2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝9位の創価大学です。 



【創価大学】

<昨季の主な大会成績>
全日本大学駅伝予選:12位で予選敗退
箱根駅伝予選会:5位で予選通過
箱根駅伝:9位

<ポイント>
01. 18年の箱根駅伝予選会(19年箱根駅伝の予選)は総合15位で予選敗退。エースを故障で欠き、その穴を埋めるため前半からリスクを負って攻めの走りを展開しましたが終盤まで粘り切れず。また10番手以降も内容が悪く出場ラインと差を開けられてしまいました。
大学側はこのタイミングで指導体制の見直しを敢行し、前トヨタ紡織陸上競技部監督の榎木 和貴氏を新監督に招聘します。また、チーム内では予選会に未出走の選手が急成長を見せるなど箱根駅伝出場へ向け機運が高まる様子もありました。

02. トラックシーズン前半の6月には全日本大学駅伝予選を迎えます。箱根駅伝予選会に向けて勢いをつける大会にしたいところでしたが、エースのムイル選手が4組4位とエースの走りをした一方で、米満選手が1組28位、鈴木大選手が3組33位など中軸選手が苦しい内容となり総合12位で予選敗退に。秋の箱根に向け不安と課題を残しましたが、一方で有望な1年生を3名起用し、期待のルーキー葛西選手が3組15位と奮闘するなど収穫もありました。
そして駅伝シーズンになりチームは箱根駅伝予選会へ挑みました。エースのムイル選手がレース中に靴擦れを起こし本来の走りが出来ないアクシデントが起きますが、米満選手が日本人先頭集団でレースを展開して個人7位となったほか、主力選手の集団走が暑さに負けず終盤まで安定した走りを見せ、エースのアクシデントをチーム全体がカバーします。チーム10番手が個人141位と前回よりも遥かに安定した内容となり、総合5位で予選を突破。箱根路の切符だけでなく箱根本戦でも戦える手応えも掴みました。

03. そして迎えた箱根駅伝。1区では予選会チームトップの米満選手が歴史的な高速レースの中でも冷静に先頭集団を維持すると、終盤に見事なタイミングでスパートをかけ箱根1区歴代2位のタイムで区間賞を獲得し最高のスタートを切ります。その後2区でエースのムイル選手が高速化に苦しみ勢いが落ちますが、3区~5区で難所をこなして流れを持ち直してシード圏内を維持します。
しかし、3年ぶりの箱根路で全員が安定した内容とはいかず、6~7区で次第に順位を落としシード圏外に。ですが8区鈴木大選手、9区石津選手の快走でシード権争いに残り続けると10区でドラマが待っていました。箱根デビューの期待の若手・嶋津選手が前半から驚異のハイペースでレースを進めてシード圏内のチームを猛追。後半もペースを落とすことなくシード権を争う10位の中央学院大だけでなくその前を走る9位の東洋大も抜き去ります。嶋津選手は区間新記録での区間賞を獲得して総合9位でフィニッシュテープを切り、前回予選落ちのチームが1年でシード権を獲得する飛躍を遂げました。




【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

米満玲 箱根:1区1位 箱根予選:7位 全日本予選:1組28位
63分12秒/28分30秒59/13分55秒86
M・ムイル 箱根:2区11位 箱根予選:61位 全日本予選:4組4位
67分58秒(23.1km)27分55秒4413分42秒01
築舘陽介  箱根:5区12位 箱根予選:81位
64分48秒/30分48秒16
上田結也  箱根予選:192位
94分51秒(30km)29分57秒47
鈴木ニムラ  箱根予選:240位
65分04秒/29分51秒29/14分43秒09

<ポイント>
01. この1年、特に駅伝シーズンで個人としても飛躍したのが米満選手です。全日本大学駅伝予選では同組の阿部選手(明治大)を意識しすぎてペースを崩してしまいますが、箱根駅伝予選会ではその反省を踏まえて冷静に実力を発揮して個人7位の快走。さらに11月に10000mで28分30秒59をマークすると、箱根駅伝では1区歴代2位をマークして一気に世代を代表するランナーの1人となりました。

02. 留学生エースのムイル選手は怪我で予選会欠場となった昨年度のリベンジに燃えるシーズンに。全日本大学駅伝予選ではそのエースの活躍を見せますが、駅伝シーズンではアクシデントや箱根の高速化に苦しみ本来の走りが出来ず。それでも10000m27分台をマークするなどトラックの強さはしっかりと見せた大学ラストシーズンでした。
続いて米満選手と同様に大学ラストシーズンで輝いた築舘選手。トラックの内容はあまり上がりませんでしたが、箱根駅伝予選会では主力グループの一員として安定した走りを披露。箱根駅伝では難所の山登りを区間12位と堅実にこなしチームのシード権獲得に貢献しました。

03. スタミナ型ランナーの上田選手は、秋口からトラックでも調子を上げてきた事で箱根駅伝予選会に出走。しかし暑さもあり後半のペース配分に苦しみチーム10番手までに入れず箱根駅伝メンバー入りに繋げられませんでした。それでも箱根後には30kmレースで奮闘するなど次のステップに繋げています。
ニムラ選手は大学ラストイヤーに力を伸ばして箱根駅伝予選会の出走を果たします。しかし後半のペース配分に苦しみチーム内最下位と結果を出せず箱根メンバー入りはなりません。それでも、箱根駅伝予選会後の世田谷ハーフで65分04秒をマークするなど総合力を伸ばしたシーズンとなりました。




【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

原富慶季(4年)  箱根:3区11位
63分16秒(21.4km)28分49秒5714分22秒46
福田悠一(4年) 箱根:4区4位 箱根予選:52位 全日本予選:4組32位
61分55秒(20.9km)/29分12秒34/13分59秒86
右田綺羅(4年)  箱根:7区18位
65分19秒/28分52秒61
鈴木大海(4年) 箱根:8区9位 箱根予選:112位 全日本予選:3組33位
93分48秒(30.0km)29分37秒7514分21秒89
石津佳晃(4年)  箱根:9区6位 箱根予選:43位 
64分46秒/29分36秒90/14分21秒00
嶋津雄大(3年)  箱根:10区1位 箱根予選:96位
64分16秒/29分15秒7114分03秒65
永井体育(3年)  箱根予選:67位
63分52秒29分43秒94/14分36秒30
葛西潤(2年) 箱根:6区16位 箱根予選:56位 全日本予選:3組15位
65分03秒/29分32秒68/14分32秒67
P・ムルワ(2年)
 ― /28分38秒3213分37秒70

<ポイント>
01. 米満選手に並び大ブレイクを果たしたのは嶋津選手。この1年でスピード・スタミナ共に急成長を見せ期待の若手の1人となります。箱根駅伝予選会では主力メンバーと肩を並べる走りを展開すると、アンカーに抜擢された箱根駅伝で区間新をマークする衝撃の箱根デビューを飾り、チームのシード権獲得の立役者に。新チームでもエース格の1人として期待が集まります。

02. 4年生を中心に新チームを支えるタレントが揃います。
トラックで力を伸ばしていた福田選手と19年の箱根に関東学生連合で出走した鈴木大選手は、シーズンを通してフル稼働。箱根では福田選手は4区4位の快走、鈴木大選手も8区9位とチームの流れ作りに貢献しました。そして、石津選手は駅伝シーズンを中心に活躍。豊富なスタミナを活かして箱根駅伝予選会ではチーム内2位、箱根駅伝でも9区6位とシード権争いに希望を繋ぐ走りを見せました。
原富選手と右田選手は箱根駅伝予選会は未出走ながら、秋に10000m28分台をマークしてアピールに成功し箱根駅伝出走に繋げます。ハーフでも結果を出した原富選手は3区を任され区間11位と箱根デビューながら手堅い内容。右田選手は7区18位とロード適性には課題を残しました。

03. ルーキー世代の期待株は葛西選手。1年目で全日本大学駅伝予選と箱根駅伝予選会で活躍し、箱根駅伝では山下り6区に抜擢されます。初めての箱根は思うような結果は出せませんでしたが、2年目からが楽しみになるルーキーシーズンを過ごしました。
新3年生世代では永井選手も注目株。1年生時の箱根駅伝予選会でのほろ苦ビューを糧に成長を続け、箱根駅伝予選会で個人67位と活躍。箱根本戦の出走はなりませんでしたが、新シーズンでの活躍が期待されます。
そして、ムイル選手の後を継ぐ留学生ルーキー・ムルワ選手にも期待です。ハーフの距離は未知数でトラックの持ちタイムもまだムイル選手とは差がありますが、全日本インカレ10000mで2位となるなどポテンシャルは期待大です。




【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

大澤智樹(4年)  箱根予選:141位
66分20秒/30分17秒36/14分49秒04
飯嶌友哉(4年)
64分25秒30分58秒32(PB)14分34秒47
鈴木渓太(4年)  箱根メンバー入り
65分53秒/29分59秒88/14分38秒93
三上雄太(3年)  全日本予選:2組28位
64分21秒/30分38秒73
中武泰希(3年)
64分48秒29分26秒21/14分16秒02
小野寺勇樹(3年)
65分40秒/29分27秒14/14分24秒58
横山魁哉(2年)  全日本予選:1組27位
65分24秒/29分47秒84/14分27秒74
新家裕太郎(2年)  箱根メンバー入り
66分04秒/29分58秒87/14分36秒33

<ポイント>
01. 箱根駅伝予選会で結果を出した大澤選手、全日本大学駅伝予選を経験した三上選手・横山選手(ここには挙げていませんが甲斐選手も)、箱根メンバー入りを果たした鈴木渓選手・新家選手、公式戦出走はなかったものの持ちタイムに強みを持つ飯嶌選手・中武選手・小野寺選手…といった選手達がレギュラーを狙う有力候補に名を連ねます。

02. また、この他にも各世代にトラックやロードレースで結果を出し、伸びしろを感じさせる選手が多く控えており、レギュラー争いをする選手層はかなり厚いといえます。激しいレギュラー争いをできる土壌は強豪となるための武器になりますし、新シーズンになって急成長する選手を見つける楽しみも生まれます。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

山森龍暁(鯖江)  都道府県:1区22位
14分35秒74(PB)20分14秒(7.0km)
桑田大輔(八頭) 全国IH<3000SC>:予選4組3位 都道府県:5区24位
14分20秒53/25分07秒(8.5km)
石井大揮(倉敷)  全国高校:6区17位
14分21秒83/ ― 
吉田悠良(利府)  東北高校:1区13位  
14分46秒63(PB) ― 
志村健太(大阪創価)  近畿高校:1区20位
14分50秒33(PB) ― 
山下唯心(斐太)
14分51秒80(PB) ― 
上杉祥大(東大和高)
14分51秒97PB) ― 

<ポイント>
01. トラックよりもロードで高い結果を出している山森選手(鯖江)、トラック・ロードどちらでも結果を出しているハイブリットな桑田選手(八頭)、トラックでのスピードがあり全国高校駅伝にも出走している石井選手(倉敷)…彼ら3人は持ちタイム・実績の面で頭ひとつ抜けており、即戦力候補としての期待値も高めです。

02. 新2年生世代の選手には最初の1年でハーフ65分台~66分台や10000m29分台後半~30分台前半をマークしてる選手が多いです。新入生について
前述の3選手はやや抜きんでているものの、他の選手に関しては高校時代の持ちタイムよりも新しい環境にフィットできるかに重要性を感じます。新1年生世代がこの1年でどれだけ充実した世代になるかはそういった部分にかかっているのかもしれません。