秒58/ ― 
瀬尾秀介(市立橘)  関東高校:1区19位
14分23秒67/ ― 
河野友誠(大分東明)  全国高校:7区14位 都道府県:4区40位
14分40秒57(PB)/14分25秒(5.0km)
田高永輝(青森山田) 全国高校:5区32位 全国IH<1500>:予選4組6位
14分30秒64(PB) ― 
西山哲平(駒大校)  関東高校:1区20位
14分32秒34(PB) ― 

<ポイント>
01. 力石選手(鎌倉学園)と阿部選手(國學院久我山)は特に期待値が高いです。力石選手は5000mの持ちタイムが優れ高校駅伝でも結果を残しています。阿部選手は高校生ながら30kmレースで大学生と互角の内容を見せたロード適性が魅力的です。大学の環境にフィットすれば1年生からの駅伝デビューが期待できる有力候補となりそうです。

02. 他にも5000mの持ちタイムの優れる選手や、高校駅伝など全国レベルの大会の実績のある選手も多いです。國學院大の主力格の選手は、高校時代からずば抜けた実力があるタイプよりも大学に入ってから急成長した選手の方が多い印象です(藤木選手や島﨑選手も高校時代の5000m持ちタイムは14分30秒台)。大学の環境で化ける選手が出てくるかもこのチームの楽しみの1つではないでしょうか。



あまりに細かすぎる箱根駅伝ロスの過ごし方!2020マラソン&駅伝ガイド (ぴあ MOOK)


大学駅伝2019-2020決算号 (陸上競技マガジン3月号増刊)