2020年度のシーズンに入りました。ここでは各大学ごとに昨季の振り返り・主な卒業生の紹介・新シーズンに向けての選手紹介を行ってまいります。

今回は、箱根駅伝予選会18位の大東文化大学です。 



【大東文化大学】

<昨季の主な大会成績>
全日本大学駅伝予選:9位で予選敗退
箱根駅伝予選会:18位で予選敗退
吉井龍太郎選手(当時3年)が箱根駅伝・関東学生連合に選出

<ポイント>
01. 19年の箱根駅伝は総合19位。スタート直後にアクシデントがあり1区の新井選手が負傷を抱えたまま約21kmを走る形に。棄権させずに続行した事には賛否両論ありましたが、大きく引き離されながらも襷を繋ぎます。そこからしばらくは精神的動揺もあって苦戦しますが、4区~7区はいずれも区間10位以内の好走を見せるなど中盤からは勢いを取り戻し往路の終盤には総合最下位を脱出します。その後も復路の終盤の区間も区間中位と堅実にまとめるなど、アクシデントの中でも気持ちを引き締めて安定した走りをした選手が多く、総合順位は下位となりましたが選手個人で見ると次に繋がる収穫もあった箱根駅伝でした。ただ、次シーズンに向けてはスタミナ自慢の4年生が多く卒業する事もあり、その戦力維持は大きなテーマとなりました。

02. 6月には全日本大学駅伝予選会を迎えました。エース格の奈良選手・川澄選手を別の組に分ける作戦で臨み、3組では奈良選手が組4位、三ツ星選手が組6位とリードを稼ぎます。しかし、4組は片根選手が組21位、川澄選手が組23位と思うように順位が上がらず、また前半の組も吉井選手の1組17位が最高順位で出場権争いに必要なリードが稼げませんでした。結果は総合9位となりある程度は出場権争いに近付きましたが、主力選手の爆発力不足や中位層の底上げなど課題も多く残りました。
夏合宿と9月の大東大ナイター競技会などを経て、駅伝シーズンの箱根駅伝予選会を迎えました。Wエースの川澄選手、奈良選手と期待の若手の片根選手は前半から比較的上位の集団でレースを進め、それ以外の選手が少人数のグループに分散してレースを進めます。気温が上昇する中で後半に入ると、吉井選手・三ツ星選手・片根選手・倉田選手といった若手選手は終盤にかけて粘りの走りを見せます。しかしその一方で、Wエースと後方の選手たちは暑さに苦しめられます。Wエースの奈良選手・川澄選手は後半に入ると著しくペースが崩れ大きく順位を落としていき、後方の選手は終始ペースを上げられず200位を越えていけません。全体としては100位以内の選手が3名とリードに乏しく、奈良選手の180位、川澄選手の252位を含め多くの選手がプラン通りに走れず総合18位。下馬評では当落線上だったとはいえ予想以上に下位に沈んでの予選敗退となり、大荒れの予選会を象徴する悲劇のチームの1つとなりました。

03. 吉井選手は箱根駅伝の関東学生連合に選出され、登り主体の8区に出走して区間9位にまとめる走りを見せ、次につながる箱根デビューを果たしました。
そしてチームは箱根返り咲きに向けて記録会・ロードレースで好走を見せます。苦しんだ卒業生世代では、川澄選手が5000mで13分台をマークして本来の走りでチームを鼓舞。すると在校生からは片根選手が10000mで28分台をマークしてそれに応え、ルーキー世代は倉田選手・蟹江選手・井田選手・大野選手が10000mで29分台前半をマークして世代単位で大きく力を伸ばしました。また11~12月のロードレースでは若手の底上げを中心に行い、井田選手がハーフ64分台、大野選手がハーフ66分台前半をマークしています。
ロードシーズン終盤の大会で
主力~レギュラー候補のスタミナ面の成長を見る予定でしたが、世情の影響でその大会が中止に。ここで結果を出して自信をつけさせる目論見が外れてしまった影響はやや気掛かりです。箱根駅伝返り咲きに向けてはチーム力を伸ばしているライバルも多いため、成長ぶりが可視化されていないスタミナ面を中心にどれだけ力を伸ばしているかが鍵となりそうです。
また、チームの首脳陣にも大きな変化が起き、箱根駅伝予選会後に2008年からチームを率いた奈良修監督が退任。コーチの
馬場周太氏が監督代行を経て2020年4月から正式に監督就任となりました。馬場新監督もコーチとしては2010年からチームを担当しているため体制の継続は充分可能と思われますが、まずはチームを再び軌道に乗せるところまでもっていきたいでしょう。



【主な卒業生】

<補足説明>
・卒業生は、昨季駅伝シーズンに出走あるいは箱根メンバー入りをした選手を中心に一部の選手の紹介のみとなります
・大会成績は2019年度のものです
・タイムは2019年1月~2020年3月を対象としますが、(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります(大会成績、タイムは大学生に関しては共通)

奈良凌介  箱根予選:180位 全日本予選:3組4位
63分09秒29分19秒90/14分08秒48
川澄克弥  箱根予選:254位 全日本予選:4組23位
68分04秒/29分53秒08/13分55秒25
豊田紘大  箱根予選:158位 全日本予選:1組31位
66分29秒/29分35秒35/14分17秒87
佐藤弘規  箱根予選:211位
66分39秒/30分13秒03/14分53秒31

<ポイント>
01. 箱根駅伝やロードレースでも好走を続けWエースの1人としてチームの牽引が期待された奈良選手。全日本大学駅伝予選ではしっかりと仕事を果たしましたが、箱根駅伝予選会では気温上昇の罠にはまり5km過ぎから失速すると、そのまま本来の走りに戻れずショッキングなレースとなりました。
同じくWエースの1人として期待された川澄選手。ですが箱根駅伝以降は本調子に届かないレースが多く勢いに乗れない時期が続き、箱根駅伝予選会でも10kmまでは上位に残ったものの後半に大きく失速して気温上昇に勝てませんでした。このまま失意のシーズンとなるかと思われましたが、12月の記録会で5000m13分台をマーク。卒業後の次のステップに向けて少しずつ復活の気配を見せました。
豊田選手はシーズン前半はなかなか結果を出せませんでしたが、夏合宿明けの記録会で好パフォーマンスを見せます。そして箱根駅伝予選会では後半なんとか粘り切って4年生で唯一箱根を争うラインの結果を出しています。
箱根駅伝の山登りで好走した佐藤弘選手は、関東インカレのハーフでも結果を出します。その勢いを駅伝シーズンにも持ち込みたかったですが、箱根駅伝予選会では後半にペースを上げきれず200位以下の位置に終始してしまいました。




【新チーム・主力候補】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生の中から、箱根駅伝で出走した選手を中心にご紹介します

吉井龍太郎(4年) 箱根:8区9位 箱根予選:55位 全日本予選:1組17位
65分02秒/29分30秒18/14分27秒24
三ツ星翔(4年)  箱根予選:82位 全日本予選:3組6位
64分36秒/29分29秒19/14分47秒06
片根洋平(3年)  箱根予選:97位 全日本予選:4組21位
65分38秒/28分49秒3314分22秒37
倉田蓮(2年)  箱根予選:130位
66分06秒/29分13秒24/14分11秒66
蟹江翔太(2年)  箱根予選:199位
67分10秒/29分21秒17/14分40秒15
井田春(2年)  箱根予選:282位
64分45秒/29分15秒71/14分31秒99
大野陽人(2年)
66分16秒/29分19秒67/14分25秒71

<ポイント>
01. Wエースが卒業する中、新シーズンでのチーム復活に向けては箱根駅伝予選会で結果を出した吉井選手、三ツ星選手、片根選手にチームを牽引する期待が集まります。
吉井選手は箱根駅伝予選会で安定感と終盤の強さを発揮。箱根駅伝でも関東学生連合の8区で好走し経験を積んでいます。スピードもありスタミナもハーフ63分台に近い力があるので、総合力を軸に活躍を続けていきたいところです。
2度の箱根を経験し成功実績もある三ツ星選手。2019年度もシーズン前半を中心に好タイムをマークし全日本大学駅伝でも活躍。駅伝シーズンに入り箱根駅伝予選会でも安定した走りを見せました。予選会後はあまりレースの場に姿を見せていないのが少し気掛かりですが、大学ラストシーズンでも高い総合力と勝負強さが期待されます。
高いスピードを軸に期待の若手となっている片根選手。全日本大学駅伝予選ではエースの4組を任せられる選手となったほか、初の箱根駅伝予選会でも100位以内に入りスタミナの成長を見せています。予選会後には10000m28分台の領域に到達し、チームのスピードスターとしてさらに輝きを増しています。

02. そして新チームを支える重要な存在となるのが、ルーキーシーズンで成長した新2年生の倉田選手、蟹江選手、井田選手、大野選手の4人です。いずれも10000mで29分台前半をマークしチームを支えるだけのスピードを身に着けています。
倉田選手は箱根駅伝予選会では粘り強い走りを見せてチーム4番手でゴールして結果を出しました。蟹江選手も箱根駅伝予選会では15kmまで健闘し200位以内でフィニッシュして1年生としてはまずまずの内容を見せています。井田選手は箱根駅伝予選会では終始苦しい走りで結果を出せませんでしたが、予選会後にハーフで64分台をマークして本来のスタミナの高さを見せています。大野選手は大会出走はなかったものの記録会やロードレースで着実に好走を続けて力をつけています。




【新チーム・レギュラー候補、成長株、復活選手】

<補足説明>
・ここでは新4年~新2年生で箱根駅伝は未出走の選手の中から、優秀な持ちタイムのレギュラー候補・急成長した選手・不調から復活傾向にあるなどをピックアップしてご紹介します

稲留涼斗(4年)  箱根予選:259位
67分55秒/30分26秒92/14分55秒73
山内滉士郎(3年)
 ― /30分20秒47/14分43秒78
藤崎将匡(3年)
67分11秒/30分33秒34
佐藤陸(3年)
64分50秒/30分23秒93/14分52秒41
金田龍心(2年)  箱根予選:263位 全日本予選:1組23位
68分23秒/29分56秒06/14分23秒53
谷口辰煕(2年) 
68分44秒/30分15秒83/14分37秒26
小林裕輝(2年) 
67分37秒/30分40秒73/14分38秒24

<ポイント>
01. 稲留選手・金田選手は主要大会を経験していますが、全体的にスタミナ面を中心に主力候補とは力の差がみられ実力水準にはやや不安が見られます。
そんな中で気になる存在なのは1年生時に活躍を見せた佐藤陸選手。スタミナに安定感があり2年生のシーズン前半までは関東インカレに出場するなど活躍しましたが、シーズン後半からは記録会でも姿を見せていません。他にも、18年の箱根駅伝予選会に出走している服部選手(新3年)なども実力のある選手ですが、まだ本来の走りを取り戻せていない状況です。長いトンネルでもがいている彼らが前線に戻ってこれると、一気にチーム力も上がっていくと思われます。



【新チーム・新入生】

<補足説明>
・ここでは今季入部した新1年生の中から、主な注目選手をピックアップします
・大会成績及びタイムは原則2019年度を対象としますが(PB)と自己ベスト表記されたものはそれ以前のタイムの場合があります

久保田徹(聖望学園) 全国IH<5000>:予選1組13位 関東高校:1区6位
14分18秒56/29分38秒31/29分40秒(10.0km)
伊東正悟(湘南工科大附)  関東高校:1区35位
14分17秒61/29分49秒89
菊地駿介(仙台育英)  全国高校:4区4位
14分18秒56/23分19秒(8.08km)
佐竹勇樹(比叡山) 全国IH<3000SC>:予選4組10位 近畿高校:1区8位
14分26秒31/ ― 
敦賀優雅(青森山田) 全国IH<3000SC>:予選1組6位 全国高校:6区29位
14分36秒35(PB)/ ― 
松村晴生(水城)  関東高校:7区6位
14分37秒45(PB)/ ― 
森洸晴(九州国際大学付)
14分55秒65(PB)/ ― 

<ポイント>
01. チーム復活に向けて若手からの突き上げも求められ、リクルートが充実している新入生にも期待がかかります。中でも、久保田選手(聖望学園)、伊東選手(湘南工科大附)はともに長い距離での適性が期待されます。トラックでのスピードもしっかり備えており、即戦力の見込みも充分な選手です。

02.
 菊地選手(仙台育英)も全国高校駅伝で高い結果を出しているほか、佐竹選手(比叡山)や敦賀選手(青森山田)もインターハイで全国レベルを経験しており、全体で見ても大化けした新2年生世代と同等以上のポテンシャルがあります。ルーキーイヤーでの彼らの成長度合いもチーム復活に向けては重要な要素となりそうです。