2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝13位の拓殖大学です。 



【拓殖大学】

<昨季の主な大会成績>
出雲駅伝:9位
全日本大学駅伝:16位
箱根駅伝:13位

<ポイント>
01. 19年の箱根駅伝は総合9位。出だしこそ遅れたものの、2区デレセ選手、3区馬場選手でシード圏内に戻すと、山登りの5区でもリードを作ります。復路では区間中位に近いタイムで粘って繋ぐと、ライバルチームの追い上げが比較的緩かった事もありシード圏内を維持。そしてアンカー10区で箱根デビューの松岡選手が区間5位の走りで最後の逃げ切りを決めました。ただ、2区・3区・5区の主要区間をはじめ卒業する4年生の活躍度が非常に大きかったため、2019年度シーズンはその戦力維持が大きな課題となりました。

02. 箱根駅伝の成績で全日本大学駅伝の出場権を獲得できたため、このシーズンは駅伝シーズンまで強化に集中できました。ただ、石川選手、松岡選手といった主力候補が駅伝シーズンに出遅れるという不安要素も抱えていました。
そして迎えた出雲駅伝は、赤﨑選手が1区3位、新留学生レメティキ選手が3区5位と快走しますが、それに続く選手が出ず主要な関東勢だけでなく関西の雄・立命館大にも後れを取ります。結果は総合9位となり関東勢最下位はなんとか回避したものの、不安な立ち上がりとなりました。
翌月の全日本大学駅伝。こちらも赤﨑選手が3区3位、レメティキ選手が2区3位と中軸選手は躍動しますが、出雲駅伝と同じくそれに続いて快走する選手が出て来ません。特に距離が延びる後半の区間はいずれも区間15位以下と厳しい結果になり、中軸選手と中位層の力の差も箱根に向けての課題となりました。

03. その後は上尾ハーフや記録会で一定の成果を出して少しずつ課題を克服しつつ、箱根駅伝を迎えました。
1区は若手の竹蓋選手を起用しましたが、激しい高速レースを前に中盤で先頭集団から遅れる苦しい展開に。それでもギリギリのラインで持ち堪えると区間17位で2区に繋ぎます。すると2区レメティキ選手は中盤から後半にかけてどんどん加速し2区歴代3位タイ(59回以降)のタイムで快走しチームを11位まで引き上げます。そこからは赤﨑選手が3区9位、石川選手が5区11位など難所をこなしチームもシード圏内に入ります。そして復路に入り前回と同じく区間中位に近いタイムで粘りの繋ぎを続けますが、今回はシード権を争うライバルチームが復路でリードを稼ぐ場面が多く徐々に総合順位を落としていきます。そして最後も10区の清水選手が崩れてしまい総合13位でのフィニッシュとなり、3年連続のシード権とはなりませんでした。
中軸選手以外には箱根に間に合わせた5区石川選手や箱根で抜擢された7区兒玉選手は快走しましたが、前回から戦力を維持できるほどの新戦力の台頭とはいかず、来季に向けて大きな課題を残しました。




【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

赤﨑暁 箱根:3区9位 全日本:1区3位 出雲:3区3位
61分46秒28分27秒90/14分11秒62
玉澤拓海  箱根:6区18位
65分39秒/29分38秒87
中井槙吾 箱根:9区12位 全日本:8区17位 出雲:6区10位
63分23秒29分46秒75

<ポイント>
01. 前回の箱根駅伝1区で苦しんだ赤﨑選手は、その悔しさを糧に大学ラストイヤーにで大きく成長します。10000m28分台前半・ハーフ61分台の持ちタイムとなり、新留学生レメティキ選手と共にWエースとなると、駅伝でもチームを走りで牽引し箱根駅伝では2度目の3区で高速レースにしっかり対応した走りを見せました。

02. 大学ラストイヤーで力をつけた玉澤選手は山下りの適性を見出されて6区で箱根駅伝デビューを飾ります。高速レースもあって順位は思うように上げられませんでしたが、60分台前半のタイムで崩れることなく最初で最後の箱根を走り抜きました。
赤﨑選手と共に駅伝シーズンを引っ張っていった中井選手。出雲や全日本ではなかなか結果が出ませんが、11月にハーフで自己ベストを更新するとそこから勢いを取り戻し2年ぶりに箱根駅伝に出走。その2年前と同じ9区を高速レースにも対応して区間中位と手堅くこなしました。



【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

吉原遼太郎(4年)  箱根:4区14位 全日本:5区15位
63分21秒(20.9km)/30分39秒91
石川佳樹(4年)  箱根:5区11位
63分57秒/14分24秒42
清水崚汰(4年)  箱根:10区20位 全日本:7区19位
64分25秒/29分50秒58/14分33秒99
竹蓋草太(3年) 箱根:1区17位 全日本:1区21位 出雲:4区8位
63分40秒(21.3km)/29分47秒57/14分26秒85
兒玉陸斗(3年)  箱根:7区10位
64分28秒(21.3km)/29分33秒68
ラジニ・レメティキ(2年) 箱根:2区2位 全日本:2区3位 出雲:3区5位
61分23秒27分51秒91
佐々木虎太郎(2年) 箱根:8区14位 全日本:4区14位 出雲:5区9位
65分54秒/29分37秒10

<ポイント>
01. 新留学生レメティキ選手はシーズン中盤から一気に存在感を発揮。10000m・ハーフの持ちタイムで前エースのデレセ選手を越えると、駅伝でも場数を踏むごとにどんどん適応していきます。そして箱根駅伝では花の2区で高速レースをものともしない圧巻の走りを見せてシード圏内との差を一気に詰める活躍を見せます。新シーズンからは確実にチームの中心となる活躍を見せたルーキーイヤーでした。

02. 前回箱根4区を走った石川選手。主力として期待されたシーズンでしたが怪我もあって駅伝シーズンに出遅れます。それでも山登り5区で再び箱根に挑み見事高速レースの中でも区間11位と堅実な結果を残しました。大学ラストイヤーは再び持ちタイムを伸ばして主力としてフル稼働が期待されます。
秋にトラックでのスピードが評価された兒玉選手は、ハーフの実戦を経ずに箱根駅伝に抜擢。それでもスタミナの不安を感じさせない内容で7区10位の快走を見せました。新シーズンも走力を磨きながら主力定着を目指します。

03. 吉原選手は記録会やロードレースの内容がやや不調ながらも、駅伝では経験を活かして崩れない走りを見せました。佐々木選手はレメティキ選手と同じくルーキーイヤーで駅伝シーズンフル稼働。箱根後にはハーフで自己ベストを更新しており、更なる成長に期待です。
清水選手・竹蓋選手は全日本大学駅伝や箱根駅伝で要所を任されましたが、うまく役割を全うできない結果で悔しい駅伝シーズンとなりました。チーム内でも実力のある選手なので、彼らの更なる奮起もチーム復活に必要な要素です。



【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

青柳拓郎(4年)  箱根メンバー入り
65分23秒/30分20秒12
前田晃伸(4年)
 ― /29分29秒21
髙橋達彦(3年)  全日本:6区18位 出雲:2区20位
64分49秒/29分50秒22/14分39秒36
新井遼平(3年)
65分45秒/30分07秒91
工藤翼(2年)  箱根メンバー入り
 ― /29分54秒83/14分38秒48
江口清洋(2年)  箱根メンバー入り
65分48秒/30分26秒81
関根大地(2年)  箱根メンバー入り
65分33秒/29分54秒14
吉村陸(2年)  箱根メンバー入り
65分26秒/29分40秒50
原田大希(2年) 
67分28秒/29分43秒89 

<ポイント>
01. 髙橋選手は出雲駅伝・全日本大学駅伝で出走メンバーに選ばれブレイクのシーズンになるかと思われましたが、どちらも実戦の難しさに阻まれて結果を出せずその先の箱根駅伝に繋げられませんでした。新シーズンはさらに地力を上げながら駅伝で結果を残したいところです。
またルーキー世代では、箱根駅伝に出走したレメティキ選手、佐々木選手以外にも工藤選手、江口選手、関根選手、吉村選手と4選手が箱根駅伝メンバー入りを果たしており、チームの若返りの意思を感じます。彼らの中から2年目のブレイクを果たす選手は現れるでしょうか。

02. 新チームを見ると、日本人選手におけるスピード・スタミナ両面のパンチ力不足を感じます。箱根駅伝予選会を戦うライバルチームには10000m28分台・ハーフ62~63分台の選手も決して少なくないので、新シーズンではその水準のポテンシャルの選手を増やしたいところです。駅伝でレギュラー入りしていない選手がその水準に化ける事も充分あり得るので、そんな新戦力の登場にも期待したいです。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

根岸賢(東農大二)  関東高校:7区3位
14分21秒35/ ― 
森島寛人(島田)  全国高校:4区32位
14分44秒99(PB)/23分58秒(8.08km)
秋吉星弥(加藤学園)
14分43秒31(PB)/ ― 
森重孝哉(西京)  全国高校:7区21位
14分53秒36(PB)/14分43秒(5.0km)
井上柾未(市立船橋)
14分55秒00(PB)/ ― 
奥村聡介(京都外大西)  近畿高校:1区17位
14分55秒56(PB)/ ― 
正田盛起(豊浦)
14分57秒95(PB)/ ― 

<ポイント>
01. 世代で突出した持ちタイム・実績の選手はいませんが、スピードが光る根岸選手(東農大二)、全国の舞台で一定の結果を出している森島選手(島田)、森重選手(西京)といった選手は比較的即戦力の期待値は高そうです。
拓殖大の昨季のルーキー世代は、10000m29分台・ハーフ65分台の水準に成長した選手は多いので、新シーズンでもしっかりと若手の総合力をつけていきたいところです。