2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝20位の筑波大学です。 

(追記)06/07:新入生情報を追加しました。




【筑波大学】

<昨季の主な大会成績>
箱根駅伝予選会:6位で予選通過
箱根駅伝:20位

<ポイント>
01. 18年の箱根駅伝予選会は総合17位。トラックでも力のある選手が前で仕掛け、残りの選手は複数の集団走に別れてレースを進めましたが、後方の集団走はペースを上げていけず10km地点で250位以下の選手が4名となっていました。その後も、半数の選手が後半にペースを上げていけなかったほか、主力選手もチーム最高位は67位(相馬選手)で150位以内が4名と箱根駅伝出場権を争うにはまだまだ総合力が足りないと感じる結果でした。
その後、トラックレースでの内容も低調で19年の全日本大学駅伝・関東予選への出場を逃します。これに危機感を感じたチームは、選手を中心に多くのミーティングを重ねて「本気で箱根駅伝を目指す選手」による少数精鋭に絞る事を決断。トラックレースに力を入れたい選手は駅伝チームを離れる事となり、前回の箱根駅伝予選会の主力選手を含む10数名の選手が駅伝チームを抜けました。もちろん戦力ダウンは避けられませんでしたが、その代わりこれまで以上に日々の生活の管理徹底を実行できたほか、夏場を中心に例年以上に負荷をかけた練習を行う事もでき、それによるチームの成長度合いが戦力ダウンした分を超えられるかどうかの勝負となりました。

02. チーム改革を行って迎えた9月の学内記録会では、エースの金丸選手が復調の兆しを見せ、1~2年生を中心に新たな選手が台頭してくる内容となりました。
そういったポジティブな要素を糧に、ついに運命の箱根駅伝予選会を迎えました。今回も複数のグループによる集団走でレースを進めましたが、10km地点で5名が100位以内となり12名全員が200位以内につけるなど前回よりも格段に前の位置でレースを進めます。そして後半になると、金丸選手、西選手、猿橋選手といった中軸選手が暑さをものともしない抜群の走りを見せて3選手とも20位以内でフィニッシュ。そのほか、8名の選手が150位以内でフィニッシュし、後ろの集団走も互いをフォローしあいながら後半に粘りの走りをつづけた事で、チーム10番手の選手も184位と安定した走りを実現出来ました。
それらの成果が積み重なり総合6位で箱根駅伝出場権を獲得。前年の予選会が総合17位で全日本大学駅伝予選にも出られなかったチームが、26年ぶりの箱根駅伝出場決めるという大ジャンプアップを成し遂げました。

03. その後、快挙達成がチーム内にも良い空気をもたらし、トラックレースの記録会でも多くの選手が自己ベストを更新。チームのスピード水準を大きく向上させた状態で箱根駅伝に臨みました。
1区から激しい高速レースとなりますが、1区の西選手が粘りの走りで中盤まで先頭集団に喰らいつきます(10km地点で西選手の10000m自己ベストを大きく超えるペースでした)。単独走になってからも崩れることなく区間11位で襷を繋ぎ、下馬評から見ても非常に良いスタートを切ります。続く2区のエース・金丸選手は終盤にペースを上げるなど粘りのレースで高速レースに抗い、区間19位と順位は厳しいもののタイムは69分台前半と手堅い内容にまとめました。そして3区猿橋選手も区間16位と高速レース相手に奮闘し、中軸3選手を起用した序盤は大きく遅れることなくレースを進めます。
しかし、4区以降は地力の差であったり山登りで期待された5区相馬選手が区間下位に沈むなど想定外の事態もあって、徐々に順位を落とします。若手を起用した6~8区がいずれも区間20位となった事でチームは総合最下位に転落しますが、区間順位が悪くてもタイムで大崩れする選手は1人も出なかった事で、単独で大きく遅れるという展開は防ぎます。終盤になり川瀬選手が9区14位、児玉選手が10区16位と奮闘して前を追う気迫を見せ、良い流れに戻してフィニッシュテープを切りました。
順位こそ最下位の総合20位でしたが、総合タイムはこれまでの最下位チームと比べても遥かに早いものでした。最下位という結果はもちろん悔しいものですが、どの選手も高速化した箱根駅伝にふさわしいレベルの走りを展開したといえます。26年ぶりの箱根駅伝に沸いたシーズンは終わりましたが、チームは大きな改革をした体制をしっかり継続していけるかという段階に入っています。このシーズンの成功をフロックと言われないためにも、チーム力の維持と成長が求められます。



【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

金丸逸樹  箱根:2区19位 箱根予選:13位
63分53秒/29分20秒57/14分47秒42

<ポイント>
01. 卒業生の世代で駅伝チームに残った選手が少なかったこともあり、夏以降に本来の力を取り戻した金丸選手が5年生ランナーの川瀬選手と共にチームを牽引する存在となりました。箱根駅伝予選会ではチームトップの個人13位で暑さの補正を考えれば実質62分台の走りと言える内容でした。その後10000mの自己ベストを更新してスピードも強化すると、箱根駅伝では花の2区に挑み区間19位。順位は厳しいものながら69分台前半のタイムで高速化には一矢報いる走りを見せました。



【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

西研人(4年)  箱根:1区11位 箱根予選:19位
61分56秒/29分27秒4514分21秒52
猿橋拓己(4年)  箱根:3区16位 箱根予選:20位
64分04秒/29分36秒47/14分39秒40
大土手嵩(4年)  箱根:4区19位
65分10秒/29分31秒58/14分15秒66
相馬崇史(4年)  箱根:5区19位 箱根予選:40位
64分44秒/29分57秒21/14分43秒08
児玉朋大(4年)  箱根:10区16位 箱根予選:246位
72分05秒(23.0km)/30分02秒21
杉山魁声(3年)  箱根:7区20位 箱根予選:194位
64分21秒/29分38秒59/14分42秒55
伊藤太貴(3年)  箱根:8区20位 箱根予選:159位
65分38秒/29分56秒04
岩佐一楽(2年)  箱根:6区20位 箱根予選:121位
66分01秒/30分10秒28
小林竜也(2年)  箱根予選:119位
65分59秒/29分56秒19

<ポイント>
01. この1年で最も成功実績を積んだのが西選手です。もともとスピード・スタミナが揃った選手で、成長を続けながら箱根駅伝予選会ではチーム2番手の個人19位の活躍。さらに箱根駅伝では1区の高速レースに喰らいついていき区間11位の好走で26年ぶりの筑波大の挑戦に勢いをつけました。そして、箱根後にはハーフマラソンで61分56秒をマークして筑波大記録を大幅に更新。その爆発的なスタミナを軸に、大エースと呼べる力を身につけています。

02. 新4年生世代は入学時から実力のある選手が多く、黄金世代となり得る存在として年々期待が増しています。
猿橋選手は新チームでは西選手に次ぐ実力者です。箱根駅伝予選会で予選突破に大きく貢献し、本大会では3区に起用され高速レースにも一矢報いています。大学ラストシーズンで中軸としてどれだけ力をつけていけるかも注目です。
相馬選手はこの世代では早咲きで、2年生時に箱根駅伝を経験しています。箱根駅伝予選会では安定した内容でチームの予選突破に貢献しましたが、箱根駅伝では2度目の山登りで力を発揮できず悔しい結果に。同世代のライバルが急激に力をつけてきた事で、それが良い刺激となる事が期待されます。
児玉選手は箱根駅伝予選会ではチーム内最下位でしたが、それは自身の走りを犠牲にして終盤まで後輩選手をサポートしていたためと言われています(実際、児玉選手と15kmまで並走していた選手はラスト5kmで持ち直しています)。持ち前のポテンシャルを示すかのように、箱根駅伝では23km区間の10区で区間16位と手堅い内容でまとめることに成功しています。
チーム改革時に新たに主将に選ばれた大土手選手。箱根駅伝予選会は未出走でしたが、その後急激に力をつけ5000mや10000mはチーム上位の持ちタイムとなります。そして箱根駅伝では4区に抜擢されますが、高速レースに対してはまだ力不足な結果に。引き続き主将として挑む大学ラストイヤーでは、さらに走りでチームを牽引することが期待されます。

03. 26年ぶりの箱根駅伝の成功には、黄金世代以外にも若手の成長がありました。
杉山選手は18年の予選会ではチーム内最下位の300位台でしたが、今回の予選会ではチーム11番手だったものの200位切りに成功。そして7区で箱根デビューを果たしハイレベルな戦いに揉まれると、箱根後にはハーフで64分台をマークして確実に力をつけています。
伊藤選手、岩佐選手、小林選手は2019年度シーズンで台頭してきた選手です。箱根駅伝予選会でも予選突破に貢献したほか、トラックでも結果を出しています。伊藤選手と岩佐選手は箱根デビューも果たし、厳しい戦いに身を置いて経験を積んでいます。




【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

田川昇太(4年)  箱根メンバー入り
66分19秒/30分23秒25
山下和希(4年)  箱根予選:135位
66分11秒/30分30秒65
渡辺珠生(4年)  箱根メンバー入り
 ― /30分52秒90/14分53秒11
山本尊仁(3年)  箱根予選:184位
66分52秒/30分50秒54/14分57秒66
河合俊太朗(3年)  箱根メンバー入り
67分17秒/30分43秒12/14分49秒73
國井辰磨(2年)
 ― /30分13秒82/14分44秒72
福谷颯太(2年)  箱根メンバー入り
 ― /30分49秒51/14分49秒74

川瀬宙夢(6年)  箱根:9区14位 箱根予選:53位
63分54秒/29分59秒98/14分45秒89
※川瀬選手は箱根駅伝予選会に累計4回出走しているため、箱根駅伝及び予選会への出走は不可。(全日本大学駅伝予選は出走可能?)

<ポイント>
01. 少数精鋭のチームという事もありレギュラーを狙う選手の層が厚いというわけではないですが、山下選手や山本選手のように箱根駅伝予選会で結果を出したり、箱根駅伝メンバー入りを果たした選手もいます。この1年で見ると主力候補の選手とは総合力に少し差があり、特に10000mなどのトラックレースの結果は影響が大きいように思います。ハーフの場数が少ない選手はまずはそこからですが、全日本大学駅伝予選を走れるようなスピードを身に着けていくとレギュラーへの距離が縮まるかもしれません。

02. 川瀬選手は6年制の医学部のランナーという事で、現役ながら箱根駅伝の出場上限回数を満たしている珍しい選手です。26年ぶりの箱根出場を果たしたこの1年での貢献度は非常に大きく、箱根駅伝予選会での安定した走りはもちろん、箱根駅伝では区間下位が続き苦しい状況だった中で9区14位と健闘してチームに再び勢いを戻しました。
6年生となる新シーズンは日本インカレでも結果を出している3000m障害で勝負するとの事ですが、間接的にチームをサポートする事もあるかもしれません。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

大塚陸渡(日体大柏)
14分23秒55/29分58秒(10.0km)
金田遼祐(専大松戸) 全国IH<3000SC>:予選2組7位 関東高校:7区17位
14分46秒55(PB)/ ― 
平山大雅
(宇都宮) 全国IH<3000SC>:予選3組9位 関東高校:1区10位
14分47秒61(PB)30分18秒38
皆川和範(春日部)
14分56秒84(PB)/ ― 
塚田萌成(逗子開成)
15分00秒26(PB)/ ― 
富山翔太(岡崎)
15分05秒18(PB)/ ― 
藤原潤乃佑(東邦大東邦)
15分18秒33(PB)/ ― 

<ポイント>
01.
 大塚選手(日体大柏)はスピードも長距離適性も優れており、10kmロードで29分台をマークしている点は、まだ10000mで力のある選手が比較的少ない筑波大にとって即戦力となり得ます。平山選手(宇都宮)も5000mでのスピードは発展途上ながら、トラックレースとなった栃木県高校駅伝・関東高校駅伝のいずれでも10000mで30分台前半をマークする安定感があります。こちらも早い段階で環境にフィットすれば、1年目からの活躍も充分期待できます。また、金田選手(専大松戸)もインターハイ全国大会出場など経験面は充分です。
ライバルチームと比べると5000m14分台の選手はあまり多くないですが、新2年生世代でも高校時代の持ちタイムが14分50秒台だった岩佐選手や國井選手が10000mやハーフで結果を出しています。昨季からの新体制の中で新入生がどう成長していくかも注目ポイントです。