2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝4位の帝京大学です。 



【帝京大学】

<昨季の主な大会成績>
出雲駅伝:7位
全日本大学駅伝:8位
箱根駅伝:4位

<ポイント>
01. ここ数年はシード権争いの常連となっていましたが、19年の箱根駅伝では区間上位を取れるパンチ力のある選手を何人も揃えて総合5位に入り、第2勢力のチームの1つとなりました。2019年度シーズンはその地位を固め上を狙えるチームになるかどうかが試されるシーズンでもありました。

02. 出雲駅伝直前の記録会で好タイムをマークする選手が大勢出た事で駅伝シーズンへの期待も高まりました。しかし、その緒戦となった出雲駅伝ではその勢いを走りに変換できず4区までは9~10位を維持し続ける苦しい展開に。その後5区の小野寺選手が区間賞の快走で勢いをもたらして最終的には総合7位となり、なんとか駅伝シーズン序盤での躓きを避けました。
続く全日本では、1区・2区で流れ作りがうまくいかないなど前半のスピード区間で苦戦し4区を終えて総合13位と苦しい位置に。しかし後半に入り自慢のスタミナを活かせる区間で確実に順位を上げていきます。7区まででシード権争いを射程圏におさめると、アンカーで8位の順天堂大に追いつきシード権を懸けた一騎討ちに。最終盤までもつれ込んだ勝負を最後はスパートの差で制して総合8位でシード権を維持しました。

03. 出雲・全日本での不安点を記録会やロードレースで補いながら迎えた箱根駅伝。1区小野寺選手が歴史的な高速レースに最後までついていくと、2区星選手もハイレベルかつ冷静なレース運びで先頭集団に近い位置をキープ。そして3区遠藤選手が区間新のタイムで繋ぎ序盤戦で非常に素晴らしい流れを作ります。
その後、山の区間で想定外の苦戦を強いられて勢いを落しますが、なんとかシード圏内で踏みとどまると8区から終盤にかけて自慢のスタミナで再び上位へ駆け上がります。9区を終えてシード権をほぼ確実にすると、10区では4年生で箱根デビューの吉野選手が区間新ペースの会心の走りで3位争いの集団に追いつきます。國學院大には先行されたものの総合4位に入り、東洋大、駒澤大など4強に数えられるチームを上回り、新たな第2勢力の位置につける事が出来ました。



【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

岩佐壱誠  箱根:4区6位 全日本:4区13位
62分39秒28分46秒3914分00秒42
平田幸四郎  箱根:5区18位 全日本:2区17位 出雲:1区9位
63分47秒28分52秒3114分28秒99
島貫温太  箱根:6区13位
63分06秒/30分10秒86/13分53秒52
小森稜太  箱根:9区5位 全日本:8区11位 出雲:3区10位
63分17秒/29分18秒0813分57秒87
吉野貴大  箱根:10区2位
63分10秒/29分32秒3514分20秒64
田村丈哉  全日本:1区18位
65分25秒28分48秒9113分58秒25

<ポイント>
01. 箱根駅伝では2区候補にも挙がった岩佐選手はスピード・スタミナ共に隙がなくエース格の存在に。全日本ではチームに勢いを与える事は出来ませんでしたが、箱根では癖のある4区で高速レースにしっかりと適応し前半のチームの流れ作りに貢献しました。
帝京大らしいスタミナ型ランナーの小森選手は、全日本では区間順位は悪いながらもシード権争いを制して最低限の役割は果たします。箱根では3度目の9区を走り、高速化にもしっかりと適応して区間5位とチームの終盤の追い上げを支えました。
そして、駅伝ファンを驚かせたのは吉野選手。地道に力をつけて掴んだ4年生での箱根デビューで10区区間新記録のタイムをマーク。1分44秒差を追いついて4チームによる3位争いの集団に加わり、総合4位でのフィニッシュに貢献しました。

02. チーム内でもスピードが売りの平田選手は3大駅伝全てに出走。全日本ではエース区間、箱根では2度目の山登りを任されましたが、なかなかチームを勢いづかせる事が出来ず悔しいラストシーズンとなりました。
10000m帝京大記録保持者の島貫選手も中軸として期待されたシーズンでしたが、故障などもあってなかなかフルに力を発揮できず。なんとか箱根には間に合わせて2度目の6区で最低限の仕事はしましたが、内容面では悔しさは残るでしょう。
現在はYoutuberの「たむじょー」として知名度を上げつつある田村丈選手。駅伝は全日本のみの出走でしたが、トラック面では5000m13分台・10000m28分台をマークし充実した内容を見せました。



【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

小野寺悠(4年)  箱根:1区8位 全日本:3区9位 出雲:5区1位
62分03秒/29分16秒2013分57秒08
星岳(4年)  箱根:2区9位 全日本:7区6位
63分09秒28分35秒0314分04秒23
鳥飼悠生(4年)  箱根:8区3位
63分10秒/29分13秒50/14分15秒84
遠藤大地(3年)  箱根:3区2位 出雲:2区9位
63分53秒/29分26秒5013分55秒97
中村風馬(3年)  箱根:7区9位 全日本:6区8位 出雲:6区7位
63分19秒/29分13秒5813分57秒00
新井大貴(2年)  箱根メンバー入り
63分30秒14分13秒45

<ポイント>
01. 箱根駅伝で1~3区を走った小野寺選手、星選手、遠藤選手はそれぞれエース格の実力があり新チームの中軸となるでしょう。
小野寺選手は出雲で区間賞、11月の上尾ハーフで帝京大記録をマーク。箱根駅伝では1区のデッドヒートに最後までついていくレベルの高さを見せました。
スピード・スタミナ共に隙のない星選手は、全日本では7区の力走でシード権争いの位置までチームを引き上げ、箱根では冷静なレース運びでチームを上位に引き上げる流れ作りに貢献しました。
遠藤選手は駅伝シーズン前半は思うようにいかない部分も多かったですが、箱根ではしっかりと本領を発揮。2度走った箱根3区はいずれもハーフ換算では60~61分台のタイムで、駅伝での勝負強さは抜群です。

02. ハーフ62分台を狙えるスタミナ自慢の鳥飼選手は、2度目の箱根8区に向けてしっかりと準備。その成果もあって区間3位と終盤にチームが勢いづく起爆剤となる走りが出来ました。ラストシーズンの今季は中軸を狙う持ちタイムに伸ばせるかに注目です。
昨季急成長したのが中村選手。年初にハーフで好タイムをマークすると、秋には5000m13分台をマークするなどトラックでのスピードも磨きます。その成果として学生3大駅伝全てに出走し、駅伝の場数もどんどん積み重ねて同世代では遠藤選手に次ぐ存在となっています。
そんな彼らを追う1年生の有望株が新井選手。スピードはまだ発展途上ですが、ハーフでは既に63分台をマークし1年生で唯一箱根駅伝のメンバー入りを果たします。今季を飛躍の年に出来るでしょうか。



【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

増田空(4年)  箱根メンバー入り
62分56秒/29分38秒38/14分12秒81
谷村龍生(4年)  出雲:4区9位
63分36秒/29分47秒12/14分01秒89
日野原智也(4年)  箱根メンバー入り
63分04秒29分51秒12(PB)
橋本尚斗(3年)  全日本:5区8位
 ― /28分52秒73/14分03秒89
細谷翔馬(3年)
63分30秒29分53秒45/14分30秒40
寺嶌渓一(3年)
63分35秒/14分13秒43
元永好多朗(2年)
65分23秒/14分30秒17

<ポイント>
01. スタミナ型ランナーの育成に定評のある帝京大という事で、新4年生世代にはハーフ62~63分台の選手がしっかり揃っています。谷村選手は出雲で出走していますし、増田選手・日野原選手を加えた3人とも箱根ではメンバー入りを果たしており、駅伝シーズンで活躍するまであと一歩でしょう。
新3年生世代でもそれは例外ではなく、細谷選手、寺嶌選手は既にハーフで63分台をマーク。また全日本に出走した橋本選手はトラックのスピードからアプローチをかける選手です。

02. 新2年生世代は元永選手をはじめ、あと1つきっかけを掴めればレギュラー争いをする域まで一気に伸びてくるようなポテンシャルの選手が多く控えています。昨季の中村選手をはじめ、帝京大では2年生で大きく成長して台頭する選手が少なくありません。彼らの中から誰がその流れに乗る事が出来るかは今季の注目ポイントでしょう。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

小野隆一朗(北海道栄)  全国高校:1区4位 都道府県:1区18位
14分20秒99/29分16秒3628分55秒(10.0km) 
大辻頌悟(水城)  全国高校:3区38位
14分28秒61/14分28秒(5.0km)
大吉優亮(市立船橋)  全国IH<3000SC>:8位 関東高校:2区3位
14分15秒07/ ― 
西脇翔太(名経大高蔵)  東海高校:3区3位
14分26秒10/ ― 
近田達也
(豊川)
14分23秒76/ ― 
末次海斗(鳥栖工業)
14分34秒38(PB) ― 
有路翔(高蔵寺)  全国IH<1500>:予選2組11位
14分35秒31(PB) ― 

<ポイント>
01. もっとも即戦力としての期待値が高いのは小野選手(北海道栄)です。歴史的な激戦の高校駅伝1区で28分台をマークしたロード適性は文句なしのもので、トラックでも29分台前半をマークしています。早い段階で大学の環境にフィットできれば、遠藤選手のような1年目からのブレイクも充分期待できます。

02. 小野選手に次ぐロード適性が期待できるのが大辻選手(水城)。全国高校駅伝でも主要区間を経験しており、基礎能力が伸びれば駅伝で活躍するまでのステップは短いかもしれません。その他にも、5000mのスピードのある選手や、中距離等で全国を経験している選手もいます。
帝京大は前半の2年での成長が重要な面はありますが、一方で努力のアプローチ次第では吉野選手のように4年目で大輪の花を咲かせる事が出来る環境であるとも言えます。ある意味他大学以上に選手全体の成長を楽しめる環境で、新戦力がどのように伸びてくるかは注目です。



自分流 駅伝・帝京大の育成力


あまりに細かすぎる箱根駅伝ロスの過ごし方!2020マラソン&駅伝ガイド (ぴあ MOOK)


大学駅伝2019-2020決算号 (陸上競技マガジン3月号増刊)