2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝11位の中央学院大学です。 



【中央学院大学】

<昨季の主な大会成績>
全日本大学駅伝予選:5位で予選通過
出雲駅伝:11位
全日本大学駅伝:10位
箱根駅伝:11位

<ポイント>
01. 19年の箱根駅伝は総合10位でシード圏を維持。序盤の区間は苦しい展開ながら粘って繋げると、4区から次第に巻き返していきます。4区有馬選手が区間6位、サプライズ起用となった5区高砂選手が区間9位と奮闘するなど難所をこなすと、復路では勢いが落ちた区間が出てもすぐさま次の区間でカバーするなど粘り強さを見せ、シード圏内を維持してレースを進めます。終盤では後ろから追っていた明治大がアンカーで失速するなど状況も味方して、シード権の維持に成功しました。
勝負強さ・粘り強さがある一方で、シード権争いの一歩上を目指す走りが出来なかったのは課題に。エースの爆発力をはじめ、より細かいポイントを突き詰めて薄氷の勝利から脱するチームにしていく事も目標となりました。

02. トラックシーズン前半に迎えた全日本大学駅伝予選。1組の有馬選手・4組の川村選手・栗原選手がいずれも組20位前後と主力選手が思うように順位を上げられない中で、その遅れをチーム全体がカバーします。高橋選手が2組4位、長山選手が3組3位となったほか、若手の青柳選手が1組3位となるなど新戦力の台頭もあり、全体では6位にわずか18秒差での総合5位となり、粘り勝ちで本戦出場を果たしました

03. 続いて駅伝シーズン初戦の出雲駅伝ですが、この大会では実戦への調整に苦しみます。3区高橋選手、5区栗原選手、6区長山選手と要所を託した中軸選手がいずれも区間2桁順位と内容が芳しくありません。2区に起用したルーキー小島選手が区間5位と好走しましたが、その後故障で駅伝シーズンには出走できなかったりと、チームとしても苦しい立ち上がりになります。
そして翌月の全日本大学駅伝。こちらでは2区川村選手が区間15位、3区吉田選手が区間18位と出雲駅伝で健闘した選手が一転して苦戦するなど、序盤は流れ作りに手間取ります。それでも高橋選手が4区5位、有馬選手が6区7位、石綿選手が8区6位と随所で好走し追い上げムードを作ります。しかし、シード権を獲得したチームの勢いはそれ以上で、後半の追い上げでは足りずシード権争いのラインに20秒少々届かず、総合10位でフィニッシュ。シード権争いに絡めないレース内容となってしまいました。

04. なかなかチームの課題克服とはいかない中で迎えた箱根駅伝。いきなり1区は歴史的な高速レースとなりますが、1区に起用した栗原選手がそれを区間5位で走り抜き例年との違いを見せます。ただ、全体が高速化した影響もあって2区・3区は思うように区間順位が上がらずチームは一度シード圏外に。それでも、5区の畝選手が区間8位、6区のルーキー・武川選手が区間5位となるなど山の区間で前との距離を詰めてシード圏内に戻ります。
しかし、7区以降は高速化した箱根を相手になかなか区間順位が上がらず、さらに後ろから区間上位の走りでジャンプアップするチームも出た事で、例年と同じく総合10位でシード権争いのど真ん中に置かれます。9区で有馬選手が区間2位の走りでリードを稼ぎますが総合順位は変わらず、直後に予想外の展開に襲われます。
10区で後ろから追う11位の創価大が区間新のペースで追い上げを見せ区間の前半で追いつかれると、並走する隙もないまま逆転を許してしまいます。それまでは区間中位と悪くない走りだった10区石綿選手もその精神的動揺で後半にかけて失速。前との差を詰める事は出来ないまま総合11位でのフィニッシュとなり、5大会連続維持したシード権を失いました。
終盤でダークホースに競り負けたこともありますが、高速化した箱根駅伝の中で9区までに充分なリードを作れなかった事も敗因に挙がります。改めて挑戦者として箱根駅伝予選会に挑む新シーズンは、チームに足りないものを作るための転換点としていきたいでしょう。



【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

川村悠登 箱根:2区14位 全日本:2区15位 出雲:1区8位
68分21秒(23.1km)/28分46秒99/14分03秒44
有馬圭哉 箱根:9区2位 全日本:6区7位 全日本予選:1組22位 
62分52秒/29分13秒99/14分29秒66
城田航  箱根:4区10位 全日本:1区9位 
62分49秒(20.8km)/29分00秒09/14分19秒75
藤井雄大  箱根:8区15位 全日本:5区9位
63分50秒/29分18秒77
長山瑞季 全日本:7区11位 出雲:6区11位 全日本予選:3組3位
63分24秒/29分25秒67/14分16秒28
大津吉信  箱根メンバー入り
65分02秒/29分35秒64/14分23秒48

<ポイント>
01. エース格の持ちタイムと実績のある川村選手ですが、ラストの駅伝シーズンは思うようにエースとしての走りが出来ませんでした。全日本・箱根はともにエース区間で起用されましたがいずれも区間2桁順位。箱根では高速レースに対して一定の適応を見せましたが、エースに求められる課題解決とはならず悔しいラストシーズンだったのではないでしょうか。
チームでもトップレベルのスタミナを誇る有馬選手。トラックレースの全日本大学駅伝予選では苦しい内容でしたが、駅伝シーズンになると次第に力を発揮。全日本では後半戦での追い上げに貢献したほか、箱根では23km区間の9区で区間2位の快走を見せシード権争い真っ只中のチームにリードをもたらしています。

02. 城田選手と藤井選手は、共に全日本大学駅伝に出走したほか秋のトラックで好タイムをマークしてアピールし、大学ラストイヤーでの箱根デビューに繋げています。城田選手は4区10位と中盤での巻き返しに貢献しましたが、藤井選手は8区15位と勢いをもたらすには至らず悔しい結果となっています。
全日本大学駅伝予選で活躍した長山選手は、駅伝シーズンに入り出雲・全日本に出走。しかしいずれも区間2桁順位と結果を出せず、箱根出走は叶いませんでした。その悔しさを晴らすように箱根後の守谷ハーフでは63分24秒の快走を見せています。
大津選手は秋に10000mで好タイムをマークしてアピール。大学ラストイヤーで箱根メンバー入りを果たしています。



【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

戸口豪琉(4年)  箱根:3区15位
61分55秒/29分12秒88
畝歩夢(4年)  箱根:5区8位
64分40秒/29分25秒2314分30秒58
石綿宏人(4年)  箱根:10区18位 全日本:8区6位
63分02秒29分18秒4314分26秒01
髙橋翔也(4年) 全日本:4区5位 出雲:3区11位 全日本予選:2組4位
64分07秒28分36秒40/14分23秒61
栗原啓吾(3年) 箱根:1区5位 出雲:5区20位 全日本予選:4組22位
61分26秒(21.3km)/28分35秒0014分12秒70
吉田光汰(3年) 箱根:7区14位 全日本:3区18位 出雲:4区7位
63分31秒/29分15秒02/14分24秒59
武川流以名(2年)  箱根:6区5位
67分07秒/29分24秒13
小島慎也(2年)  出雲:2区5位
67分47秒/28分42秒4114分20秒66

<ポイント>
01. 爆発力のあるエースが求められる新シーズンに向けて、その筆頭候補となりそうなのが栗原選手です。昨季は駅伝シーズンの途中までなかなか結果が出せず苦しい時期を過ごしましたが、11月の終わりに10000mで28分35秒00をマークしてチームトップのスピードランナーとなると、箱根駅伝では高速レースの1区を攻略してみせます。さらに、箱根後の香川丸亀ハーフで中央学院大歴代7位のタイムをマークするなど好調を維持。今季はシーズンを通して活躍を見せてエースの座を狙います。

02. 駅伝シーズン以降大きく成長したのが戸口選手。秋から冬にかけてスピード・スタミナを磨くと箱根駅伝では3区に抜擢。往路での箱根デビューという事でなかなか思うような結果にはなりませんでしたが、その悔しさを糧に香川丸亀ハーフでは61分台の走りで中央学院大歴代2位のタイムをマーク。スタミナで見ればチームトップと言える存在になっています。
そして、大学ラストシーズンでエース返り咲きを目指すのが高橋選手。箱根2区経験もあり全日本大学駅伝では予選・本戦で活躍を見せエース格として期待されましたが、箱根駅伝は直前の故障が影響して出走を逃し悔しい思いをしました。スピードはチームトップレベルですがスタミナ面はまだ課題があるので、ラストシーズンにどれだけ力を伸ばしてこれるかにも注目です。

03. 毎年着実に力をつけてきた畝選手は、箱根駅伝で山登りの適性を発揮。新シーズンではその他の駅伝や大会でも結果を出したいところです。
石綿選手は全日本大学駅伝でアンカーとして好走し、その勢いを以て箱根駅伝でも2度目のアンカーを務めましたがシード権を失う悲劇の主役となってしまいました。箱根駅伝ではなかなかプラン通りの戦いが出来ず苦闘していますが、大学ラストイヤーではさらに地力をつけてリベンジの機会を掴みたいでしょう。
新3年生世代では栗原選手に次ぐ実力の吉田選手。駅伝シーズンではフル稼働しましたが
全日本大学駅伝と箱根駅伝では思うように結果が出ませんでした。エース候補となるには地力と共に勝負強さの向上も求められます。

04. ルーキー世代からは武川選手と小島選手が台頭しました。
高校球児から陸上へ転向した武川選手は秋に10000mで好タイムをマークすると、箱根駅伝では山下りの適性を発揮して6区歴代11位のタイムで堂々の箱根デビューを果たしました。高校時代から高い実力のある小島選手は秋に10000mでチームトップレベルのタイムをマーク。出雲駅伝でも快走しましたがその後は故障で出走できず物足りないルーキーイヤーに。2年目こそはそのスピードを軸に飛躍のシーズンとしたいでしょう。



【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

小野一貴(3年)  全日本予選:2組14位
63分56秒/29分01秒2714分45秒52
糸井春輝(3年)  箱根メンバー入り
66分11秒/29分29秒04
青柳達也(3年)  全日本予選:1組4位
66分36秒/29分14秒6514分13秒39
松井尚希(3年)
64分32秒/29分30秒0114分28秒19
坂田隼人(3年)
65分18秒/29分38秒12/14分27秒70
川田啓仁
(2年)
64分17秒/29分46秒73/14分33秒15
鈴木吟河(2年)
64分47秒/29分47秒80
吉本光希(2年)
65分12秒/29分56秒84/14分43秒46

<ポイント>
01. 新4年生世代は部員数が少ないため層の薄さが懸念されます。その分、新3年生~新2年生世代の成長にかかる期待は大きくなりそうです。

02. 小野選手、青柳選手は共に全日本大学駅伝予選で活躍してトラックでのスピードが売りです。小野選手は駅伝実績、青柳選手はスタミナ面に課題を抱えていますが、そこを越えれば一気に中軸選手となる事も期待できる逸材です。
糸井選手はこの秋にスピードをつけて箱根メンバー入り。まだ発展途上のスタミナ面を強化してさらに次のステップへ進みたいところです。

03. 他にも育成力が売りの中央学院大らしく、ハーフ64~65分台・10000m29分台を兼ね備えた今後の成長が期待される選手を多く揃えています。ここからどれだけの選手をブレイクさせられるかも、首脳陣としての力の見せ所でしょう。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

伊藤秀虎(四日市工)  全国高校:1区17位 都道府県:1区26位
14分07秒6120分18秒(7.0km)/29分37秒(10.0km)
西田歩(滋賀学園)  全国高校:3区33位
14分26秒60/ ― 
川﨑丞偉(桂)  近畿高校:4区14位
14分25秒75/ ― 
瀬沢瑛洋(報徳学園)  近畿高校:3区5位
14分34秒99(PB)/ ― 
須藤蓮(水城)  全国高校:4区35位
14分35秒46(PB)/ ― 
飯塚達也(東播磨)  近畿高校:1区30位
14分35秒62(PB)/ ― 
久我駿太(鶴崎工)  全九州高校:4区16位
14分36秒15(PB)/ ― 

<ポイント>
01. 即戦力として期待がかかるのが伊藤選手(四日市工)です。全国高校駅伝と都道府県駅伝を経験しており、全国高校駅伝では激戦の1区についていき29分台半ばのタイムをマークしています。昨季の小島選手・武川選手の様なルーキーイヤーでのブレイクとなるでしょうか。

02. 他にも、ずば抜けた要素はないながらもスピードの基礎を備え、エリア大会以上の駅伝を経験している選手が多いです。昨季は10000m30分切りをマークした1年生が9名いる事を考えれば、高校時代の持ちタイム以上に大学の環境にフィットできるかに成長の鍵がありそうです。