2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝19位の国士舘大学です。 



【国士舘大学】

<昨季の主な大会成績>
全日本大学駅伝予選:14位で予選敗退
箱根駅伝予選会:8位で予選通過
箱根駅伝:19位

<ポイント>
01. 19年の箱根駅伝は総合18位。日本人エース・住吉選手が1区9位、期待の留学生ルーキー・ヴィンセント選手が2区3位と繋いで46年ぶりに2区をトップで通過します。しかし、その後は鼡田選手が5区12位と健闘したものの、ほとんどの選手が区間下位に沈みリードを稼げず。目標とする総合15位には届きませんでした。
3年連続で箱根駅伝予選会を突破していますが、本大会のレベルの高さを前に目標とする総合15位への険しい道のりの真っ最中です。それでも回を追うごとに大崩れする選手も減り、総合タイムは着実に縮まっています。そして、この挑戦を継続する上で避けられないのが、世代交代です。直近の箱根駅伝で主要区間を担った世代が卒業し、あまり早咲きの選手が多くないチーム事情の中で如何にこの課題を乗り越えるかが2019年度シーズンの大きなポイントとなりました。


02. まず6月に全日本大学駅伝予選を迎えました。前半は若手の期待株・荻原選手が1組21位、前回の箱根を経験した加藤直選手が2組19位と健闘しますが、後半の組に投入した選手をはじめ半数の選手が組30位台となかなか互角に勝負に持ち込めません。またエースのヴィンセント選手も留学生の先頭集団から遅れ4組6位と本来の力を発揮できず、チームは総合14位で予選敗退。トラックレースでの力の差を感じる大会となりました。
そして秋には、正念場となる箱根駅伝予選会を迎えました。世代交代の課題に対しては、1~2年生の選手が7人出走という思い切った若い編成で挑みました。エースのヴィンセント選手は留学生の先頭集団にしっかりついたほか、多くの選手は後半勝負を見越して前半は慎重なペースで入っていきます。一方で、10km地点で既に2選手が200位台に落ちるなど前半からの気温上昇に対し不安要素も見え隠れしました。それでも後半になると、多くの選手がプラン通りに安定した走りを継続して大きく順位を上げていきます。主力の鼡田選手と福田選手のほか、若手の清水悠選手や木榑選手が100位以内でゴールし、チーム9番手までが150位以内と安定した内容を見せます。レース後半でさらに1選手が崩れた事でチーム10番手は200位台となりますが、2位でゴールしたヴィンセント選手や主力のリードなどもあって総合8位で箱根駅伝の出場権を獲得。1~2年生の選手が大勢結果を出したことで、世代交代の課題も解決の目途が立ちました。

03. その後は若手選手を中心に記録会やロードで結果を出す選手が増え、少しずつ着実にチームの成長を感じる中で箱根駅伝を迎えます。1区は粘りの展開を意識してバランス型の荻原選手を起用しますが、その読みが外れレースは序盤から高速レースに。結果的に荻原選手は序盤で先頭集団から遅れて単独走を強いられてしまい、区間20位となります。続く2区ヴィンセント選手は高速レースの中でも区間4位のエースの走りで4人を抜いて前との差を詰めますが、3区・4区は高速化や地力の差もあって区間順位を上げられません。さらに巻き返しを期待された5区山登りの鼡田選手が本来の力を発揮できず区間最下位となり、往路を総合最下位で終える厳しい展開となります。
続く復路ではレース展開に影響された大崩れが心配されましたが、6区曽根選手が区間9位の走りで総合最下位を脱出しチームに覇気を与えます。その効果もあってか、その後も区間下位に沈む選手はほとんどおらず、清水悠選手が8区13位、孝田選手が10区14位と高速レースの中でも区間中位に迫る選手も現れました。全体としては総合19位となり今回も目標には届かなかったものの、総合タイムは前回をさらに上回ったほか復路を中心に来季に主力候補として期待が持てる選手も出ており、しっかりと収穫も得た箱根駅伝となったように思います。




【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

石川智康 箱根:4区16位 箱根予選:134位 全日本予選:4組34位
63分49秒(20.9km)/29分55秒84/14分28秒53
鼡田章宏  箱根:5区20位 箱根予選:75位
64分09秒/29分50秒5014分53秒21
福田有馬  箱根:9区17位 箱根予選:78位
65分21秒/29分50秒5014分53秒44
加藤雄平  箱根メンバー入り
63分59秒/29分39秒90/14分30秒51

<ポイント>
01. 石川選手はシーズン前半はあまり結果を出せませんでしたが、駅伝シーズンでは安定感を発揮。箱根駅伝予選会では安全圏で走り切ったほか、箱根駅伝では高速化した4区で快走とはいかないまでも一矢報いる内容を見せました。
エース格として活躍が期待された鼡田選手は、シーズン前半は活躍の場を作れませんでしたが、駅伝シーズンに入り箱根駅伝予選会で日本人選手の集団走を牽引する走りを見せました。そして、5区の経験が期待された箱根駅伝でしたが本来の力を発揮できず、こちらは悔しい内容となりました。
福田選手は箱根駅伝予選会で
鼡田選手と共にチーム内上位の走りで活躍すると、1年生以来の箱根駅伝出走のチャンスを掴みます。高速化した9区でしたが手堅い内容でまとめ、6区で苦しんだ箱根デビューの記憶を上書きする走りとなりました。
加藤雄選手はラストシーズンの秋に絶好調の時期を迎え、チームの日本人選手では唯一のハーフ63分台をマークするなど持ちタイムで見たパフォーマンスはチームトップレベルでした。ただ調整力かコンディションの問題か箱根駅伝の出走には至らなかったのは、なんとも惜しい気持ちです。



【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

曽根雅文(4年)  箱根:6区9位 全日本予選:2組31位
65分08秒/29分53秒22/14分12秒80
孝田拓海(4年)  箱根:10区14位
64分20秒/30分00秒46/14分27秒60
R・ヴィンセント(3年) 箱根:2区4位 箱根予選:2位 全日本予選:4組6位
59分51秒28分03秒7413分47秒05
荻原陸斗(3年) 箱根:1区20位 箱根予選:131位 全日本予選:1組21位
65分25秒(21.3km)/29分52秒1014分42秒51
長谷川潤(3年)  箱根:3区19位 全日本予選:3組36位
65分37秒(21.4km)/29分38秒77/14分30秒60
清水拓斗(3年)  箱根:7区16位 箱根予選:114位
65分55秒/29分36秒88/14分22秒02
木榑杏祐(3年)  箱根予選:95位
64分12秒/29分44秒78/14分30秒02
清水悠雅
(2年)  箱根:8区13位 箱根予選:74位
65分21秒/30分10秒77/14分42秒96
綱島辰弥(2年)  箱根予選:113位
65分55秒/29分49秒59/14分26秒18

<ポイント>
01. やはりエースとして君臨するのはヴィンセント選手。全日本大学駅伝予選こそ不覚を取ったものの、箱根駅伝予選会ではキサイサ選手(桜美林大)に次ぐ個人2位とエースの仕事を果たすと、箱根駅伝では靴紐がほどけるアクシデントがありながらも区間4位と安定した内容を見せました。ですが、箱根駅伝の他の留学生と比較すると、Y・ヴィンセント選手(東京国際大)やレメティキ選手(拓殖大)にはやや後れを取る内容です。それに負けじと、箱根後に海外の大会でハーフマラソンの日本記録を越える59分51秒をマークしさらに力をつけました。

02. この1年で大きく成長した曽根選手、孝田選手は、大学ラストイヤーとなる新シーズンでもチームを走りで引っ張る存在として期待されます。
5000mなどのスピードで頭角を現した曽根選手は秋にハーフでも結果を出して長い距離に適応すると、スピード面の強みを期待されて箱根駅伝の6区に抜擢。59分台前半で走る区間9位の快走を見せ、一躍中軸の一角となりました。孝田選手は11月に上尾ハーフで64分台をマークしてスタミナを評価されて箱根駅伝10区を任されると、高速化にも適応して区間14位と手堅くまとめます。箱根後にはさらにハーフの自己ベストを更新するなど、新チームのスタミナ自慢としても期待できる選手です。

03. 新3年~新2年生世代は多くの選手がレギュラー入りしてこの1年で非常に選手層が厚くなりました。
荻原選手は総合力を伸ばし多くの経験を付けたシーズンとなりました。また、早咲きだった長谷川選手は不調と戦う時期もありながら2年連続の箱根駅伝出走を果たしました。共に、箱根駅伝では主要区間を任され、結果は出せなかったもののハイレベルなレースにしっかりと揉まれています。
チームのW清水となる清水拓選手と清水悠選手も成長の1年でした。共に箱根駅伝予選会ではチームの突破に大きく貢献し、箱根駅伝では復路を走って区間中位に近いでまとめ、チームの総合タイム更新に貢献しています。清水拓選手はチーム内でも上位のスピードであるので、さらにスピードスターとなる事が期待されます。
木榑選手、綱島選手は箱根駅伝予選会で活躍し、期待の若手選手の一角に位置しています。木榑選手は箱根駅伝後にハーフで好タイムをマークし、新チームの日本人選手の中でもスタミナが期待される選手の1人となっています。




【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

金井啓太(4年)  箱根メンバー入り
67分48秒/29分53秒05/14分44秒51
杉本日向(4年)  箱根予選:253位
66分29秒30分21秒92/14分29秒20
加藤直人(4年)  箱根予選:248位 全日本予選:2組19
66分23秒/29分47秒29/14分36秒40
島村広大(3年)
65分11秒/30分04秒86/14分29秒59
小早川寛人(3年)  箱根予選:295位 全日本予選:2組35
65分11秒/29分53秒59/14分32秒76
折原峻人(3年)
65分27秒/30分23秒84
三代和弥(3年)
64分33秒/30分18秒54
福井大夢(2年)  箱根メンバー入り
65分49秒/29分44秒82/14分10秒23
中嶋龍希(2年)
66分02秒/29分51秒65/14分35秒38

<ポイント>
01. レギュラーを狙う選手には全日本大学駅伝予選や箱根駅伝予選会で出走したり、箱根駅伝メンバー入りを果たしている選手も多いです。成功経験が少ないことなどもあってか箱根駅伝の出走までは至りませんでしたが、どの選手もスピードやスタミナで強みを持っていたり箱根出走といった経験面の強みがあるなど、レギュラー争いをするための軸となる要素を備えています。
また、島村選手や三代選手のような箱根後にロードレースで好タイムをマークしてスタミナ面を大きくアピールしている選手もいます。レギュラー格の選手でもスタミナ面に課題のある選手は少なくないため、スタミナ面のアピールはレギュラー入りへの近道となるかもしれません。




【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

遠入剛(大分東明) 全国高校:1区11位 都道府県:1区3位
14分16秒18/19分47秒(7.0km)/29分01秒(10.0km)
上野優人(大分東明) 全国高校:4区14位 都道府県:5区19位
14分35秒16(PB)24分53秒(8.5km)/29分35秒(10.0km)
山本龍神(米子松陰) 全国IH<5000>:予選3組12位 都道府県:1区28位
14分09秒1820分25秒(7.0km)/29分52秒(10.0km) 
山下雄暉(美濃加茂)  東海高校:1区2位
14分25秒65/ ― 
山本雷我(敦賀気比)  北信越高校:1区12位
14分38秒20(PB)/ ― 
野中創太(武蔵越生)  関東高校:4区11位
14分45秒62(PB)/ ― 
安田快聖(水城)
14分57秒77(PB)/ ― 

<ポイント>
01. 大きな武器を持つ有望選手が複数人入部し、非常に充実したリクルートと言えます。
遠入選手(大分東明)は激戦の高校駅伝1区で28分台目前のタイムで走った逸材。都道府県駅伝でも区間上位となり駅伝力は抜群です。上野選手(大分東明)は長い距離への適応力が高く、駅伝実績もしっかりしています。山本龍選手(米子松陰)はスピードに強みがあるほか、10kmのロードレースでも結果を出しています。
これだけ即戦力が期待できるタレントが揃った上で、新2年生世代の高校時代と肩を並べる持ちタイムの選手も揃っています。早い段階で環境にフィットする選手が何人も出てくれば、一躍黄金世代となり得るほどのポテンシャルが期待される新入生となっています。