大会・記録会が開催されない期間のための短期特集として、箱根駅伝と箱根駅伝予選会のLAPタイムを集計して様々な角度でご紹介する事にしました。
今回は箱根駅伝パートの最後となる第10回として、第92~96回の10区のLAPタイムに着目していきます。
このシリーズの概要について → こちら
<10区 鶴見中継所~蒲田~新八山橋~大手町GOAL(23.0km)>
01. 1区の裏の位置ではありますが、馬場先門から日本橋を経由するため距離は復路2番目に長い23.0kmとなります。時折細かいアップダウンはあるものの基本は都心部のフラットなコースですが、気温が高い時間帯でありビル風が吹きやすい事もあってタフなコースになります。そのため、9区よりもやや距離が短いですが70分切りを達成するランナーは9区よりも少ないです。
第83回に松瀬選手(順天堂大)が記録した68分59秒が唯一の68分台として区間記録となっていましたが、第96回に嶋津選手(創価大)が68分40秒、吉野選手(帝京大)が68分43秒と初出走の2選手が区間新のタイムをマークし、嶋津選手の68分40秒が新たな区間記録となりました。
02. この区間の戦い方はチームの置かれている状況によって変化します。優勝やシード権に向けて逃げているのか並走しているのか追いかけているのか…その状況ごとの判断力と駆け引きが求められます。もちろん、9区と同じく長距離でタフなコースをしっかり攻略する事も大前提です。
9区と比べると、前半から突っ込んで終盤粘る戦い方も成功しやすいです。前述のようにチームの置かれた状況によってペース配分のプランが分かれてきます。
03. 距離や構成が似ている9区と選手の起用傾向は似ており、単独走を見据えてトラックレースの強さよりもスタミナやロードレース適性などが優先されます。また、アンカーという事で、主将や生え抜きの選手といった粘り強さのある選手であったり、最終盤の対策としてスパート力のある選手を起用することもあります。また、アンカーという勝負性が求められる位置でもあるため、この区間のスペシャリストを育てる場合もあります。
※シード:全区間の区間順位ごとのタイムを合計して総合10位のタイムに最も近いものを参考に算出したシード権獲得の基準タイム。
16年:区間12位 17年:区間11位 18年:区間11位
19年:区間12位 20年:区間10位
のタイムを元にエリアごとの基準タイムを出しています。
<ポイント>
01. まずは序盤戦。このエリアは上位の方がタイムの短縮幅がやや大きいです。第95回には序盤から突っ込んで走るスタイルを取る鈴木選手(青山学院大)がこのエリアをハイペースで入り、翌96回は区間新をマークした嶋津選手、吉野選手を筆頭に序盤からペースを上げる選手が増えました。16位までは第96回でのタイムの上昇がありますが、最下位付近に関しては第92回のペースが勝りました。
これには1つ理由があります。第92回及び第94回はそれぞれ9区終了時に繰り上げスタートとなったチームが多く、第92回は8チーム、第94回は7チームが繰り上げスタートとなりました。そのため16位と最下位のタイム差も少なく、第92回に至っては集団そのもののペースが積極的なものとなったため最下位のタイム水準も上がっています。
また、これはこの表では説明できない要素ですが、この10区は鶴見中継所~蒲田のペースが比較的上位の選手が中盤以降に崩れて区間下位に沈むというケースが9区よりも多いです
<ポイント>
01. 続いて中盤戦。特に注目は5位のタイムの短縮度合いです。区間8位以内に入った選手は蒲田以降の中盤戦・終盤戦でしっかりペースを上げる事が出来ており、それが10区のタイム向上の主要因となっています。厚底シューズの効果による「終盤も足が残る」状態が実現できているという事なのでしょう。
下位に関してはあまりタイムの短縮がありませんが、蒲田までの序盤エリアで上位だった選手がこのエリアで崩れて下位に沈んでくる現象はどの大会でも起きています。ですので、蒲田までのエリアの下位と新八山橋までのエリアの下位は別の選手であるケースも少なくありません。
<ポイント>
01. ゴールまでラスト10kmを切ってからの終盤戦です。ペースを維持するタイプや後半に上げていくタイプの選手は、ここのエリアで安定した走りをする事が必要不可欠です。第96回でこのエリアの上位タイムもレベルが上がり、30分切り~30分台前半のラインが求められます。序盤からハイペースで仕掛けた選手はそれまでの貯金がありますが、極力30分台半ばまでで粘りたいところです。
下位に関しても第96回でのタイム上昇度は目を見張るものがあり、16位が30分台に突入し、最下位こそ32分台ではあるもののその1つ前の選手は31分39秒のタイムとなっています。上位候補のチームにとっても要注意のエリアへと変わっています。
<10区>
※タイムの横の順位は直近5大会分の全ランナー(107名)の中での順位
※タイムの横の順位は直近5大会分の全ランナー(107名)の中での順位
※タイムの横の順位は直近5大会分の全ランナー(107名)の中での順位
<LAPタイムで見る箱根駅伝>
6区 7区 8区 9区 10区
今回は箱根駅伝パートの最後となる第10回として、第92~96回の10区のLAPタイムに着目していきます。
このシリーズの概要について → こちら
【コースやレース展開の特徴】
<10区 鶴見中継所~蒲田~新八山橋~大手町GOAL(23.0km)>
01. 1区の裏の位置ではありますが、馬場先門から日本橋を経由するため距離は復路2番目に長い23.0kmとなります。時折細かいアップダウンはあるものの基本は都心部のフラットなコースですが、気温が高い時間帯でありビル風が吹きやすい事もあってタフなコースになります。そのため、9区よりもやや距離が短いですが70分切りを達成するランナーは9区よりも少ないです。
第83回に松瀬選手(順天堂大)が記録した68分59秒が唯一の68分台として区間記録となっていましたが、第96回に嶋津選手(創価大)が68分40秒、吉野選手(帝京大)が68分43秒と初出走の2選手が区間新のタイムをマークし、嶋津選手の68分40秒が新たな区間記録となりました。
02. この区間の戦い方はチームの置かれている状況によって変化します。優勝やシード権に向けて逃げているのか並走しているのか追いかけているのか…その状況ごとの判断力と駆け引きが求められます。もちろん、9区と同じく長距離でタフなコースをしっかり攻略する事も大前提です。
9区と比べると、前半から突っ込んで終盤粘る戦い方も成功しやすいです。前述のようにチームの置かれた状況によってペース配分のプランが分かれてきます。
03. 距離や構成が似ている9区と選手の起用傾向は似ており、単独走を見据えてトラックレースの強さよりもスタミナやロードレース適性などが優先されます。また、アンカーという事で、主将や生え抜きの選手といった粘り強さのある選手であったり、最終盤の対策としてスパート力のある選手を起用することもあります。また、アンカーという勝負性が求められる位置でもあるため、この区間のスペシャリストを育てる場合もあります。
【エリアごとの大会別LAPタイム】
※シード:全区間の区間順位ごとのタイムを合計して総合10位のタイムに最も近いものを参考に算出したシード権獲得の基準タイム。
16年:区間12位 17年:区間11位 18年:区間11位
19年:区間12位 20年:区間10位
のタイムを元にエリアごとの基準タイムを出しています。
<10区> 鶴見中継所~蒲田(5.9km) | |||||
92回 | 93回 | 94回 | 95回 | 96回 | |
1位 | 17分31秒 | 17分39秒 | 17分43秒 | 17分14秒 | 17分07秒 |
5位 | 17分47秒 | 17分58秒 | 17分56秒 | 17分50秒 | 17分23秒 |
シード | 17分59秒 | 18分03秒 | 18分26秒 | 18分03秒 | 17分44秒 |
16位 | 18分05秒 | 18分10秒 | 18分36秒 | 18分09秒 | 17分47秒 |
最下位 | 18分10秒 | 18分36秒 | 18分36秒 | 18分45秒 | 18分28秒 |
<ポイント>
01. まずは序盤戦。このエリアは上位の方がタイムの短縮幅がやや大きいです。第95回には序盤から突っ込んで走るスタイルを取る鈴木選手(青山学院大)がこのエリアをハイペースで入り、翌96回は区間新をマークした嶋津選手、吉野選手を筆頭に序盤からペースを上げる選手が増えました。16位までは第96回でのタイムの上昇がありますが、最下位付近に関しては第92回のペースが勝りました。
これには1つ理由があります。第92回及び第94回はそれぞれ9区終了時に繰り上げスタートとなったチームが多く、第92回は8チーム、第94回は7チームが繰り上げスタートとなりました。そのため16位と最下位のタイム差も少なく、第92回に至っては集団そのもののペースが積極的なものとなったため最下位のタイム水準も上がっています。
また、これはこの表では説明できない要素ですが、この10区は鶴見中継所~蒲田のペースが比較的上位の選手が中盤以降に崩れて区間下位に沈むというケースが9区よりも多いです
<10区> 蒲田~新八山橋(7.4km) | |||||
92回 | 93回 | 94回 | 95回 | 96回 | |
1位 | 22分30秒 | 22分38秒 | 22分57秒 | 22分27秒 | 22分06秒 |
5位 | 22分59秒 | 23分06秒 | 23分19秒 | 23分09秒 | 22分19秒 |
シード | 23分13秒 | 23分21秒 | 23分34秒 | 23分36秒 | 22分52秒 |
16位 | 23分25秒 | 23分51秒 | 23分48秒 | 23分43秒 | 23分26秒 |
最下位 | 24分15秒 | 24分08秒 | 23分55秒 | 24分12秒 | 24分18秒 |
<ポイント>
01. 続いて中盤戦。特に注目は5位のタイムの短縮度合いです。区間8位以内に入った選手は蒲田以降の中盤戦・終盤戦でしっかりペースを上げる事が出来ており、それが10区のタイム向上の主要因となっています。厚底シューズの効果による「終盤も足が残る」状態が実現できているという事なのでしょう。
下位に関してはあまりタイムの短縮がありませんが、蒲田までの序盤エリアで上位だった選手がこのエリアで崩れて下位に沈んでくる現象はどの大会でも起きています。ですので、蒲田までのエリアの下位と新八山橋までのエリアの下位は別の選手であるケースも少なくありません。
<10区> 新八山橋~大手町GOAL(9.7km) | |||||
92回 | 93回 | 94回 | 95回 | 96回 | |
1位 | 29分42秒 | 30分04秒 | 29分33秒 | 29分39秒 | 29分12秒 |
5位 | 30分29秒 | 30分41秒 | 30分23秒 | 30分27秒 | 29分44秒 |
シード | 31分11秒 | 31分19秒 | 31分04秒 | 31分18秒 | 30分21秒 |
16位 | 32分06秒 | 31分52秒 | 31分41秒 | 31分29秒 | 30分49秒 |
最下位 | 36分16秒 | 33分22秒 | 32分43秒 | 36分16秒 | 32分40秒 |
<ポイント>
01. ゴールまでラスト10kmを切ってからの終盤戦です。ペースを維持するタイプや後半に上げていくタイプの選手は、ここのエリアで安定した走りをする事が必要不可欠です。第96回でこのエリアの上位タイムもレベルが上がり、30分切り~30分台前半のラインが求められます。序盤からハイペースで仕掛けた選手はそれまでの貯金がありますが、極力30分台半ばまでで粘りたいところです。
下位に関しても第96回でのタイム上昇度は目を見張るものがあり、16位が30分台に突入し、最下位こそ32分台ではあるもののその1つ前の選手は31分39秒のタイムとなっています。上位候補のチームにとっても要注意のエリアへと変わっています。
【大学ごとの直近5大会のエリア最速LAPタイム】
<10区>
※タイムの横の順位は直近5大会分の全ランナー(107名)の中での順位
大学名 |
鶴見~蒲田 (5.9km) |
蒲田~新八山橋 (7.4km) |
新八山橋~大手町 (9.7km) |
青山学院 |
19年・鈴木塁人 20年・湯原慶吾 17分14秒(4位) |
20年・湯原慶吾 22分07秒(2位) |
16年・渡邉利典 30分06秒(18位) |
東海 |
20年・郡司陽大 17分13秒(3位) |
20年・郡司陽大 22分11秒(3位) |
20年・郡司陽大 29分44秒(8位) |
國學院 |
20年・殿地琢朗 17分39秒(8位) |
20年・殿地琢朗 22分14秒(4位) |
20年・殿地琢朗 29分26秒(2位) |
帝京 |
20年・吉野貴大 17分09秒(2位) |
20年・吉野貴大 22分22秒(6位) |
20年・吉野貴大 29分12秒(1位) |
東京国際 |
20年・内山涼太 17分50秒(29位) |
20年・内山涼太 23分05秒(31位) |
20年・内山涼太 29分36秒(5位) |
明治 |
16年・山田稜 17分40秒(10位) |
20年・河村一輝 23分05秒(31位) |
20年・河村一輝 29分55秒(14位) |
早稲田 |
19年・小澤直人 17分46秒(22位) |
20年・宍倉健浩 22分41秒(12位) |
20年・宍倉健浩 29分52秒(12位) |
駒澤 |
20年・石川拓慎 17分47秒(23位) |
20年・石川拓慎 22分41秒(12位) |
20年・石川拓慎 29分53秒(13位) |
創価 |
20年・嶋津雄大 17分07秒(1位) |
20年・嶋津雄大 20分00秒(1位) |
20年・嶋津雄大 29分27秒(3位) |
東洋 |
16年・渡邊一磨 19年・大澤駿 17分40秒(10位) |
16年・渡邊一磨 22分57秒(22位) |
16年・渡邊一磨 30分03秒(16位) |
※タイムの横の順位は直近5大会分の全ランナー(107名)の中での順位
大学名 |
鶴見~蒲田 (5.9km) |
蒲田~新八山橋 (7.4km) |
新八山橋~大手町 (9.7km) |
中央学院 |
20年・石綿宏人 17分44秒(19位) |
17年・村上優輝 23分08秒(34位) |
17年・村上優輝 30分15秒(20位) |
中央 |
20年・二井康介 17分42秒(15位) |
20年・二井康介 22分41秒(12位) |
20年・二井康介 29分55秒(14位) |
拓殖 |
16年・東島彰吾 17分55秒(38位) |
19年・松岡涼真 23分12秒(39位) |
19年・松岡涼真 30分26秒(26位) |
順天堂 |
20年・野田一輝 17分47秒(23位) |
16年・作田直也 22分51秒(15位) |
16年・作田直也 29分42秒(7位) |
法政 |
20年・増田蒼馬 17分47秒(23位) |
19年・鈴木亮平 23分01秒(26位) |
20年・増田蒼馬 30分21秒(23位) |
神奈川 |
20年・荻野太成 17分23秒(6位) |
20年・荻野太成 22分19秒(5位) |
18年・枝村高輔 30分47秒(38位) |
日本体育 |
20年・中川翔太 17分40秒(10位) |
20年・中川翔太 22分52秒(16位) |
17年・小野木俊 30分04秒(17位) |
日本 |
20年・金子智哉 17分47秒(23位) |
16年・山﨑一輝 23分25秒(60位) |
20年・金子智哉 30分43秒(35位) |
国士舘 |
17年・渡部勇人 18分00秒(49位) |
20年・孝田拓海 22分56秒(20位) |
20年・孝田拓海 30分32秒(31位) |
筑波 |
20年・児玉朋大 17分47秒(23位) |
20年・児玉朋大 23分31秒(71位) |
20年・児玉朋大 30分47秒(38位) |
関東学連 |
17年・照井明人 (東京国際) 17分39秒(8位) |
17年・照井明人 (東京国際) 22分38秒(11位) |
19年・阿部涼(日本) 29分48秒(10位) |
※タイムの横の順位は直近5大会分の全ランナー(107名)の中での順位
大学名 |
鶴見~蒲田 (5.9km) |
蒲田~新八山橋 (7.4km) |
新八山橋~大手町 (9.7km) |
上武 |
16年・坂本佳太 17分55秒(38位) |
16年・坂本佳太 23分13秒(42位) |
18年・佐々木守 30分52秒(44位) |
城西 |
19年・大里凌央 17分54秒(35位) |
19年・大里凌央 23分13秒(42位) |
19年・大里凌央 30分17秒(22位) |
山梨学院 |
16年・上村純也 17分59秒(47位) |
16年・上村純也 23分04秒(27位) |
16年・上村純也 30分23秒(24位) |
大東文化 |
16年・北村一摩 17分59秒(47位) |
16年・北村一摩 23分28秒(64位) |
19年・中神文弘 30分55秒(46位) |
大学駅伝 2020 春号 [別冊付録:特大ポスター] (陸上競技マガジン6月号増刊) |
陸上競技ルールブック 2020年度版 |
あまりに細かすぎる箱根駅伝ロスの過ごし方!2020マラソン&駅伝ガイド (ぴあ MOOK) |
<LAPタイムで見る箱根駅伝>
6区 7区 8区 9区 10区
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